まだまだ半分くらいかな‥
長いなぁw
最恐トリオ5
真っ白な光が俺たちを包んで‥
そしたら気づけばこんな真っ暗闇の何もない空間に俺と七十二番だけで立たされていて‥
二人して顔を見合わせながら「どういうことだ?」と言い合うしかなかった。
辺りをよく見渡しつつ、何か帰る方法がないかと考えていると隣に立っている七十二番が「主君!アレ!」と言い、指を指している。そっちの方向へと顔を向けてみせると、そこには‥
「秘密警察‥!」
暗闇の中で、さっきと同じように鉄柱に拘束されている秘密警察の姿だけがそこにあるではないか。
少し距離はあるものの、二人して何も考えずにそちらへと体は勝手に動いて駆け出していた。
やっと目の前までやって来れたと同時に、俺たちは「秘密警察!」と叫びながらコイツの体を揺らし、慌てて手首の鎖を解いてやろうと手を伸ばしてみせた。しかし、秘密警察に反応がない。
「秘密警察‥?」
目は一応開いてはいるが、どこか一点を見つめているだけの虚ろな目。何度呼びかけても、聞こえてないかの如く俺たちの声に全く反応を示さない。なんで?どうして?
鎖を解こうとしている七十二番も、さっきの鎖と何が違うのか‥鎖がビクともせず焦っているように思える。そしてこの秘密警察の無反応さも相まって、余計に心が締め付けられていくかのような感覚。
お願いだから‥俺たちに気づいてくれよ秘密警察!
暫く呼びかけ続けていると、未だに拘束が解けないでいる七十二番が何かに気づいたかのようにハッとした表情で俺を見てくる。な、なんだよ?
「分かった‥。この秘密警察は、さっき奪われた”記憶”の秘密警察かもしれねぇ」
「記憶だと?」
「俺たちの声に全く反応を示さねぇはずだ‥。コイツはただの記憶にしか過ぎない存在。俺たちみたいに精神を持ち合わせていなけりゃ俺たちを認識すらしない。即ち‥コイツにいくら話しかけてもムダだってこった」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ!」
「とにかく‥この鎖を外すことが先だ。それにこの場所、他の奴らも居なけりゃ誰の声もしねぇ」
「ここはなんなんだ?」
「ファンタジーじゃない世界のお前には伝わりにくいかもしれんが、ここは多分精神世界だ」
「精神世界‥?」
「あの光に包まれたのを引き金に、俺たちの精神はこっちの世界へ送り込まれたんだろう。元の体は向こうにちゃんとあるはずだ。そしてこの場所は‥こうして秘密警察みたいに奪われた記憶を置いておく場所ってところか。そう簡単に鎖が解けねぇはずだわな‥。ここの場所に縛り付けられてるんだからよ」
「縛り付けられてるだと?どういう意味だ」
「上を見ろ」
上?
言われた通り、上を見上げてみる。
「この鉄柱‥上の上まで続いていやがる。闇の中のずっと奥までな」
「コイツを‥ここから逃げ出せないようにする為に‥」
「あぁ。‥つーのが俺の推測、かな!」
全く解けない鎖にイラついたのか、七十二番はガシャガシャと乱暴に上下に振ってみせたりしているが、効果はないようだ。
そしてもう一度俺が、「秘密警察‥」と名前を呼んでみたその数秒後。
「‥‥え?」
秘密警察の目からは一筋の涙が頬をつうっ‥と流れて‥‥
そんな秘密警察を見てしまった俺と七十二番は、体が一瞬動かなくなってしまっていた。
しかしそれは束の間。急激に辺りが暗闇から光が灯し始め、何事かと焦っていると、七十二番は何かに気づき急いで鎖を外そうと必死にガチャガチャと音を鳴らしている。
そんなことをしている内に、眩しい光が再び俺と七十二番を取り囲んできたので俺は腕で光を遮るようにパッと顔の前へと両腕を持ってきた瞬間‥
「ゔわッ!?」
「ぐはッ‥!!」
地面に打ち付けられ、激しい痛みが体中に這いずり回る。
な、なんだ‥!?
急に‥なんで、こんな痛みが‥
ぐぐ‥っ、と体を起こしてみせようとすると、背中の方から「社長!」という棚瀬の声が聞こえてくる。なんで‥棚瀬が?
そう思った時、バッと顔をあげてみせればそこには俺たちに向かって攻撃してきた衛兵たちや、秘密警察たちや他の俺たちやらも全員周りにいる。ということは‥精神世界から元の世界に戻ってきた?精神世界に居た時間は、こっちの世界でいうと何秒間なんだ?もしかして一秒か二秒程度のことなのか!?
「クッソ‥。あの光の攻撃‥ただ精神世界へ引っ張っていくもんじゃなくて、現実世界ではちゃんと攻撃判定アリのもんになるのかよ‥っ!」
隣で痛みを堪えつつ体を起こしてはムカついている様子の七十二番の言うセリフで、なんとなく全ての察しがついた。
そして背中から聞こえる審議官の「他の者たちは直ちに自分たちの世界へと戻るように」という命令が下されたあと、衛兵二体はこの場から消え去り、周りで見ていただけの他の俺たちも静かにそれに従うしかない様子でパラパラと散っていき、帰ってしまう姿が映し出された。
その中で、秘密警察たちも黙って帰ろうとしていたので、俺と七十二番は慌ててそちらへと近づき、秘密警察の坂崎を呼び止めようとした瞬間‥
振り返った秘密警察は、俺たちを蔑むかのような態度で「おめーらはさっきから何なんだ?」と冷ややかな目と口調で答えてくる。やっぱり‥精神世界に居たアイツは連れて帰って来れなかったってことだよな‥
俺たち、何してんだろう‥
「秘密警察!」
「ちょっと待ってくれ!」
「‥‥はい?」
「話しがあるから行くな!」
「話しだと?俺はお前たちと話し合う筋はねぇぞ」
「でも!」
口答えばかりしている俺たちの前に、秘密警察の棚瀬が立ちはだかり「今日は帰って下さい」と静かに睨む。
「吉田、鈴木、坂さん連れて戻れ」
「は、はい!」
(俺たちのこと苗字呼びになってる‥まさか?)
先輩の棚瀬に言われてしまえば、それに従うしかない後輩たちは急いで坂崎をここから連れ出して行ってしまう。当の本人は、なんで帰らされてるか分かっていないようだが、素直に自分の世界へと帰って行くその後ろ姿。
こんなんでいい訳ない‥
言わなきゃ。アイツに伝えなきゃ。
「どけ、棚瀬!」
「どきません」
「俺たちにはやらなきゃいけない事があるんだよ!」
「それは今じゃなきゃいけない事なんですか?」
恐ろしい程の表情で俺たちを睨みつける向こうの棚瀬の両脇には、キツい顔した秘密警察の俺と高見沢がここは通さんとばかりに立ち塞ぎにきやがった。
「だって、アイツは俺たち全員のこと忘れちまったんだぞ!?しかもさっき俺と主君はアイツの奪われた記憶を見てきた!もう一度あの記憶を連れ戻せるかもしれねぇんだぞ!?」
「それで?次に坂さんの記憶を見た時、必ず引き戻せるという保証は?」
「それは‥」
「ないのなら貴方がたも帰って下さい」
「けど!」
「‥‥帰ってくれないと言うのならば、力尽くでこの俺を倒してから坂さんを連れて行け。その代わり、俺は貴方たち相手であろうと本気を出させて貰う」
まるで秘密警察の坂崎みたいな目付きをしている向こうの棚瀬だけれど、坂崎と違って目に怒りを宿すというより、まるで氷のように冷たい冷徹な瞳。普段のあのふざけた雰囲気が一変し、そこに居るのは坂崎と同じ信念を持った自分以外のものを何も信じないという男。
そしていつもスーツのポケットにしまい込んである手袋を取り出し、自分の顔の目の前で手袋を嵌める仕草を見せてきた。片方の手袋だけを装着させたアイツは、口でスイっと最後に手袋を奥まで着けたと同時に、七十二番の後ろにいた船頭が「お前らやめとけ!」と慌てて止めに入ってくる。
「なんで!」
「分かってんだろ!?あの棚瀬は秘密警察の俺とほぼ同等の力を持っている男だぞ!?それに、向こうの桜井と高見沢だって体力ハンパないの知ってんだろ!無謀すぎる!」
「っ‥」
そして俺の横にやってきた棚瀬までもが「社長、ここは我慢して下さい」という始末。そりゃ‥俺はコイツらと違って体力一般人だけどよ‥
「秘密警察、ここは私に免じて社長の愚かな行為に目を瞑って下さいませんか?」
「争わないのであれば俺たちも手出しはしない」
「ありがとうございます。もう良いでしょう、社長?」
「‥‥。」
全っ然、良くねぇよ‥!!
だけどこのキレかけている秘密警察たちを取り押さえて、元の世界へ戻ってしまったあの男を連れ出せる力なんて俺たちにはない。なので仕方なく俺も七十二番もそれぞれの世界の俺たちに連れられて、元の世界に戻るしかなかった。
なんでこうなる‥
俺らはただ、こんな下らない法を消したかっただけなのに‥
俺たちだけのせいで、こんな事があっちゃいけねぇって分かっていたのに‥。結局何も出来ないまま終わってしまった。
。。。
「‥ホントにこれで良かったのか、棚瀬?」
「えぇ‥。今の俺たちは全員が全員、冷静になれていない‥。そんな状態じゃあ、また坂さんを危険な目に晒すだけになってしまう」
「にしても坂崎の奴、なんだってあんなに七十二番と主君を守ろうとしたんだ?あんなの理由がなけりゃ、俺たちだって納得いかねぇよ」
「さぁ‥俺にも、分かりません」
まさか‥昨日坂さんが一人で外の世界へ出かけて行ったのが関係しているとか‥?
「なんにしても、俺たちの世界のことだけは忘れなかっただけマシと思いましょう。流石に俺たちすらも忘れてしまうなんてことがなくて良かったとしか‥今はそれしか言いようがありません」
「‥そうだな」
「他の世界の奴らには悪いが、もうどうしようもなかった‥か」
俺たち秘密警察だって、こんなんでいい訳ないと思っている。だけど‥坂さんは俺たちの世界の人間だ。
これ以上主君さんや七十二番さんと会わせ続ければ、坂さんが坂さんでなくなってしまう気がしてならない。俺だって苦しいに決まってる‥!そりゃ、昔から仲のいい三人を引き離すことがいいだなんて、誰がそんなこと思うもんか!
だけど‥もうこれ以上は‥‥坂さんを犠牲にされたくない‥っ!
尊敬する主君さん! 愛しの七十二番! 諦めないで!!
二「おう、最後まで見守っててあげてくれい」
裏坂「ホントよくあそこまで他人の為に頑張れるよな〜」