希望の詩 短編集 - 1/7

お久しぶりに学生さん。どうしてあの三人が仲良くしてるのか、を今回は高見沢さん視点で書きます

 

俺と桜井、それと‥坂崎の出会いは一年の時。

 

桜井とはクラスが一緒で、席が隣だった事もあり、よく授業中も喋っていた。それと音楽も好きだというから益々俺達は気が合っていった。

但し、あちらは何の変哲もないただの平凡と生きてきた普通の学生。俺みたいに荒んでないし、元から仲のいい友達も所謂普通と呼ばれるような奴ばかりだった。

 

逆に俺は見ての通り不良だ。

連んでいる奴らはチャラい奴もいれば、喧嘩っ早い奴だって、アレだ‥教師に目をつけられやすい集団の中にいるわけ。そのせいでよく呼び出されて何かと理由をつけては怒ってくるしよぉ、マジで意味が分からねぇ。

この髪色がどうして悪いの?胸元全開にしてちゃ何がいけないの?自由な時間に登校してきちゃダメなの?てか、学校来るだけでも偉くない?

そんな我が儘は通用されないのは知っている。だけど、それに反抗してしまうのが俺達不良だ。

 

こんな不良とは無縁な優等生ばかりが集まる特進クラスとやらがあるんだって。そのクラスはいい大学へ入る為にバカみたいに頭使って勉強しまくる奴らの集団だと思っていた。いけすかないのはただの妬み、僻み、嫉み‥なのか。取り敢えず俺はそんなお堅い奴らと仲良くなるのも、喋る事さえしないだろうと思っていた。たまに何かいいように使ってやろうかと思ってる友達もいたらしいけど、俺はあんまりそういうのは好きじゃないから遠目で見ていただけ。

 

しかし、そんなお堅い集団の中にいる一人と、たった一年で親友とまで呼べる程仲良くなった奴がいる。

それが坂崎という男だった。

 

坂崎は元々、桜井と同じ中学で、二人はそこで仲が良くなってたまたま受けた高校も一緒だったって訳。中三の時にクラスが一緒になって、最初は名簿順に座る為、席が前後だというのもあってそこで桜井が先に坂崎に話を掛けたのが始まり。

別段この高校は頭のいい高校とは言えない。かと言って悪いわけでもない。近くの高校を受けとけばいいって考えで入った学校。理由なんてそんなものだろ。

そう、そこで桜井が坂崎を紹介したんだ。放課後に俺が教室で机の上に座りながら待ってた時、よく覚えているよ。

コイツも音楽が好きでギターやってるんだ、って言われて連れて来られた坂崎を見た瞬間、俺は何とも言えない感情に囚われた。

 

あの、人を簡単には信用しない哀しげな目。きっちり着こなされた皺一つないブレザー。真面目そうに眼鏡を掛けたその奥にある瞳が俺を見た時、俺は「自分だ‥」と思ってしまった。

それは今の自分ではなくて、昔の‥まだまだ俺が優等生だった頃の自分にそっくりだったから。

 

目を疑い、暫く坂崎を見つめていたら彼は冷めた目で「何?」と不良である俺を軽蔑した口調と態度を取ってきた。それにカチンときてしまった俺が坂崎の胸倉を掴みかかろうとしたけれど、桜井が止めに入ってきてしまい、坂崎を掴む事はなくなった。

 

「初っ端から喧嘩するなよなぁ!折角趣味が合う同士なんだからさ、仲良くしようよ!」

「コイツと?マジで言ってんの桜井?俺とこんな優等生が連めるわけねぇよ!」

「‥‥俺は別にいいけど」

「えっ‥?」

 

坂崎のその一言で今度は耳を疑ってしまった。

すると桜井が事情を説明する。

 

「坂崎さ、見た目はこんな風にどこからどうみても優等生だけど、頭の中は高見沢と全く同じなんだよね。もしかしたら高見沢よりブラックかも?」

「俺ってそんなにブラック?」

「恐い恐い!大人嫌いだし、人をあんまり信じてないじゃん」

「でも、友達はちゃんと信用はしてるよ。一応」

「俺は?」

「信じてるから、桜井は」

 

そんな会話を繰り広げられ、俺はポカンと二人のやり取りを聞いていた。

信じられなかった。こんな優等生が‥俺と一緒?

坂崎は俺に向き直ると、「どうするの?」と聞いてきた。

 

「どうって‥」

「アンタが俺と友達になるかどうか」

「‥俺でいいの?アンタとは別の世界にいるただのクズ人間だぞ?」

「いいよ。俺も一歩間違えればただのクズ人間だし」

「ぷはっ‥!」

 

今の坂崎の一言で、俺は思わず吹いてしまった。まさにその通りなんじゃないかなって。

そしたら坂崎が「宜しく」と言って手を差し出してきた。こんな風に握手して友達になるとか‥初めてやるけど、俺は坂崎の手を取り握り締めた。

 

「ギターやってんの?」

「最近は勉強でやる時間ないけどね」

「へぇ‥。今度遊びに行っていい?てか、押しかけに行くわ桜井と」

「親が居ない時にね。多分うちの親、高見沢見るとびっくりしちゃう気がするから」

「びっくりさせれば?こんな奴と友達になったのーとか言ってやれ」

「うーん‥、考えとく」

 

そこで気付いたのが、坂崎の目が優しくなっていたって所。俺と似ている坂崎は、きっとこの一瞬で俺を友達だと認めてくれた証拠なんじゃないかって‥、そう思う。

そして坂崎と別れた後、教室に残った桜井は俺に「良かった」と言っていた。

 

「何が?」

「アイツにちゃんと友達が出来て」

「友達いないの?ぼっち?」

「そういうのじゃないけど、アイツの言う友達は上辺だけ?みたいな感じ。俺にさえ心開いてくれるのに時間掛かったけど‥やっぱ高見沢は違うね」

「だって‥アイツ、まるで昔の自分を見てるようで‥それに、守らないと‥って思った。何でか分からないけど、アイツの傍には誰かが居てやらないとって‥」

「坂崎の噂は流れるかもな。高見沢と連んでいたら。きっと‥」

「噂は嫌いだ。アリもしないことで全て崩れる時だってある」

 

ー先生、僕じゃないよ!僕そんな事やってないよ!ー

ー言い訳はいいから、ほら職員室まで来なさいー

ー僕じゃないもん‥!ー

 

なんで大人は信じてくれないんだろう‥。

 

「高見沢?」

桜井に呼ばれるまで自分の世界に入っていた。俺はパッと顔を桜井の方へ向ければ「あ、あぁ‥」と曖昧な言葉を出した。

「大丈夫か?」

「平気だよ。それよりファミレス行こーぜ」

「また~?」

 

そんな会話をしながら俺は隣の席に置いてあったスクバを持ち上げ、机からピョンと飛び下りては教室から出て行った。

廊下を歩く二つの影が長く伸びている。

まだ桜井も坂崎も、沢山二人の事知らなくちゃならねー事がありそうだな。

 

これから親友になっていくんです

 

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