次でラストになるーっ!
最恐トリオ13
俺らの前に現れたのは、ノーマルの俺。
‥と、その後ろからはノーマルの桜井と坂崎もやって来て、アイツらの足元でちょろちょろと春野兄弟が物凄くはしゃいでいた。あらやだは目をキラキラさせながら「クサリのおじさん!」と声をあげて主君の方へと飛びついていった。
見事あらやだをキャッチした主君も、久しぶりにガキと会えたのが嬉しいのか顔がふにゃっとして優しいお父さんみたいな表情に成り代わっていやがる。あとうちの桜井も、あらしとあられに抱きつかれて幸せそうにしている。ノーマルの桜井と坂崎は、俺らとは距離を置いて向こうにいる他の奴らの様子を伺ってるようだ。
しかし俺はノーマルの自分を睨みつけ、「散々弄びやがって‥」と口にすれば向こうは悪い顔しながら「楽しかったよ〜」と答えてみせる。俺ら最恐トリオも性格悪い方だけど、コイツの比じゃねぇなと心底思った。
なんでこの俺があっちの世界でいい顔して知名度もあって人気なミュージシャンやってんのかマジで俺らにとっちゃ謎だ‥
「なんで俺たち三人だけ狙ったんだ!?」
「ん?面白そうだったから」
「理由はそれだけか?あ、ごめんねあらやだ。今は俺の顔見ない方がいいから、ちょっとお父さんの方見ててね」
「うんっ」
主君に抱きついていたあらやだは素直に自分のおとーさんの方に顔を向けていた。ま、そんな恐い顔見せられねーしなぁ。
「理由、ねぇ。だってお前ら三人犯罪者と警察っていう対立する立場の人間同士でしょ?なのに、なーんでこんなにも仲良いのかな〜?ってただ疑問に思っただけ」
「んなこたぁ知ったこっちゃねぇよ!時間がそうさせただけだろ。もちろん俺も主君も最初嫌だったし、秘密警察もそれは同じだった。けど、まぁアンタ程じゃねーが俺らも性格いいとは言い難いもんでねぇ。そこで気が合ったりしたんじゃねーの?」
「もちろん秘密警察が殺し屋たちみたいに自分と同じ世界で生きてたとしたら、こんだけ仲良くはなってなかっただろーな。警察とは言え所詮別の世界の坂崎。それ以外に言いようがねーよ」
「ふぅん。‥ま、お前ら三人がそんだけ仲良しちゃんってのが知れて良かったよ。警察の為に犯罪者がここまで奔走するなんて思ってもみなかったしね」
「俺らのことバカにしてんのかよ!」
「影でコソコソ俺たちのこと操りやがって!そんなに俺らが苦しんでるのが嬉しいか!?」
「んー。というより、見ていて気持ち良かったね」
「あ?」
「それはどういう意味だ?」
「だーって、それなりに厳しい条件だったしヒントもあんまり与えて来なかったのに、よくここまで来れたなーって。‥こんなの見せつけられたら、認めざるを得ないじゃん」
‥‥ん?
今ノーマルなんて言った?
「は‥?」
「認めるって‥」
「だからぁ、お前たち三人のその見えないなんとやらってのを認めざるを得ないって言ってんの。俺がお前ら気に入る時がくるなんて思ってもみなかったよ。学生の坂崎以来だな」
「え゙‥?」
「な、なに急に言ってんだノーマル‥」
「喜べよ!俺、他の自分らのことほとんど興味ないんだから。気に入ったからには少しはマシな待遇してあげるってば」
「いや、そんな突然言われても困るんだが‥」
「でも罪人の俺も主君も顔赤いぞ?」
「変なこと言い出すからだろーが!?」
「どういう風の吹き回しだよ!なんか怪しいぞ!」
「意味なんてないってば。ただ気に入った。それだけ」
ノーマルがそうキッパリ言い切ると、奴は懐から法の書を取り出してはそれをいきなり目の前でビリビリと破き出した。
それとほぼ同時に、倒れて動かなくなっていた衛兵たちもここから姿を消していくのが伺えた。
そしてノーマルは「はい、これで元通り」とだけ言ったかと思えば、クルッと向きを変えてここから立ち去ろうとしてしまっている。
な、なんかよく分からんが‥まさかノーマルに認められるなんて思いもしなかったし、予想の斜め上の展開をいって正直なんて答えればいいのか不明だ。隣にいる主君も頭ん中混乱しているようだが、首を傾げながら「これで良かったのか‥?」とだけ呟いている。下からあらやだが主君を覗き込んでおり、「おじさん、うれしそう」と言い当てられてしまっていた。
「う、嬉しいのかなんなのか分からん感情だが‥。でもノーマルの高見沢があんなこと言ってくるなんて夢にも思わんかったから拍子抜けしてるというか‥」
「つーかずりぃよ‥あんなこと言われたら俺らもどう怒りの矛先向けていいかわかんねーし」
「なんか‥今ならソフィアたちの気持ちが分かるような気がする」
「俺もぉ‥」
二人して困惑していたら、隣にやって来た秘密警察の坂崎が「俺はアイツのああいうとこが好かん」と吐き捨てた。
「なんでぇ?」
「やり方がDV野郎のソレと同じやり方で逆にコワイ」
「あぁ‥酷いことして後から優しくするタイプの?まるで七十二番だな」
「お、俺はちげーよ‥!‥‥どっちかと言うともっと酷い‥から」
「知ってるわ」
くそー‥
秘密警察は、ノーマルの俺の背中を見つめながらも「ふんっ」とだけ言い放つとどこかへと行こうとしている。あ、てかそうだ‥重要なこと忘れてた。
俺がそう思っていると、主君が慌てて「つーかノーマル!まだ話しは終わってねーぞ!!それと秘密警察も!」と声を張り上げ、二人の足を止めさせた。面倒くさそうにこちらを振り向いたノーマルは「なに?」と答え、秘密警察もそのまま体の向きを変えることなくその場で立ち止まったまま。
「ノーマルお前、秘密警察に何しやがった!?」
「‥‥。」
主君のこの質問にノーマルは、こっちに戻って来たくないのかなんなのか知らんが三人ともこっち来いと手招きしてくる。なので俺も主君も仕方なくそっちへ行こうとしていたが、秘密警察はというと嫌々ながらも言うことを聞いてる感じだ。
「あらやだ、ごめんよ。ちょっとみんなの所へ行っててくれないか?」
「わかった」
腕の中にいたあらやだを下に降ろし、またもや素直に主君の言うことを聞く。全く、こんないい子ちゃんの父親があの野郎とはなぁ‥
てててーっと走り出して他の奴らのいる場所まで行ってしまったあらやだを見送っていたら、秘密警察もここまで来たので三人でノーマルの俺の元へと赴く。
「何が聞きたいの?」
「ノーマルテメェ、秘密警察のこと脅してやがっただろ!?」
脅す‥?
そんな話し主君から聞いてねーぞ?
どういうことだ?
「脅し‥ねぇ。よく分かったじゃん主君」
「ったりめーだろ、俺を誰だと思ってんだ。ずっと考えていた‥。秘密警察が犯罪者の俺と七十二番を庇うほどの脅迫文句ってなんだろかってね」
「それで?答えは出た?」
「いや、正直分からねぇ。犯罪者の俺らにこれ以上罪を増やさせたくない、それとも法の書を奪ったら俺らが消されるのかとか色々考えてた。でもそれだけじゃ理由が弱すぎる」
「うーん‥確かにそれは微妙な答えかもね〜」
「でも、秘密警察が俺らを庇う理由が他にないんだ。‥たった一つ以外は」
「お?」
「っ‥」
秘密警察が僅かに反応を示す。
「それは‥‥俺と七十二番の犯罪者という以外の共通点、〝死〟だ。これだけは間違いねぇと思ってる。ただ、なんの理由でノーマルが脅してたかとまでは分からんかったがな」
なっ‥
俺らの‥死だと‥?
「おぉ!よくその答えまで辿り着いたね!流石は主君、伊達に脅迫ばっかやってきた訳じゃないね!」
「ふざけてねぇで答えろ!!なんの為に秘密警察を脅した!?」
「そうだな〜、理由は‥」
「おいノーマル!それは言わねぇ約束だろ!?」
「え?でもそれじゃ二人が可哀想じゃない?」
いつになく秘密警察が焦っているようにも見える。そんなに俺たちに聞かれたくない内容なのか‥?
しかしノーマルは秘密警察の言葉なんかシカトして淡々と説明を始めてくる。
「七十二番と主君、コイツら二人の〝死に方〟をネタに俺は秘密警察に脅しかけてみたんだよ」
「俺らの‥」
「死に方だと?」
そして厳しい顔をしながら黙りこくる秘密警察。
「主君、お前は一応ネタバレの方で死に方が記されているな?そして七十二番も数年後には死ぬ未来が確定しているでしょ?」
「それがどーした」
「そのお前らの死に様について強請ってみたのさ。二人がひっどい死に方するのと、自分の記憶消されるの‥どっちがいい?って、ね。お前らが法の書を盗む前日に秘密警察と会って話した」
「そ、そんなことで‥」
「自分の記憶と引き換えにしたのか‥?」
「くっ‥!そんなことって言うがお前らなぁ‥!ノーマルの言うことだぞ!?ぜってー碌でもない死に方しか渡されなくなるだろ!?今回のことでそれがよく伝わってきたわクソが!!」
「あー、うん。俺が用意する話ってどれも酷でしょ?今は認めたからそんなことしないけど、俺ここにいるお前ら全員特にそんな興味ないからさ、どんな死に方しようがなんとも思ってないわけ」
「それは‥知ってる」
「そりゃあ秘密警察にとったら別の世界の奴らだと割り切ってても嫌だろうね〜。‥顔や体に何十箇所も滅多刺しにするとか、バラバラ遺体になったりとか、硫酸かけられて肌は溶けて苦しみ抜いて死んでいくとか、火だるまになって死ぬとか‥‥まぁ酷い死に方って色々あんじゃん?」
こ、この男っ‥‥
俺と主君より凶悪なんじゃねぇのか‥??
なんで俺、こんな奴と同じ”高見沢”なんだ‥!?
俺も主君も今の話しを聞いて、ドン引きするしかなかった。つーか、よくもまぁこんな最恐と言われてる俺たちをドン引きさせたもんだなぁ‥
これは確かに秘密警察も俺たちを庇いたくなる訳だ‥
当の秘密警察本人は、眉間にすげー皺を寄せながら怒りを抑えている様子。記憶と引き換えに俺たちの死に方を救ってくれたって‥ことか。
そう思っていると、黙っていた秘密警察が堰を切ったように言葉を紡ぎ始めた。
「誰がっ‥コイツらのひでぇ死を見たいと思うんだよ‥!二人は死ぬと確定しているのも分かってるつもりだ!けど、こんな死に方されるならまだ俺の記憶がなくなった方が何億倍もマシに決まってんだろ!?俺だって‥この犯罪者共がそれくらい酷い死に方するのはコイツらのやったことに対しての罰としては妥当‥だなとは思う。寧ろコイツらに殺された人間たちは少なくともそう思うだろう‥っ。
けど‥っ、だけど‥!俺にはこの二人が‥もうこれ以上辛い目に遭って欲しくないと願っちまっている‥!警察としてはそりゃ失格どころか職失うことを外の世界とはいえやっちまったとは思う‥。でも、俺には耐えられなかった‥!ノーマルの言うことだ、‥俺が記憶失わなければその時がきたら確実に実行していたはずだ」
秘密警察‥‥お前‥
「俺は自分の世界の仲間を信用出来ないっ‥。それは失った時の絶望と喪失感を引きずって仕事にならないと困るからだ‥。だけど‥コイツらは別の世界の桜井と高見沢。死ぬ未来がとっくに分かってる奴らだから‥言い方悪いが、逆に信用出来たのかもしれねぇ‥
俺の記憶が消え失せても、またコイツらなら無理やりにでも俺と一緒に居てくれるんじゃないかって‥ただの希望的観測でしかなかったが、二人はそれ以上のことをやってのけた。俺の記憶を取り戻し、そして俺を救ってくれた。こんな‥こんなヤベー奴らなのに‥コイツらは必死こいて俺にみんなのことを思い出させようとしてくれたっ‥
分かってる‥。コイツらに殺された奴らの気持ちも考えれば、俺はやっちゃいけねぇことを仕出かしたなんて百も承知だ‥!一日中ずっと考えてた‥。ノーマルにあの時二人が法の書を盗んで破り捨てて無効にすれば、すぐに元通りにすると‥。俺の記憶も失わずに済むと言われた‥。でも、‥でも俺には‥‥情けないがそれが出来なかった‥」
ダメだ‥
なんでこんな感情になる‥?
胸の奥から込み上げてくる何かが俺と主君の心を燻る。
コイツは‥‥秘密警察は、こんなにも苦しんでいたのかよ‥
それなのに、それに気づいてやれなかった。俺たちは‥お前のその顔を片手で覆いながら今にも泣きそうなツラを見て、なんて言えばいいのかも言葉が出て来なかった。
俺たちはどうすりゃいい‥?
「なんで早く‥それを言わなかったんだよっ‥!」
「ノーマルに脅されてるんだ‥言えるわけねぇだろ‥」
「俺たちの死に方なんてお前が気にすることじゃねーだろ‥!今お前が言ったように、俺も七十二番も大勢人を殺してきちまってるから、それが俺たちの最期なら俺らはそれを受け入れる‥!それが俺たちの世界ってもんだから‥」
「バカ言うな!お前らただでさえ不幸な人生送ってんのに、死ぬ時まで不幸になんてさせてたまるかよッ!!」
「お前‥なんで、そこまでして俺ら犯罪者を庇う‥?どうして‥?」
「っ‥、知るかよっ。もうここまで来ちまった仲だ‥俺にも一応お前らに対する情が出ちまったんだろうな‥。くそ‥ホントに情けねぇ‥」
この男は‥天性のリーダーシップを持った男なんだな‥と心の底から思った。そりゃあ、コイツの仲間がこの男に惚れ倒す気持ちを今理解出来た気がするよ。
ノーマルに脅されながらも、それに屈せず俺と主君を最後の最後まで何も言わずにただ「信じてる」とだけ言い残して庇い、そして俺たちの最期も救ってくれた。いつか死ぬとはいえ、俺らの世界観上やっぱり格好よく死にたいと思っちまっている自分がいるのも騙せない。
あぁ‥、俺と主君はこんなにもコイツに想われていたんだな‥と。まさか秘密警察がここまでして格好いいと思う時がくるなんて、夢にも思わなんだ。男も女も関係なしに、コイツがモテる理由が痛いほど身に染みた瞬間だった。
「ハァー〜〜‥。いや、凄いよ、ホント。うん、参ったね。お前ら最恐トリオがそこまでしてガッチガチの仲だなんて思わなかったよ。諦めはしない、しつこい奴らだろうとは予想してたけど、まさかここまでとはねぇ。自分たちの世界じゃそんな素直になれん癖に、三人揃うとお互いバカ素直になって‥面白い奴らだ」
デカい溜め息をついて呆れているのか苦笑しているのか面白がっているのか分からん態度のノーマルだが、そんな正論言われるとこっちが恥ずかしいじゃねぇか。
でもやっぱりノーマルの俺は気に食わねぇ。そう思った瞬間でもあった。
「さっきも言ったけど、俺は最恐トリオの君たちを認めたから。もう流石にこれ以上酷いことはしないよ。‥‥多分」
コイツ‥笑ってやがる‥っ。
「うっせ!もう暫く俺らに顔見せんな、ぶわぁーか!!」
「ノーマル相手だと思って抑えてはいるが、やっぱアンタには虫唾が走るぜ‥!俺ら犯罪者ならまだしも、正義を貫く秘密警察に今度何かしたらノーマルだってタダじゃおかねぇからな!覚えとけよ!?」
「あーそうだね〜楽しみにしてるわ〜!じゃ!」
ニヤニヤしながらノーマルの俺は踵を返し、今度こそここから立ち去って自分たちの世界に戻って行った。そのノーマルの俺の背中を追いかけるように、あっちの桜井と坂崎も帰って行っちまったようだ。
あーーー‥‥気分わるっ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノマ坂「あれで良かったの?」
ノマ高「なにが?」
ノマ桜「なんっでお前はここに来たら敵を作ることしかしないんだ‥」
ノマ高「敵って言っても俺にとっては全然敵じゃないし〜。それにしても秘密警察の坂崎が出来る男すぎて納得いかねーー」
ノマ坂「いーじゃん!格好いい男前な俺がいてもいーじゃん!w」
ノマ桜「まったく‥。仮にも自分らなんだから、もうちょい優しくしてあげなよ‥」
ノマ高「だって興味ないし〜」
ノマ桜「はぁ‥」
ノマ坂「俺と桜井で気にかけてあげればいーのよw」
ノマ桜「‥だな」
自分を悪人だと言うは悪人ではないんですよね。主君さんも七十二番も根っからの悪人じゃないし。
最も恐いトリオ、きっと良い表情をしているのでしょうね。
二「こっちもずっと高見沢があんな調子だったら困っちまうからな。は〜良かったわー」
奴高「めいの言うことに全く同感出来ん‥」
二「ま、確かにアイツら今いい顔してんぜ!一安心だな」
奴高「お、おん」