最恐トリオ5

記事タイトルとお話の出だしに書いてある数字がズレてるのは気にしないで下さいw

 

最恐トリオ4

 

「‥こ、こは‥?」

 

朦朧とする意識の中、今までに見たことのない光景がそこには広がっていた。

なんだ‥ここ?審議所?

それに‥

 

「なっ‥」

 

目の前に広がるのは、全世界の俺たち。

‥だけに留まらず、所謂名前のない各々の世界のモブキャラとかいう奴らまでこんなとこにいやがるだと?

どういうことだ‥

 

船頭のとこの悪魔たちや他の番号で呼ばれている船頭たち。智天使のとこのよく出てくる名前のある住人。ソフィアんとこの王子の俺の父親と母親、そしてソフィアと仲のいいガキ。人魚のとこの家族。大妖怪どものとこの森に住んでいる大勢の妖怪たち。しかも春野兄弟までいるだと?他にも‥なんでこんな‥

 

呆気に取られていると、「秘密警察‥!」と七十二番の声がする。

 

すると俺の左前方の鉄柱に手首を縛りつけられている七十二番の姿があった。目を見開いて驚いていると、右の前方には同じく鉄柱に縛られている主君がいるじゃねぇか。他の奴らに目を奪われてて二人に気づかなかった‥

だから俺が二人のとこへ駆け寄ろうとした時。ガチャッと背中の方から聞こえてくる冷たい鎖の音。

「!?」

驚いて振り返ってみると、俺も鉄柱に縛りつけられているではないか。ふざけんなよオイ‥!

 

しかしその驚きは束の間。

俺の数メートル後ろの柵の向こう側に立っているのは、俺の仲間たちだった。

 

え‥?

 

「坂崎‥」

「坂さん‥っ」

「坂崎さん‥!」

 

哀しそうな表情で俺を見つめてくる棚瀬、高見沢、桜井、鈴木、吉田の五人。そして俺の親父も。

なんで‥コイツらまでここに‥

 

冷や汗を垂らしながら顔の向きを前へ直してみせたあと、いつの間にやら審議官と思わしき人物が前方に座っており、木槌をカンカンと鳴らしてきた。

まさかな‥自分がこんな立場になるなんて夢にも思わなかったぜ。例えそれが外の世界だとしても、だ。

 

全員が審議官の方へと顔を向ける中、ただ一人俺だけは下を俯いて考えてしまっていた。

これは見せしめなんだな‥と。

 

「それでは審議を始めるとする。秘密警察の坂崎幸二。そなたは定められた法律に背き、二人の犯罪者と密会し、この法の書を奪い去ろうと計画を企てていた。間違いはないかね?」

「‥‥はい」

 

俺の一言で、周りが一気にザワついた。

ただ、それを否定したがる二人が目の前に居ることは分かっている。

 

「違う!!秘密警察は俺らに命令なんかしてねぇ!!」

「俺と主君が勝手に始めた計画だ!!秘密警察はなんも関係ねぇよ!!」

「君たちはまだ黙っててくれないか」

「黙ってられっかよ‥!俺たち犯罪者が法を犯すのなんて慣れてっから構わねぇ!だが、秘密警察だけは違う!!コイツは本当になにも知らなかったんだ!」

「裁くなら俺と七十二番を裁けッ!!秘密警察は無関係だ!コイツは俺たちなんかとは違う!自分の中の信念と正義を貫く警察だぞ!?そんな奴が軽々しく法に触れると思ってんのかよアンタは!?」

「静かにしたまえ。ただ、この男は先ほど自ら法の書を奪えと命令したのは自分だと申しておる。本人が口にするのであれば、その真実を曲げることはできん」

「ちがあぁぁうッ!!!」

 

ガシャンッ!と鳴り響く鎖の音と二人の大声。

そこまでしてお前たちは俺を守ってくれてるんだな‥。人を死に追い詰めてるとは思えん奴らだ‥まったく。

俺は‥そんな二人が好きだから、いつも一緒に居たんだよな‥そうだよな‥

 

ありがとな。

 

「違いません‥。俺が全て計画し、二人に実行させました」

「おいッ!!」

「てめ、自分が何言ってんのか分かってんのかゴラァ!?」

「俺が、やりました。罰は俺が受ける。その代わり、この二人だけは見逃してやって欲しい」

「素直に吐き出してくれて助かるよ。それでは君に判決を下す。ここの世界において、法を破り、この法の書を奪い去ろうとした罪で”自分たちの世界以外の者の記憶をリセット”させて貰う」

 

再びザワつく周り。そしてこの判決を聞いた両斜め前方に居る二人は「は‥?」という表情で俺と審議官の顔を交互に見ては言葉すらも失いかけていた。

しかし黙っているだけの俺に主君がようやく「なんでそうなる‥」と小さな声で呟く。

そして突然どこからともなく衛兵が現れてきたせいで、更に審議所がザワザワし始める。二体の衛兵が俺の両隣にまでやってくると、一体の方の手には何やら注射器が握られており、それを見た瞬間全てを察した。

 

「ダメだ‥」と首を振りながら七十二番が口にした直後、二人の声が審議所中に響き渡る。

 

「船頭ッ!!」

「坂崎ぃッ!!」

 

そう自分たちの世界の俺の名をいきなり叫んだかと思いきや、呼ばれた本人たちは腰辺りまである柵を軽々と超えて俺のいる方向へと走り出してくるではないか。アイツら‥なに考えてんだ?

船頭は棍棒と剣を両手に構え、主君のとこの俺は片手にナイフ持ってこっちに向かってくる。二人とも険しい顔をしており、衛兵目掛けて立ち向かおうとした時‥

やはり体に違和感を覚えたのか、二人は途端にガクッと体勢を崩してしまった。コレだ。俺もさっきこのせいで眠らされちまってたんだ。何もかもを無効化する力によって。

 

だが、その隙をついたのかは知らんが、主君と七十二番は手首に巻きついていた鎖をいつの間にか解いており、主君は主君で「鎖使いの俺をナメんなよ!!」と恐ろしい表情で衛兵たちを睨みつけ、やはりこちらに立ち向かっては僅かな抵抗の為に素早く鎖を投げつけてきた。

 

「けっ!こんな拘束程度じゃこの俺を縛りつけるなんてムリがあんだよぉッ!!」

主君に続き、七十二番が声を張り上げながら注射器を持っている衛兵に駆け寄ってはその長い腕を精一杯伸ばしている。

そして‥そんなコイツらを目の前にしてしまえば、俺の仲間たちだって黙っていられるはずもなく、主君と七十二番に協力しようと柵を飛び越え無謀にも衛兵を取り押さえようと試みる場面が目に残る。‥だけど、ムダなんだよ。誰も衛兵には勝てない。

 

「なっ‥!?」

「体が急に‥っ」

「力が失われていくだと!?」

後ろから聞こえてくる仲間たちの悲痛な声。俺を助け出したくても何も出来ないという不甲斐なさを持ち合わせたかのような声色。

そして衛兵に刃向かった全員は、瞬く間に吹き飛ばされてしまったようだ。

主君も七十二番も、船頭たちや俺の仲間も。

 

周りに邪魔者が居なくなったのを確認してから、衛兵は再び俺の首筋に向けて注射を打とうと針を突き立ててくるだけ。

あぁ‥ホントにこれで良かったんだよな‥俺。

 

慌てて起き上がる主君と七十二番は、俺に対して「抵抗しろ!!」と叫んで喚いてくるけど‥さっきの睡眠薬かなんかのせいで、まだ体が自由に動かせないんだよなぁ‥これが。ま、動けたとしても俺はされるがまま従っただろうし。

お前たちのこと‥忘れちまうし、何も思い出せないんだろうけど‥俺‥俺‥

 

「二人とも‥っ。俺を庇ってくれてありがとな‥。俺はこの言葉が大嫌いだし、自分の世界ではやっぱり言いたくないセリフのナンバーワンなんだけどよ‥‥外の世界の今なら言えるわ‥」

 

目が覚めて気づいたらマスクを外されていたから、ちょーどいい。

だから俺は二人の方へと魅せたこともない微笑みを精一杯向けてみせた。

 

「お前たちのこと‥‥”信じてる”からな」

 

プツッと首筋に針を注入され、俺はそのままもう一度意識を手放すしか術はなかった。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

「なん‥で‥」

 

なんで‥俺たちに向かって、そんなこと言うんだよ‥

言う相手を間違えてるんじゃねぇのか、アイツは‥?その言葉は、お前の仲間たちが‥欲しくて欲しくて堪らないセリフのはずなのに‥

 

なんでこんな犯罪者の俺たちに向けて言った‥?

 

隣に居た主君も、俺と同じような絶望的な面をしている。そして同じことを考えているんだろう。

注射を打たれちまったアイツは、ほんの数秒で意識を失っては体を前のめりにしながらガクンっと落ちていった。だが、拘束されているせいで完全に倒れはしなかったが、次に目覚めたアイツは‥

もう他の世界の俺たちのこと全員を忘れちまっている?

 

そんなことがあって‥

 

「いい訳‥ねぇだろ‥っ」

 

シン‥と静まり返る審議所。

誰もが秘密警察の坂崎に注目しており、奴が目覚めるのを全員が待っている。

そして奴の仲間たちが我に返ったかのようにハッとなったあと、吹っ飛ばされてバラけていた秘密警察たちは一目散にアイツの元へと駆け寄った。しかし衛兵たちは動こうともせず、アイツの両隣に立つ形となり直立不動。今は俺たちに攻撃する意思はないと。

 

「坂さん!起きて下さい坂さん!」

「坂崎‥!」

「坂崎さんっ!」

棚瀬が坂崎の体を揺すり、起こさせようとしている中、桜井と吉田は慌てて手首の鎖を解いており、あっちの俺と鈴木は必死にアイツの名前を呼ぶ。

そして「ぅ‥」と声をあげてゆっくりと目を覚ました秘密警察。

 

怖い‥

手が震えている‥

顔が次第に青ざめていくのが‥自分の中の血がサアァ‥と引いていくのが分かる。

 

自分の周りに居た仲間たちを捉えたアイツの顔はいつも通り。

だけど、そのもっと周りに居る他の世界の俺たちを目にした途端、分かりやすいくらいビックリしており、思わず「はっ‥!?」と声を漏らすその態度。

もう‥‥答えは出ちまったか‥

 

「コイツら全員なんなんだ!?なんで同じ顔だらけ‥っ」

「落ち着け坂崎!」

「一旦戻りましょう‥。俺たちの世界へ」

 

行くなよ‥

 

「待ってくれ‥」

「行かないでくれ‥!」

俺と主君の声がほぼ同時に重なり合えば、秘密警察たちの方へ近づこうとしたけれど、今まで動かなかった衛兵が俺たちに対しては敵意剥き出しで、突然こちらへ武器を向けられたから「ヤバい」と思った瞬間‥

眩しいくらいの光が俺と主君の体を丸ごと包み込んできやがった。

 

なっ‥

なんなんだ一体‥!?

 

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