秘書「….。」
主君「なんだ、アイツの心配でもしてんのか?w」
秘書「..そんなことではありません」
主君(まあ〜珍しい顔つきになっちゃって。ただコレを指摘すると棚瀬に殺されそうだから言わんとくけど)
その背中を追いかけて2
「俺らの大事な後輩傷付けたらタダじゃ済まさねぇぞッ!!」
「!?」
なんだコイツ..っ。めちゃくちゃ移動スピードが早ぇじゃねーか。
一瞬にして間合いに入られてしまったが、こちとらやられる訳にはいかないので遠慮なく相手に向かって引き金を引く。
しかし、奴はまるで弾道を先読みしているかのように俺が撃った弾を全て避け切ってしまう。へぇ..っ、なんで秘密警察たちはこんな凄い奴を中に閉じ込めておく?
だがしかし、この男かなり厄介だな。いつもみたいに三人相手じゃないから余裕かと思ったがそうでもないらしい。とはいえ、こうも楽しませてくれる相手ならお遊びには丁度いい。向こうさんも、秘密警察の坂崎と同様自分主義な奴だということは分かったから収穫アリだな。
そしてもう一発..
俺は銃を持ち替えて別の銃弾を放つと、その先からは煙幕が吹き出してくる。
「!?」
驚いてはいるが、奴はやはりと言っていいくらい意図も簡単にこの煙の中から飛び出てきてしまった。目くらましにもなりゃしねぇってか。それよりか、その体を大きく宙に舞わせたかと思いきや、俺の遥か頭上で一回転するといつの間にかアイツは坂崎と高見沢たち側の方へ回っていた。
へぇ..、やっぱ凄いじゃん。
流石の坂崎と高見沢もその行動に驚いたのか、奴は頭を下にして宙を舞いながら「二人を離せッ!!」と怒鳴りつける。その声と同時に、今までホルスターに収めていたハンドガンを取り出すと、まずは俺と高見沢目掛けて撃ってきやがった。
しかしその意図を察した坂崎のが一枚上手だったようだな。
坂崎は人質に取っていた吉田とかいう新人を放り出したかと思えば、俺と高見沢を庇う為にその体を自ら生贄にする。そうすれば、アイツの脇腹と左肩は一瞬で血にまみれ、ついでに辺りに赤黒い血液を散布した。今日もお疲れさん、坂崎よ。さっきの仕事で珍しくあんま怪我しないと思ったらここで傷を負ったか。
「やった..!」
地面に転げていた新人くんは、銃弾が坂崎に命中したと思って喜んでいるのだろう。あぁ、可哀想に..君のそんな純粋な声が羨ましいよ。
「ち、違う..っ。あの坂さん、自ら撃たれにいった..!?」
「えっ!?」
それに気付いた棚瀬とかいう男は、下に着地したと同時に坂崎が二発も喰らっているのに、なぜそんなにも平然とした顔で立っていられるのかという不思議というか、驚愕というか、そういう表情を見せてくれていた。
確かに驚くのはムリもないだろう。坂崎の奴、新しく投与した薬のせいで更に強靭な肉体と生命力を備えてしまったからだ。あれくらいの程度の傷、今の坂崎にはどうってことない。
「ひえーっ。危なかった〜!ありがとよ、坂崎!」
「どういたしまして」
「な..なんでっ?なんで撃たれたのに平気なんですか!?」
高見沢が人質に取っている鈴木とかいう新人が、血の気を引いてしまっている。その言葉に高見沢が面倒くさそうにしながら「あ〜?」なんてボヤいてるが。
「坂崎の体は壊せねーよ!コイツは死にたくても死ねない体なんでね!」
「死ねない..体?」
チラッと坂崎に目を流す新人秘密警察。だが、坂崎は目の前に居るあの男へと顔を向き直して「何をしても無意味だ」と宣言する。
しかしあちらもこんな事で終わるはずがない。
冷めた目をしてもう一度俺たち殺し屋の三人を睨み返すあの男。坂崎が放り出した新人秘密警察を庇うように、彼を後ろへとやればアイツは再びハンドガンを構える。
「..偽物の体が」
「何を言ってるの。この二人と、アンタらのとこの俺と高見沢も偽物の体でしょ?..守りきれなかった証」
「黙れ」
「あの時の俺に感謝して欲しいくらいだね。あの時教えなかったらこの子たち死んでたかもしれないだろ」
「うるせぇな。物静かな奴だと聞いていたが、今日はやけに喋るじゃねーか、殺し屋桜井..」
そろそろ、か。
「お前ら殺し屋がこんな….、ッ….!?」
「棚瀬さん!?」
「..くっ。な、..何をしたッ?」
「さっきの煙..。アレにちょーっと全身を痺れさせる薬を仕込んでおいただけさ」
「..ッ!?」
「大丈夫ですか、棚瀬さん!?」
流石のアイツも膝を着いたか。
新人秘密警察が奴を心配して様子を窺っているが、今体になんて触れられたくないだろう。全身痺れているせいで、僅かに震えているようにも見える。
高見沢のとこに居る新人も奴を心配して「棚瀬さん!!」と大声で叫んでみるが、奴は反応すら出来ないでいるらしい。さて、ここまで来たらあとはもう….
「..それがお前の本気か、棚瀬?」
「….っ」
奴の目の前まで来てみせれば、あとはもうコイツの頭にゴリッと銃を押し付けるだけ。
さぁ..
「死んでもらうぞ」
。。。
棚瀬がどこにも居ない。
アイツどこ行ったんだ、こんな時間に。まーたコンビニかなんかで外で買い食いでもしてるんだろーけどよ。
モニターだらけのこの薄暗い部屋にアイツはいつも居る。しかしそんな事すら気にしない高見沢と桜井。すると高見沢は、開いていたポップコーンの袋を見つけると目をキラっとさせながらそれに飛びつく。
いっただっきまーすと言いかけてる最中には既にポップコーンは口の中。それを眺めていた桜井が「食い意地張ってるのがなんでうちには二匹もいるんだろ..」なんて呆れながら呟いているのが聞こえた。同意する。
しかし高見沢は「あれ?」と口にしたかと思えば、食べる手を止めてしまった。ん?どうした、珍しいな。
「..なんかコレ、湿気ってる」
「湿気ってる?」
「うん。開けてだいぶ時間経っちゃってるっぽい。珍しいな、こんなんになるまで棚瀬がお菓子放置してるの」
「放置..」
思い過ごしか?
モニターを眺め、全ての画面に目を通していると桜井が「てか坂崎ってなんで棚瀬と組もうと思ったの?」なんて尋ねてくるので、それには一応答えようか。
「お前らも見りゃ分かるだろうけど、棚瀬の実力はハンパじゃない。しかもこの俺に着いてこれるくらいの体力と精神の持ち主だ。仕事もお前らと違って出来る」
「俺らだって仕事ちゃんとやってるだろーが!」
「..それに加え」
「無視かよ!」
「アイツは覚醒すると、もしかすると俺以上の強さを発揮するかもしれんからな」
「..えっ?」
「坂崎よりも!?」
「..多分な」
高見沢も桜井もポカーンと口を開いて俺を見てくる。
しかし、高見沢が正気を取り戻したのか「覚醒ってつまり..リミッター外れるとっていう意味?」と聞いてきたので、そんなとこかなとテキトーに返事をしておく。
今映っているモニターを全てチェックしたが、まぁ居るはずないよな。すぐ帰ってくるだろうし、そんな心配するようなことじゃないか。
「何を引き金に覚醒するんだ、アイツは..?」
「そうだな..。自分の命の危機を感じた瞬間、かな」
。。。
「..棚瀬、さん?」
「脚が..痛い」
「えっ..?」
「昔の傷が..痛む」
ゆらりと立ち上がってくるこの男。
なんだ?さっきまでとは何かが違うぞ?
眼鏡をかけたその奥の瞳には、まるで生気を宿していない危険な瞳。脚が痛いと急に訳の分からないことをブツブツと呟き始め、新人秘密警察の奴も狼狽えることしか出来ないでいる状態。
その妙な空気を放つこの男から殺気が感じ取れた瞬間、全身の毛がゾワッと逆立つ感覚に襲われた。
なんだと..っ?この俺が寒気を感じたというのか?
俺が銃を向けているのなんて目にも入っていないようで、グググッと顔をこちらに上げてくる仕草が気味悪い。
コイツ、痺れを感じてないのか?
「桜井!もういい、帰ろう!」
「..あぁ、そうだな」
「お遊びのつもりがここまでくるとやってらんねーしな..。サッサとズラかろうぜ!」
坂崎と高見沢の呼びかけに答えてみせるが、今コイツに背中を見せない方が賢明だろう。
体の向きを変えず、銃を構えつつそのまま後ろに立っている二人の所へ向かいかけていたその時..
「逃がしゃしねぇよ….」
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