人魚の王子様
僕は今日でごじゅう‥‥じゃなくて、18歳になる海の底の王子様。
人間なんかじゃないよ。“人魚”なんだよね。ほら、見てよ!この下半身。サファイアの色をした綺麗な鱗達に大きな尾ひれ。自慢と言えば自慢だ。
だけど僕はこんなものが欲しいんじゃないんだ。
そう、脚が欲しいの。人間になら誰にでもある脚‥がね。叶わないと分かっていても願ってしまう。
この下半身が脚なら地上を歩き回れる。いや、歩きたいんだよ。でも、それは限りなくムリに近いもので‥
僕は人魚であって人間じゃない。自分の尾ひれを見る度溜め息しか出ない。悔しくて‥。
お姉様達に囲まれて育った僕は、男なのに何故か髪の長さは腰まであるし、キラキラ光るものが好きだったりする。お兄様だっているけど、いつもお父様の仕事のお手伝いとかで居なくなってしまうから仕方なくお姉様達の相手をされていた。
そんなお姉様達に聞いたんだ。地上には人間がいるんだって。海の近くの大きな建物に二人の王子様が住んでるんだって。
僕と同じ王子なのにあっちは人間で‥、僕は人魚。何だろうコレ。どうしてこんなにも違うのだろう?それを考えるだけで胸がズキンとする。
だから僕はその王子様達を一目見てみたいんだ。こんな気持ちがずっと胸の底に秘めていて、僕は今日この日に地上というものがどんなものなのか確かめてやろうと思って今は海の上の方まで泳いでる最中。
深い海の底から海面まで上がってくるのには時間が掛かる。けれど、やっとの思いで海から外を覗かせたらすぐに、とても大きな船があるのを目にしてしまった。その船は海底に沈んでいるボロボロな船しか見た事なかった僕にとっては興奮せざるをえないほどの見た目と大きさだった。
「わぁあ…!凄い!これが本物の船!」
思わずふふっと自然と笑みがこぼれる。そして僕はそのまま真っ先に船がある方へと泳いでいき、ようやく船の近くに着いたのでこっそり顔を水面から出すと、多くの賑やかな声が響きわたっている。何だろう?何をしているんだろ?このワクワクした気持ちはもう止められない!
というか人間!人間はどこ?
そう思っていると、ひょっこり船体から顔を覗かせて海を気持ちよさそうに眺めていた人物が現れた。一瞬ドキッとしたけれど、あの人は僕の存在には気づいてなさそうなのでなんとか大丈夫そう。
「あれが人間…」
よーく目を凝らしてみると、その人間は可愛らしい顔をしており、目の辺りに硝子のような物を纏わせて、ふわふわとした柔らかそうな髪が特徴的だ。
海から飛び出していた頭を今以上に沈めさせ、じっとその人物を見つめていた。が、肝心の脚が全く見えない。うぅ..なんでぇ?
-早く…早くその脚を見せて下さい-
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