罪人続編 番外編弐 - 1/32

罪人

 

自分達の家の屋根の上で暇つぶしというか、ただグータラしてるだけと言った方が正しいのか‥俺と高見沢は仕事をサボって‥る訳じゃないからな。今は休憩時間だからここに居るだけだ。

あぁ、勿論船頭も居るよ。俺らとは違って聖の剣を手にしながらいつも振り回して遊んでる。いや、正確に言えば修行をしているだけだが。新生、聖の剣な訳だからよ、また一から心通わさないとダメらしいし。休憩だろうが休日だろうがここ最近のアイツはこうして修行に励んでいる。

 

あと五年持つか分からねー命なのによぉ、見てるこっちからしたらアホと言うか真面目というか‥。嫌いだがそういうやり切る部分は認めてやるよ。

高見沢は両手を頭の後ろに持っていき、長い脚は適当に組みながら寝転んでは「あー‥」とか唸っていた。

組んでいた足の片方をユラユラ揺らしながら、つまらなさそうに空を見上げては溜め息をついている状態。ストレスか何かなのか、コイツの考えてる事は俺には解らんがきっと俺の方がもっと読み取りにくいかもしれない。

 

「さくらぁい」

「なんだ?」

 

急に呼びかけられ、俺は寝っ転がっている高見沢の方へと顔を見やると彼は「何かもう色々限界‥」と高見沢らしくなく、弱音を吐き出していた。

疲れた、と漏らしながら相変わらずの曇り空を見上げて何かにふけっているような雰囲気だ。過去の事を思い出しているのか?

 

「桜井ってさ‥詐欺師やる前ってそんなに貧乏な暮らしだったのぉ?」

「‥何度か話した事はあるけど確かに小学生の頃は貧乏っちゃ貧乏だったな。まだ母親が居た頃はマシだったような気もするけど、親父と二人になった時からはエグかったな‥」

「ランドセル背負ってる時からクスリで溺れるってある意味すげーよ。俺だったら怖くて手が出せないねぇ」

「だってよ、気持ちよくなるからこっち来いって言われたんだぜ?そりゃあガキは純粋だから親に従っちまうって」

「父親がクソなんだな。そういうのって普通、自分の子供には見られたくないしやらせないだろう?特に所持してるクスリが少なくなるのが一番嫌なんじゃ‥」

「あのクソ親父が何考えて俺をあんな風にしたかは今でもわかんねーよ。‥ただ、俺もこんなザマだからさ。親父の事あんま強く言えねぇし」

「流しとかやった事あんのー?」

「や‥、つか何で知ってんのそんな事」

「さぁー?」

 

ニヤッと笑いながら俺を一瞬だけ見た高見沢の目が楽しそうにしていた。

 

「それより高見沢はさ、俺が思うにドがつく程の変態だよな」

からかうつもりで言ったのに、高見沢は少しばかり俺の言葉を聞き受けてから、空を仰いでみせた。

 

「否定はしないねぇ‥」

「妹と関係結ぶってどんな感じ?」

「はぁ?‥んー。まぁ、スリルはあるよねぇ。親に見つからないかっていう」

「生でヤったりしたの?」

「ッバカ!んな訳あるかっ!」

「でも実際ヤったんだろ?」

「年頃の男女だからな。そりゃ‥妹も嫌がらなかったし‥」

「なら監禁してた女達は?どんな反応だったの?」

「‥みーんな死んだようなツラしててよぉ、今考えりゃあんなんでも嬉しがってた俺ってめちゃくちゃ異常だなーって思うけどさ‥。それより桜井だって彼女居たかいなかったのかいい加減吐けよ!何で隠す?」

「ん?居たのかいなかったのか‥なんて言われても、居たっちゃあ居たし、居なかったと言えば居なかったかなー」

「ずりぃぞお前‥」

「だって、大事な家族だったからさ。それに結婚すらしてないのに子供達を大勢面倒しなきゃいけなかったし‥俺はそっちのが楽しかったし幸せだったからよ」

「ずりぃよなーほんと」

 

羨ましいわぁ、と付け足してから高見沢は足をプラプラさせては溜め息をつく。

 

羨ましいなんて言わないでくれよ‥。こっちは家族は家族でも血の繋がってない家族なんだぞ?それも詐欺師グループの。その時は幸せだったかもしれないが、その後に待ち構えている人生のが恐かった。

肉親がちゃんといる高見沢の方が羨ましい‥とは言い出せなかった。俺はもう一人ぼっちだから良かったものの、高見沢みたいにまだ残された家族が本土には居る奴らのが大概だ。不慮の事故として死んだ事となった罪人の親は兄弟、隣に居ると誓い合った人、子供や友人は一体どんな反応をするのだろうか。

 

絶望、破滅、死、自殺、失踪‥色々と頭に浮かぶけれど、それはどれも暗いニュースになるような単語ばかりだった。

 

「高見沢ならさ‥」

「んー?」

「残りの一年だけ自由にしてもいいって言われたら‥何する?」

「何って‥、まずは家族に謝りたい。そんで‥監禁しちまった女達にも謝りたい‥。でも俺は一年も自由なんてなくていいや」

「え‥?」

「だって、俺は戻ればまた罪を犯してしまうに違いないから‥」

 

あぁ‥そっか。本気で殺したい奴を殺せばそれで人生終わってもいいという訳ね。単純で‥凄くいいと思う。

そうしたらその人を殺しそうな目付きもどうにかなるのだろうか。

 

「桜井は?」

「‥貧しい子供達の為に、何かしてやりたい」

「ガキ好きだよなぁお前‥。理解に苦しむわぁ」

「‥子供ってあったかいんだよ。それに、柔らかくて‥あのキラキラした瞳がいつも俺の支えになっていた」

「ふーん‥」

 

返事はそれだけだった。

しかし、背後から気配を感じた時にはいつの間にか船頭がそこには立っていて、今の話をどこまで聞いてたのかは不明だが、「あのさ‥」と口を開いた。

 

「お前ら‥本土に戻ってみるか?」

「え‥?」

「は?」

「あ、その、一日だけなら時間を与えてやってもいいって意味で。別にここから離れられる訳じゃないからな?」

 

そんなもん知ってるっつーの。

 

「俺ら船頭だって年に五回は帰ってるのにさ‥お前らだけ八年間この島から出られないってのも‥。だから俺が悪魔達に頼んでみるよ。勿論条件付きだろうけど。どう?」

どう?なんて聞かれても、高見沢と暫し目で会話し合っているが、答えはお互いに決まっていたようだ。

 

 

「戻れるなら‥」

「戻りたい」

 

 

またこの後の小話は書いていくつもり

 

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