BEASTARS

少し前からBEASTARSっていう漫画を読み始めてて、U-NEXTにもやっとアニメがきたから今観てる途中です🐰🐺⸝꙳

むかーーし、リアルタイムでアニメやってた時に何回かたまたまチラッと観てたんだけど、その時はアニメのCGがちょっと独特すぎて「変なアニメ…」としか思ってなかったけど、改めて漫画読んでアニメも観てみるとそこまで違和感ないからまぁ観れるは観れる笑

まだ漫画も13巻くらいで止まってるからまたポイント貯まったら買おうと思ってるけど、私はヒロインのうさぎのハルよりもジュノちゃんというハイイロオオカミの女の子がかなり好きです🐺⸝꙳

13巻まで読んだ限りじゃアカシカのルイ先輩といい感じになるから「おぉお…!?(〃▽〃)」となって嬉しく思う。ルイ先輩、好きだけど嫌い😂笑

ズートピアもそうだけど、異種族が暮らしてる獣たちの世界は本当に物語を描くのが難しそうだなと思うなぁ。私にはストーリー思いつかないや( ‘ω’ )

あと作者の人、てっきり男の人かと思ってたら女性なんだね…!?しかも刃牙の板垣先生の娘さんって最近知ってめっちゃビックリした!🤣

だから同じ苗字の板垣なのね…!

この人他にも漫画いくつか描いてるけど、どれもこれも獣の話ばかりだからめちゃくちゃケモナーなんだな〜と思って笑っちゃった😂

獣いいよね!獣人とかもホントいいよねぇ、異種族の恋愛とか萌えるしね(♡´▽`♡)

追記は華革命の続き!このクソ寒い大寒波で雪が降るこの時期に書けたことがちょっと嬉しい❄︎.*

 

 

平行世界の君3

 

「くしゅんっ」

「お前…薄着すぎないか?大丈夫?」

「お前に心配される筋合いはない」

俺の癖して可愛くねぇなコイツ…

店に行く前、自分の車に寄って確かそのまま放置してあったコートが中に入っていたはず…と思い、車の後部座席を漁っているとやっぱりコートが出てきたのでそれを幸介に渡して貸してあげる。

「その白衣脱ぎなよ…、逆に目立つ」

「ふんっ」

「なんでお前そんな愛想ないんだよ俺の癖して…」

「逆にお前は愛想がいいのか?」

なんて嫌味満載に尋ねてくる幸介に対して俺の代わりに桜井…?マサ?が「コイツは人に好かれる天才だよ」と付け加える。

「ふぅん…あっそ。どーでもいいや。行くなら早く行こ」

「う、うん」

そんなこんなで高見沢の家の近くにあったチェーンの喫茶店に入り、雪もそこそこに降っているので店内あまり人も多くない。静かな雰囲気のが強いので大きな声では喋れないけどお互い一度落ち着いて話した方がいいと思うのでまぁこれでいいとしよう。

寒いので適当にホットコーヒーを俺と桜井の分を頼み、幸介だけは物珍しそうにメニュー見つめながら「コレとコレ」と指差しながら黒糖ラテといちごとりんごのホットパイを注文していた。注文して数分でドリンクだけはきたけど、パイだけは少し時間がかかるみたいなのでもう少し待たされるのだろう。

しかしこうして初めてマサ…と話し合う気がする。

あの時は自分とユキと、そして桜井と高見沢……いや、アルフィーというグループ自体の存続の危機もあったせいで自分のことしかほぼ頭になかったからこうやって改めてマサと話し合うのも初めてなんだよなぁ…と。不思議な感じがする。

 

「あの…桜井?マサ?なのかどっちか分からんけど、話し合いに応じてくれてありがとう。てっきり逃げられると思ってたからさ」

「……。変な感じだ」

「なにが?」

「俺たち二人の意識がハッキリとリンクしてる。まるで共存でもしているかのような感覚がするよ…」

「てことは…桜井でもあり、マサでもあるって意味なのか?」

「そんな感じ。ただ、坂崎がどちらかと話しがしたければ桜井の方でも話せるし、賢としても話せるって言った方が早いか?」

「へぇ…。じゃあ今は…桜井の方の割合のが大きいってこと?」

「その時によって変わる。…忘れていた記憶が全て蘇ってきたよ…。あの日幸に記憶を封じ込められて以降、この男からお前たち四人がどう関わってきていたのかをなんとなく心の奥底から見えていたんだ」

この話しぶりは…今マサになったのか?

「お前と一度真剣に話しがしてみたかった。…ユキが、お前のことをいい人ではないけれど悪い男とも言い切れない、なんか微妙な奴みたいな言い回しをしてたしまだお前の方がシュンよりかは話しが通じそうだからさ」

「確かにいい奴とは言えねぇな。幸を使い潰す勢いで仕事させてたのも事実だし、こちとら金稼いでもらわなきゃ割に合わねぇからな。アイツは稼ぎ頭だったから休む暇も与えさせなかったうえに俺とも個人的に関係持ってたからそりゃあ体がボロボロになっちまってても不思議ではねーわなぁ」

「お前ッ…!」

「やめろ幸介、ここでは大人しくしろ」

「クソっ…」

今にも拳が飛び出してしまいそうな勢いだった幸介を軽く制し、マサとの話し合いを続けていく。まぁマサ本人はあんま幸介のこと気にしちゃいなさそうだからコイツも相当肝が据わってんだろうなってのが予測出来る。

 

「悪ぃな、姉ちゃん好き勝手しちまって。だが恨むならお前の両親を恨め。あの二人が幸を俺に売ったんだから俺を恨むのは違くねーか?それにお前は俺が幸を買い取ったあとに産まれたんだろ?そんな幻想の姉貴を抱(いだ)いてよくここまでやってこれたな?」

「俺も俊から話しを聞いて初めて俺に姉がいることを知ったよ…!俊の話しを聞けば聞くほど姉さんに会いたくなった。なのに俺の手の届くところにはもういなかった姉さんを取り戻したくて…だから俊と秘密裏に協力し合ってお前の営んでいる妓楼から姉さん救い出そうと決めていたんだっ。なのに……あの日アイツは姉さんを救うことに失敗した…。燃え盛る吉原を遠目から見て俺は絶望しかけたよ…。でも運命はイタズラしてくれたようでね、姉さんが川に飛び込むところを俺は見ていたんだよあの時。その時はまだその人が姉さんだなんて知らなくて、慌てて俺はその人を助け出したよ。重たそうな着物を着ていて、必死に吉原の方から逃げ出してきた姿を見ていたらその人はきっと姉さんと同じであの花街に囚われている女性なんだろう…と思って。逃げ出せて良かったね、なんて思いながら俺はその場から立ち去ろうとしてたのにまさか自殺しようとするとは思わないじゃん?せっかく自由になれたのになに死のうとしてるんだよ!って怒りたくなったよ…。だから俺はその人を助けた。助けたらまさかの俺と瓜二つな顔を持っていて……」

それが…ユキだったってことか。

 

「きっとこの人が俺の姉に間違いない!と直感で思ったよ。寒さで凍えていた体と今にも死にそうな姉を目の前で見ていたら助けてあげなきゃと本能が叫んでいたけど、あの火事の騒動でどさくさ紛れに吉原から逃げ出した女性が大勢いたのかは知らないけど、追っ手がすぐそこまで来ていた声がしたから俺は咄嗟に姉さんを違う世界へ飛ばしたんだ。まだ開発したばかりの不安定でしかない物をやっと…やっと出会えた姉さん相手に使うのは不安で仕方なかったけど、捕まってあんな地獄みたいな場所に連れて行かれる方がマシだと思って姉さんをこっちの世界へ送ったんだ…。……信頼出来るもう一人の俺がいるところへ」

「……お前、」

あの時……

ユキが俺の家に来たアレは、偶然じゃなかったってことなのか?

ユキからは、あの時吉原から逃げ出して川へ飛び込んだらなぜかこっちの世界へ飛ばされてしまった話しは聞いていたし、ユキが弟のせいでこっち側へ来てしまったとは言っていたのは覚えてはいるけれど…

コイツは始めからユキだけを助ける為に全て仕組んだということか?

もう一人の信頼出来る俺って…、コイツは最初から俺を知っててユキを託してきたって意味だよな?

 

「幸介は…俺のこと知ってたのか…?」

「まーね。俺は科学者であり発明者でもあるからね。アンタの世界と違って俺たちの世界は科学がかなり進んでいるからねぇ、だから俺みたいな一部の開発者だけは色んな情報先取りしてやってきてるんだよ。ま、まだ実用には至ってないうえにこんな実験がされてるだなんてほとんどの人間は知らないけどね」

「す、凄いなお前…。まだ若そうに見えるのに」

「…けど俺がこうして勉強出来て開発出来たのは俊のお陰でもあるんだよね。アイツのあの権力と財力のお陰で俺は科学者としてやっていけたようなもんだったし…」

アイツ、あんなヤバそうな感じして向こうの世界ではそんなに凄い奴だったんか…

「それに姉さんのことを語る俊のあの姉さんを好きだという気持ちと眼差しは本物だって理解していたから…。だから俺はきっと姉さんと俊はお似合いのカップルになるんだろうと…この男の魔の手から俊がきっと姉さんを助け出してくれるんだろうと…そう思っていたのに…なのにッ…!!……なんでこんなことになっちまってるんだよ…。俺はただ姉さんと暮らしたいだけだったのに…っ。挙句の果てには姉さんまでもがこっちの世界の俺に恋なんかしちゃってさぁ!……俺が元気になった姉さん見送る時の気持ち、お前らには分かる訳ねぇよな!ずっとずっと捜し求めていた唯一家族と呼べるたった一人の大事な人をお前らに奪われる気持ち、お前らなんかに分かるはずもねぇよなぁッ!?」

「……。」

なんて…言っていいのか…

隣で聞いていた俺は幸介をただジッと見つめるだけしか出来なくて、だけどマサは幸介を下らなそうな目で見つめながら腕組んで話しを聞いていただけだった。桜井はこんな態度しないからまぁ今もマサなんだろうなってのはすぐに分かるけども。

そこに店員さんが少し気まずそうに「お待たせ致しました、いちごとりんごのホットパイです…」と幸介が注文したパイが今しがた届いたところ。う、うるさくしてすんません…店員さん。

 

「幸介…、もう少し声のトーン抑えようか」

「うるさいっ。全員に裏切られた俺の気持ちなんてテメェらなんかに分かってたまるもんかッ…」

「……ごめん」

「だから今回俺がここへ来た。お前ら全員に文句言ってやりたかったから。俊と賢の記憶をわざと呼び覚まして俺のこの言いようのない気持ちを全部ぶちまけたかったんだよッ。…姉さんが今俊と二人きりであの部屋にいるのかと思うと本当は発狂しそうなくらい苦しい…っ。もうここまでくると姉さんすらも許せなくなりそうで俺自身がコワイよ…!ったくよぉ…」

はァーーー……とながーいため息をついた幸介が目の前にあるまだ温かいパイにフォークをサクッと音を立てながら刺しては一口大に切り離したパイをパクっと頬張る姿はどちらかと言えば美味しそうな表情をしているというよりも、虚しそうな…味なんか全然感じてなさそうな疲れ切った表情をしている。

謝りきれない…。この子はずっと一人でユキとの幸せの為に動いていたんだもの…。それなのに俺はずっとユキとは向き合えずに一緒に暮らしてはいるものの、弟である幸介の気持ちなんて知らずにユキのことを弄ぶような形で傍に置いているだなんて…

この子が俺たちに対して怒って当然だ。俺は今まで最低なことをユキに…

すると今まで聞いていただけだったマサが「やっぱ俺は関係ねぇじゃん」と幸介の逆鱗に触れそうな言葉を言い放つ。そのせいでギロッと強く睨みを効かせてる幸介の視線は、向けられていないはずの俺でさえ痛いと感じてしまうレベルだ。

 

「アンタが…、アンタが姉さんを殺しかけた張本人なんじゃないのかよ…!?」

「さっきも言ったが俺は幸をあのクズ両親から買い取っただけだ。アイツは売られたんだ。差し出されたんだよ、両親に」

「だけど姉さんの体の管理もお前がしっかりしていれば姉さんは今でも元気なままでいられたはずなのに!子供もつくれないような体にさせたのはお前だろうがッ…!!」

やっぱり…

ユキの体はもう……

「仕方ないだろう?借金があったんだから。お前も分かってる通り向こうの世界は貧富の格差がエグい。お前も俊という豪商の甘い蜜を吸ってきたんだから文句は言えねぇはずだが?誰がお前をそこまでのし上げてくれたと思ってる?お前は俊に感謝しなきゃいけねぇ立場なんだろう?それを仇で返すつもりか?」

「俺とアイツとの約束は姉さんを助けることが条件だったんだ。だから俺は俊の言う通りに動いた。多くの犠牲も目を逸らさず見てきた!なのにッ…アイツは姉さんすら救うことも出来ずに呆気なくお前に殺された…!!あの火事でどれだけの被害や犠牲者が出てるかなんて、バカみてぇに死んでったお前には分からんだろうなぁ!?こっちの世界で姉さんに会えて嬉しかったか??また姉さんをいいように出来ると思って楽しかったか?なぁ賢、お前の許嫁はお前に置いていかれて相当悲しんでいたそうな…!お前らが死んでいったあとのことなんてお前らはなーーんも気にしなくていいから本当にお気楽だよなぁ…っ?こっちの世界では成功者の人気者?バカが……コイツはただの人殺しの悪人だよ…。死んでくれよお前ら二人とも…ッ」

「……。」

食べようとしていた手を止め深く俯く幸介。

この子は…きっと俺たち以上にしんどい思いをしてきたのだろう。

ユキの時にも感じたが、俺は平行世界のもう一人の自分に対して結局は何もしてやれなくて…。どう手を差し伸べればいいのかが分からない。生きてきた境遇、抱えてきた闇があまりにもこの子は強大すぎて俺なんかが救えるだなんて驕ったりなんかはしてないけども、でもやはりこの子はもう一人の自分なのでこの子だけでもどうにかしてあげたい。

そう思うのは俺の偽善なのだろうか…?

 

「ごめんね幸介くん…その要望には応えられないかな」

「……っ」

マサの喋り方が朗らかな雰囲気に変わったのが分かり、これは桜井だということにすぐ気づく。

「俺は今〝桜井賢〟として生きているからそう簡単には死ねないよ。…ごめんね、君の言うことはごもっともだとは俺も思う。許しがたいよね…、苦しかったよね…。俺の中にいるもう一人の自分が反省していないのが俺にも伝わるから俺自身も初めてマサに対して心底腹が立つし嫌悪もするけど…、だからこそ俺が代わりに謝る。本当にごめんね、幸介くん。ユキちゃんを…君の大事なお姉さんに酷いことを沢山してしまって。マサがユキちゃんにした仕打ちはこの俺でも到底許しがたいけど、唯一の肉親である君がこんなにも怒りをぶつけてくるのは当然だと思う。許してもらおうだなんて言えない…。だって本当にこの記憶は……口に出すのも億劫になるぐらいの記憶だから…っ、君がマサやシュンに対して死ねという気持ちも痛いほどに分かる。けど…!俺は今桜井賢として生きているのも事実なんだ。俺には今大勢の大切なものがある。だから俺はこの男と……一緒に一つ一つの物事に対して全力で向き合うから…このままマサと一緒に償わせて欲しいっ…。もちろんユキちゃんにももう二度と酷いことなんてしないと誓う。俺には今嫁がいるから……だから道を踏み外さないようにしなければならないのも本当だから…マサには俺から言いつける。お前は全ての物事に対して愛を知らない哀れな男だってことを俺が言いつけて怒るから…!だから殺さないで欲しい…。この男が可愛い訳ではないけれど、やっぱり平行世界の自分だと思うとさ…甘いと思われるかもだけど、見捨ては出来ないよ……」

「……。」

「桜井…」

桜井もマサも…互いの記憶と人格を共有出来ている証拠なのだろう。桜井からこんな言葉が出てくるだなんて夢にも思わなかったから手の平にじわりと滲んでくる汗は俺が考え事をしすぎなせいなのか。

多分きっとマサも話せば分かる奴だ。だからこそ桜井の人格が今こうして出てきてしっかりと話してくれているし、記憶も上手く共有出来ているのだろう。桜井がマサのどんな記憶を見ているのかは分からないが、俺や幸介が知ったら激怒するようなものだと桜井自身も分かっているからこうして幸介を上手く説得してくれているんだよな、多分。

二人は…共存していくつもりなのか?

 

「…悪いがその薬の効き目は一日限りだ。アンタが賢と分かり合えたところで賢の人格は消滅する。大丈夫だよ、桜井さんとやら。その男を本気で殺したい気持ちに偽りはないけど、姉さんが泣くようなことは絶対にしないさ。殺しはしないから安心しな」

「その拳銃は脅す為だけのもの?」

「あぁ…。アンタと俊には初っ端から見破られていたけど、俺は銃なんて使ったことがない。本当は人なんて脅したこともないただの弱虫だよ…」

「君は弱虫なんかじゃないよ。お姉さんを救いたくてずっと奔走して頑張っている証じゃないか。今日ここへ来たのもユキちゃんの体の為を思ってのことでしょ?」

「…あぁ、そうさ。幸姉さんの体は他の女性とは違って傷だらけだから…俺が必死で開発した薬を飲んでもらって今修復してる最中なんだよ。それに俊と賢がこんなにも近くにいるんだからお前らの人格を抑えつける役目を姉さんに担わせているのも負担になってしまって悪いとは思ってるけど、姉さんがこっちの俺と一緒に居たいって言うから仕方なく…。だけど姉さん…結局は俊を選んだってことでいいのか?」

そう睨みつけながら俺を見てきた幸介だが、俺もなんて答えればいいか分からなかったので「どうだろうね…」と曖昧な言葉でしか返せなかったのは申し訳ない。

「こんな結果だと俺が姉さんをこっちの世界に送り出した意味がなくなるじゃんか…。こっちの俺なら幸姉さんをもっと大事にしてくれるかと思っていたのに…!!」

「ごめん…」

「ふざけるなッ…!姉さんに心配かけさせたくなくて姉さんには多くのウソをついてしまっているけど…、姉さんを幸せに出来ない奴の傍になんて置いてけないよこっちだって!お前が姉さんと暮らす方を選んだんじゃないのかっ?なんだよこのザマ!」

「俺は…お前たちと違って一人だけここの世界の人間だから…、ユキやマサにシュン…それにお前になにか強く言う権利はないに等しいと思ってる。それが足枷になってしまっているのには気づいているけど、ユキが…シュンを選ぶのなら俺はもうそれ以上はなにも言えない。二人のことは二人だけしか分からないだろうし、本気でユキを愛しているシュンと本気で愛されると分かっているユキなら当然あの二人が引っ付くのは自明の理だろ。俺はユキを愛しはしないと宣言したり、抱くのは絶対にしないとユキの前でいつも言ってる。俺は俺なりにユキを想って大事にしてきたつもりだったんだけど…、やっぱりユキはそっちの世界の人間だもんな…。シュンと惹かれ合うのも当たり前だよ…。そこの隙間に俺は入っていけないから…だから俺は高見沢の家から出たんだと思う。だって勝てないから…」

「なぁ…坂崎」

「…なんだ?」

桜井に呼ばれたけど目つきが桜井じゃない。マサに呼ばれたってことか?

 

「俺と俊はどうしたって死人だ。勝ち負けがもしあるとしたら勝っているのはお前だろう。だってお前は今こうして生きているんだから。俺と俊は一度は終わったこの人生…。さっきこの男が言っていたように俺は転生した身で今〝桜井賢〟として生きているつもりだ。幸をまたもう一度この手で可愛がってやりたいのも本心だが、俺はそれ以上に大切なもんが多くあるのをしっかり理解している。俺は俊と違って盲目じゃない。自分が今どうすればいいのかを分かってる。だから争いは避けたくて高見沢の家からすぐ出て行ったんだよ。…分かるだろ?」

「…うん。そう言い切ってくれてありがとう、マサ。俺たち…俺と桜井と高見沢の…アルフィーとしての未来を心配してくれてるって意味なんだよな、お前は?」

「あぁ…。以前は俺も暴走していたせいで坂崎や…この男と高見沢のことなんてなにも考えられていなかった。目の前の幸しか見えていなかったのは事実だ。悪かった坂崎…。殴りたければ殴ってくれ」

「えっと…それはちょっとムリかなぁ…。桜井の体でもあるんだし、この時期ツアーやらないとはいえテレビとかラジオもたまにあるんだもん、流石に殴れないよ…」

「そうか…。幸介も一応悪かったって言っとくわ。俺は俺のやること、仕事をしていただけだからお前に対してはあんま悪いとは思っちゃいねぇがな」

「その態度見てりゃ分かるっつーの…。あーーほんっっとお前と俊キライっ」

イライラしている割にはまたパイを切り分けてはパクっと口に入れてるからさっきよりかは少し落ち着いたのだろう。食べながら幸介が「あー冷め始めてる、最悪」なんて呟きながら急いで食べ進めている様子を見ているとコイツも年相応な言動と態度をしていてなぜだかこっちもホッとする。

きっとこの俺は相当今まで色んなことを耐え抜いたり死ぬほど努力してきたのだろう。そう思うと自分自身とはいえ、やはりかなり年下なのでなんとなくそこで幸介のことが可愛く見えてしまった。

 

「…そんな目で見るな、気持ち悪いっ」

「あぁ…ごめん。なんかお前、不器用そうで可愛いなって思って見てただけだから気にすんな」

「なんだよそれ!俺のことバカにしてんのかッ??」

「パイのカスが口元についてるのが可愛いと思っちゃうくらいにはね?」

「…!あーークソっ…!」

恥ずかしかったのかは知らないが、幸介が慌てて口元を拭う仕草を見せたので口周りが綺麗になってしまった。あら残念。そんな幸介は黒糖ラテを飲みながら「これ美味しい」と呟く。

「ところで坂崎、本当に幸と俊をあのまま二人きりにしておいても良かったのか?」

そんなことを聞いてくるマサの質問に少し答えに詰まったが「んー…」と唸っては考え込む。

「シュンがユキに変なことさえしなければ…。それにさっきのアイツの目が…本当に俺を撃ちたくないっていう目をしてたからなんか気迫に負けて出てきちゃったというか…」

「…俺と桜井は今こうして上手く共存出来ているが、シュンと高見沢はこう上手くはいかないはずだぞ」

「え?なんで?」

「今のアイツは俊の人格が相当強く出てきちまってるはずだ。だから高見沢としての人格を俊が押し込めちまうと幸が目の前にいるから余計に高見沢が負ける可能性のが高いんだよ。アイツらは今俺たちみたいに上手く共存出来ていない。俊が本気で幸を口説き落とそうとしたらお前どうするんだ?幸をアイツらに渡すのか?」

「それは……」

「そろそろいい加減素直になったらどうだ、坂崎さんよ?幸を弄んでて楽しいか?まぁ幸を弄ぶのが楽しい気持ちは分からんでもないけどよ」

「っ…。弄んでるつもりはない!アイツが可愛いと思っちまうのは事実だ。けど…っ、俺らには障害が多すぎるんだよっ…!ユキは俺たちの世界の人間じゃない、それでもって花魁やってたせいで体はボロボロ、この世界にユキが生きていける戸籍も未だに何もない状態なんだぞっ?それに年の差がありすぎる…。ユキが桜井と高見沢を気にかけてくれるのはマサとシュンが中にいるからであって、お前たち三人が向こうの世界を知っているのに対して俺一人だけ何も分からなくて…。最近のお前たちを見ていたら俺置いてけぼりにされてる感じがして酷く不安になってさ…、またアルフィーがいつおかしくなるのかも分からない恐怖に怯えているのは俺だけなんだって気づいたらバカらしくなっちまって…。正直このしんどさから解放されたい…。俺は毎日何と戦ってるんだって…アホらしくなるよ…本当に」

「今もキツいのか?」

「かもしれないね…。俺はどうすればいいんだろうって、悩んで動けなくなっちゃってるよ」

マサの目を見ていた視線をコーヒーに落とし、飲む気もないのにカップに手をかけてはいるけど口元に持ってくることはしない。

すると幸介が「姉さん今日だけなら薬の影響で体が一番元気になれるんですけど」と嫌なことを口にしてくる。

 

「…え?」

「俊の奴が姉さんを好き勝手しようと思えば出来るんだよ、ムカつくけどさ。まぁ俺は昔から俊の奴が姉さん好きなのは知ってたし今更そんなことどーだっていいんだけども」

「……。」

「嫌なら邪魔しに行けば?もうやっちゃってるかもしれないけど〜」

「…なんで俺が邪魔しに行かないといけないんだ?二人が好き合ってるなら俺は別に……」

「ふぅん。人当たり良さそうな顔して姉さんに対してだけは強情というか素直じゃないってゆーか?アンタなんでそんなに姉さんのこと嫌いなの?」

「嫌いな訳ないだろ…っ。嫌いだったら自分の家に住まわせることなんてしないよ…」

「じゃあ幸姉さんのこと好きなの?どう思ってるの??」

「それは…」

「答えられないんなら姉さん返してくれない?言っとくが俺の方がお前なんかより姉さん大事に出来るって言い切れるんだからな!?シスコンだとか気持ち悪いだとか言われようが俺にとっては大切な肉親なんだよ!姉さんがお前のこと好きだろうがそんなもの知ったこっちゃねーよ!帰ってきて欲しい。子供の頃からずっとずっと待ってた…!俺はあの親を親だなんて思っちゃいない!だから姉さんだけが俺の唯一の血縁者なんだよッ!無理やり花魁なんてものやらされて、傷ついた体と心を自分自身で必死に守りながら生きてきた幸姉さんを救えるのは俺だけだ…!!俺だけが姉さんを解ってやれる!姉さんのことを本気で大事にしないお前なんかに幸姉さんを託すつもりは全くない!」

「……。」

「幸姉さんを返して。そっちの俺」

「……断る」

「はァッ?」

「…!」

横にいる幸介の睨みつける視線もしんどいが、前に座っているマサの視線も少しビックリしているのも感じ取れた。

 

「ユキがどうしてこっちの世界にまた戻ってきてくれたのか…それは俺に会いたいが為にお前に無理言ってまで俺に会いに来たんだろ?だったらお前は大切な姉であるユキの気持ちを尊重しろよ」

「だけど…!」

「ユキが俺を選ばなくたって構わない。俺はユキに対していつもいい男が出来たらソイツと幸せになれと言ってあるし、ユキが本当に幸せになれるのなら俺はアイツを手放す覚悟もあるからだ。その相手が例えシュンだろうと高見沢だろうと俺はユキの幸せを願う。だけど…、だけどせめてユキの傍に居させて欲しい…っ。妹のように可愛いのも本当で…俺はただの親戚のおじさんみたいなポジションでしかいられないのは分かってるから…。俺もユキとの関係をどう決着つけようと悩んでばっかで、アイツに好かれているという心地良さという安心感と俺のエゴで一緒に暮らしてる一方でアイツは…ずっと俺が振り向いてくれるのを待っているのも分かってて俺は敢えて答えを出さずそのまま卑怯にもズルズルこの関係を続けていた…。こんなの…ユキに対して失礼すぎるに決まってるのに…」

それなのに俺の中では答えが見つからないのは…俺が本当に一番最低な奴なんじゃないかと…そう思ってしまう。

 

「俺はお前たちと違ってユキとは向き合えない…っ。いつも逃げてばかりで曖昧な関係のままにし続けてきた結果がこれなら俺は文句なんて言えやしないだろ?俺の怠慢だ…。いつまで経ってもユキは俺から離れないと…そう勝手に信じ込んで…いや、そう思いたかっただけなのかもしれん」

「姉さんを…弄んでたのか結局は?」

「そうなのかもな…」

「くっ…。やっぱりアテにならねぇお前なんか!」

「だけど俺はユキを一番に考えていたつもりなんだ、これでも。だからユキの自由にさせていた。高見沢と関係持っていようが目を瞑った。本当は俺の方へ戻って来いって言いたかった…でもユキのことを考えるとなにも言えなかった…!一番苦しい思いをしているのはユキだって分かっていたから俺は…俺は…っ」

くっそ…。言葉が続かねぇ…

どう足掻いても言い訳にしか聞こえないのが恥ずかしい。俺ってこんなにダサかったっけな…

するとさっきから黙って聞いていたであろうマサが「じゃあ戻るか?」と口を開く。

「戻るって…」

「高見沢の家に。今しか俺とシュンは居ないんだぞ?アイツとも話したいことがあるんだろ坂崎だって。ならもう今行くしかねぇだろ。ちょーどユキも居るんだし、これで全員揃ってるじゃねーか。だったら互いの本音ぶつけ合った方が早い。ま、俊の野郎に殺されなければの話しだがな」

「一番殺される可能性高いのお前じゃん…」

「かもな。高見沢という理性が働いてくれりゃあ死なずに済むとは思うが。どうする?行くか?」

「俺は行く。俊には言いたいことが山のようにあるっ」

「坂崎は?」

「……行く」

「じゃあこれ飲んだら行くか」

「…うん」

 


 

「ダメだユキちゃんっ…!そのネックレスだけは外しちゃダメだ…っ!!」

「た、高見沢さん…?どうして…?」

ウチの上にいる彼の人格が高見沢さんに入れ替わっているみたいで、だけども高見沢さんの表情は苦痛に悶えているかのようなとても苦しそうな表情をして必死になにかに抗っている。

もしかして俊を抑え込んでウチのことを気にかけてくれているのか…?

「なんで…」

「君が好きなのは坂崎なんだろッ…?だったら君は坂崎だけを一途に想っていてよ…!こんなお情けで俺たちの相手してくれている今のユキちゃんなんかと俺絶対にしたくないッ…!!俺は…俺は……っ、くっ…そぉ〜…」

「大丈夫か…?高見沢さん?」

「…っ!いい加減にしろシュン!!テメェはもう死んでるんだよ!この体は俺のもんだ!!俺に返せッ!!」

「た、高見沢さん…」

脂汗のようなものを滲ませながら俊と葛藤している高見沢さんの言葉を聞いて段々と心がクリアになっていくような感覚がする。

う、ウチ…幸之助から貰った大事なネックレスを外そうとして……

 

「……っ!ウチ…」

「いい…、いいっ…!泣かなくていいよユキちゃん…っ。仕方ないよね、君のことがこんなにも……こんっっなにも好きな男が目の前にいたらそりゃあ…ユキちゃんの心も絆されて当然だと思う…っ。くっ…。だって坂崎の奴さ……ずーっと君の気持ちを分かっていながらはぐらかしてくるもんね…?そんなのツラいに決まってるじゃんね…っ!」

「そ、それは…だって…、ウチ…」

「俺はね……、ユキちゃんがこの男の為を想って俺にちょっかい出してきてるのも全部ちゃんと分かってたから…!だから俺も坂崎に殺されるのを覚悟でいつも君と相手してあげてたんだよ…っ!時々…、っ……シュンの奴が強く主張しそうになっているのには…気づいていたけど……。あぁぁもうッ!いい加減にしてくれ!俺が今ユキちゃんと話してるだろッ!?」

高見沢さんの中で…今俊が何かを言っているのだろうか。

なのでウチから「俊、やめておくれ…!」と頼んでみせると少しは高見沢さんの顔もどこか落ち着いた雰囲気がようやく漂ってきた気がする。だけど辛そうな表情なのには変わらない。

そしてするりと撫でられた右の頬と高見沢さんの大きなその手がウチを優しく包み込んでくれた。

「ありがとユキちゃん…。っ……、分かってる…お前の気持ちも分かってるから…!お前がどれだけユキちゃんのことを好きなのか…死ぬほどユキちゃんのことを愛しているのなんて俺にも嫌になるくらい伝わってきてるから…!だからほら…、涙が勝手に流れ出てくるッ…。俺の意思じゃ止められないんだよ…!そうだよな…苦しかったよな。子供の頃から好きだった娘と…ようやく一緒になれると思っていたのにお前は死んじまったもんな…?悔しかったよな…、マサの奴を殺したい気持ちもよく分かるよ…!けど…けどさ、俺も桜井も今はこの世界で生きているんだもん…っ。違う、違うって…。別にマサを庇ってる訳じゃなくてさ…!俺と桜井のことも考えてくれよ…!な…?もうお前らの世界じゃないんだよ…分かってくれよ…」

なんだか高見沢さんが俊に対して凄く説得してくれているのが伝わってくるが…俊が素直に言うこと聞くだろうか?

心配になりながら高見沢さんを見上げてはいるけれど、さっきも高見沢さんが言った通り彼の目からはボロボロと涙が零れ落ちてきているのは本当。それは高見沢さんにも止められないものらしく、どうにか出来る現象ではないのは確かだ。

落ちてくる涙を頬で受け止めるしか出来ずにいると、高見沢さんが「ユキちゃん…」とまた呼んでくる。

 

「な、なんだい?」

「ユキちゃんは…坂崎が、好き…なんだよね?」

「……。」

そう尋ねてこられるけど、彼の中には俊がいる…。俊がウチのこの言葉を聞いてしまうと高見沢さんだってまた押し込まれてしまうんじゃ…

どう答えればいいのか必死になりながら頭をフル回転させてはいるものの、高見沢さんがウチの目だけをジッと見つめて「…言って、ユキちゃん。コイツに分からせてやって…!」と懇願してくる。

「でもウチが言ったら高見沢さん…っ」

「今更俺の心配…?いつもからかっては苛めてくるくせにっ…、こういう時だけは優しいんだね、ユキちゃん…」

「ごめんなさい…高見沢さん…っ」

「いいよ…大丈夫、分かっているんだもの。ユキちゃんが坂崎のことを好きなのも…みんな分かっているからさ…!そりゃユキちゃんとシュンやマサには俺や坂崎、桜井には分からない言いようのない繋がりがあるのも分かっちゃいるよ…?けどコイツら二人はもう死んでるんだっ…、シュン…お前は俺として生まれ変わっているじゃないか…!もういいだろシュン…?お前が報われなかったのは哀れは哀れだけど…、お前の仕出かした数々の過ちが許されるはずもないのはお前にだって分かってるんだろ…?もちろんユキちゃん救う為に努力したのは伝わってくるよ…!けど、お前は許されないことを多くし過ぎている…。その報いがくるのは当然じゃないか…」

「…俊」

「そう…、そう。落ち着け…。分かってる…分かってるから。な?俺と生きていこう…?お前の気持ちも大事にしてやるから…。絶対にお前のこと見捨てたりなんてしないって約束するから…。前みたいに…ユキちゃんと出会う前みたいに戻ろう…?お前は俺のただの記憶の中だけでしかなかった頃のように…元の俺たちに戻ろう?…な?シュン、いいか…?」

「……。」

少しずつ高見沢さんの様子が落ち着いてくると共に、ウチの上にいた体をどかしてはそのままそっと自分自身をソファーの上に座らせて中にいる俊を宥め続けている高見沢さん。

凄い…。俊を説得出来てる。そしてなんだか不思議な光景だ。

かなり疲れきっている表情をしている高見沢さんだけど、決して面倒くさがったりなんてせずに俊相手に真剣に向き合っているのが見て取れる。ありがとう高見沢さん…。そして本当にごめんなさい。

ようやく俊を落ち着かせられたのか、高見沢さんが自分の心臓部分に右手を置きながら「分かってくれたか…?」と尋ねている様子。

 

「大丈夫かい高見沢さんは…?」

「油断は出来ない…。シュンの奴、俺のことをまだ抑えつけようとしてくる…。…っ、ちょっとでも隙を見せると俺自身が埋もれていくのが分かるよッ…」

「ご、ごめんなさい高見沢さん…!」

「厄介だねぇ…もう一人の俺は…っ。まーね…好きで仕方ない人が目の前にいて…今日だけ一つになれるって言われちゃあ…コイツがこんなにも怒って俺を抑えつける気持ちも分からんでもないよ?けどもう諦めろシュン…。ユキちゃんの心はどうしたって坂崎に惚れているんだよッ…。そうだなぁ…お前はただユキちゃんにお情けを受けてるだけだってことに早く気づけよな?お前はただユキちゃんが慰めてくれているだけの…罪滅ぼしの相手でしかないんだって…お前だって分かってるだろ?」

「そ、そんなことは…っ」

「ユキちゃん、ハッキリしてくれ…。じゃないとコイツが……シュンが可哀想だ…ッ。俺だってこんな風に説得したくなんかないよ!だってシュンがこんなにもユキちゃんのこと好きなの分かってるんだもん!知ってるんだもん…!!油断してると本当に俺までシュンに飲み込まれそうで…ユキちゃんのこと本気で好きになりそうになる手前まできているこの理性を今ここで食い止めないと…っ、俺とシュンが不幸なままになっちゃうんだってば…!!お願いユキちゃん…っ、今一度ちゃんと振ってくれ…!この男のユキちゃんへの想いを断ち切ってあげてくれよ…!!じゃないとシュンが可哀想だ…っ」

「高見沢さん…」

また流すその涙はどういう意味なのだろう…?

それは高見沢さんの涙?それとも俊の涙?それか二人のもの?

 

「俊…、ウチの話し…聞いてくれるかい…?」

恐る恐る高見沢さんの中にいるであろう俊に呼びかけてみせるも、高見沢さんが急に頭を抱えて唸り出しては「バカやめろッ…!!」とまた必死に抵抗している。

このままだと高見沢さんがダメになってしまう。こんなのいけない。

「俊、アンタいい加減にしなさい!」

「っ〜〜……!!」

「アンタの気持ちは嬉しかった。それは今も昔も変わらないのも本当だ。だけどアンタのその体は今は高見沢さんのものなんだよっ?アンタはあの日…火事に巻き込まれて賢さんと死んだんだ。そして今ここにこうして居るのもアンタが高見沢さんとして生まれ変わったからなんだよ。だから返してあげて。高見沢さんに体を返してあげな?」

「……くっ…うぅー…!」

「ごめんな俊…。ウチもずっとアンタに対して曖昧な態度でごめん…。こんなの幸之助に強く言えたことじゃないのにな…ウチも」

「…っ…」

「アンタがすぐ傍に居てくれて嬉しい。いつだって隣に居てくれて本当に安心するぞ?アンタが高見沢さんの中にいるのを分かってて高見沢さんの笑顔を見ていると本当に嬉しい…。高見沢さんの困った顔や幸之助に対していつもヒヤヒヤして焦っている態度を見ているとアンタと一緒に過ごせているようで楽しいんだ。アンタと出来なかったことを代わりに全て高見沢さんに押しつけてしまっているのは申し訳ないとは思ってはいるけど…、でもウチは俊と出来なかったことを高見沢さんと出来ている今が楽しい。俊の……全ては俊の為にやってきたことなんだぞ…っ?分かっておくれ俊…」

「……ッぅ…」

「高見沢さん…大丈夫かい…?」

 

そう彼に声をかけた時、玄関の方からガチャンというドアが開く音が聞こえてきてしまった。

幸之助たちが戻ってきた…?

 

 

 

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