扉を開けた瞬間、俺は自分の目を疑った。
この状況ならきっとみんな俺の味方をしてくれるはずだ。
いや、高見沢は動揺しまくってる俺を見て笑いそうだな。
どんなによく分からない状況でもこのままでいるわけにはいかない。部屋の中に入って扉を閉める。
お互いがようやく素直になれたあの日から俺と幸桜は夜を一緒に過ごすようになった。
残り短い寿命だから少しでも長く一緒に居たい。
一緒のベッドで寝ているが……
まあ、幸桜の体調もあんまり良くないようだし(本人は隠しているつもりみたいだから今は黙っているが)無理せずにいきたいと俺は思っている。
最近は俺の腕の中で安心して寝てくれるようになっていた。
それがどうだろう?
今目の前に居る幸桜は。
いつもの男装している仕事着でもなければ味気無い部屋着でもない。
レースの下着姿。
薄い紫のレースが幸桜の細身の身体にふわりとかかっている。
絶対に幸桜の意思じゃないよな。
だって初めての時みたいに顔を俯けて膝を抱え込むようにして丸まっている。
俺は上着を脱いで幸桜に掛ける。そこで漸く俺が部屋に入って来ていたのに気づいたらしい。
ビクッとして俺を見上げた顔は真っ赤だ。
「どうしたんだ、その格好?」
「……それは、あのっ…」
言ったきりまた俯いてしまった。
確か今日はもうひとりの生みの親の世界の女たちの所に遊びに行っていたはず。
きっとあいつらに何かを吹き込まれたのか。
知らずにため息をつけば幸桜がまたビクッと反応した。
ビクビクするくらいならしなきゃ良いのに。
「……桜井は、こういうの嫌いだったか?」
漸く口を開いたと思ったら何を言い出すんだ。
「今日、みんなに男はこういうの好きだからって、言われて貰ったんだ」
幸桜らしくないからびっくりしただけで。そう伝えればさっきかけた上着をギュッと握った。
「似合わないよな。調子に乗ってごめん」
似合わないなんてそんな事あるか。
いつもの格好よりもずっと色っぽい。
恥ずかしさでほんのり赤くなった肌。
何の拷問ですか。
「謝らなくても。幸桜はいつものままで充分かわいいよ」
理性を総動員して幸桜の頭を撫でるだけで我慢する。
「じゃぁ、なんで……」
言いかけて唇を噛み締めて言葉を飲み込んだ。先を促してみたがまだ躊躇っている。
「……あれ以来してくれないんだ?」
言うまで黙って見守っていればとんでもない爆弾を落とされた。
「オレが女として魅力がないからだろ」
声が震えてる。
そんな事を気にしてたのか。
あの時は成り行きでついしてしまったが本当は俺は大事だから少しずつ進めたかった。
だから今は少しずつ幸桜を怖がらせないように進めたい。
それだけだったんだけどな。
「俺こそごめん」
そっと幸桜に掛けた上着を取る。
不思議に思ったのか幸桜は俺を見上げる。その格好で上目使い。
毎度思うが幸桜の上目使いは反則だよな。
もう無理。
幸桜の顎を押さえて軽くキスする。
泣きそうな顔が驚きにかわる。
幸桜を壊さないようにしたかったから我慢してたけど。
「そんな格好でそんな事言われたら我慢できない」
「がまんしなくて……いいよ」
あいつらなんて事をさせるんだ、って思ったけど今回ばかりは感謝してやるか。
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