ちょー久々旅人さん。ssだけど
満点に輝く星空がある。
俺はまだあの場所には行けない。俺の行く場所はあそこじゃないから。
歩き疲れたので、ここら辺で今日は泊まろう。宿もないし、野宿になるだろうけど毎回よくやることだから慣れたもんだよ。
近くに川が流れていたので、水を汲んできてから火を焚いて沸騰させれば、一昨日街に立ち寄った時に買い込んだ食糧をバッグから取り出し、今にも鳴りそうなお腹の中へと流し込む。この瞬間って最高だね。
天使と悪魔にも一応食べるものは分け与える。そうじゃないとコイツらの体力も持たないし、何より文句言ってくるんだよ。さっきから天使が「腹へったー!」って、ずっと頭の上で騒いでたからな。
特別美味い訳でもないが、不味くもない焼き鳥の缶詰を二人に与えると、自分たちで勝手にフタを開けて食べ始めるし。
あー‥お酒飲みたい。
今の季節はまだ野宿していても辛くはないから有難い。これが夏や冬だったら最悪だ。街から街まで一日で辿り着けないというのを知るとなると、本当に地獄のような夜を過ごさなければならないもん。
でもその土地によって気候って結構変わるから、暫くその土地に居座って短期で働いてお金貯めてる場合も多いけどね。それはそれで楽しいし、苦ではないのでこの旅を続けていられる理由の一つかもしれない。
春雨スープを飲みながらボーッと星空を眺めていると、悪魔が「寂しいのか?親友出してやろうか?」なんて言ってくる。
「別になんも考えてなかったよ」
「家族のことでも考えてたのかー?」
「‥さぁ」
そういえば、みんな今頃何してるんだろ。連絡もほとんどしてなかったや。戦場のギタリストの兄貴とは連絡取り合ってるというのに。
「‥一回帰ろうかなぁ」
「“風の詩”の大地をみんなに知って貰う為の旅だから、あんまり帰らない方がいいけどなー」
「なんで?」
「お前は帰ると同じ景色を、あの時の光景を見たり思い出したりすると自分をまた追い詰めかねんから」
「否定はしない」
そう答えると、天使が「なんちゅー顔しとるんだ」と叱ってくる。ちょっと思い出しちまっただけだから、あんま心配するな。
もちろん家族は好きだし、地元の友達も大好きだ。でも、俺はあの街に居るとダメになりそうな気がしてきて‥。だからこうして旅に出てるんじゃないか。
「‥っ、」
ズキッと胸が痛む。
そのせいで溜め息が漏れてしまったけれど、いつの間にか目の前には二人の親友が座っており、俺を心配したような眼差しでこちらを見つめていた。な、なに?
「どうしたの?」
「また俺たちが死んだ時のこと思い出してるのか?」
「‥あぁ。ごめん」
「いや、謝らなくていい」
「でも、やっぱり地元に帰ると思い出しちゃうんだろうなーって。暗くて何もやる気のない自分に戻っちまうのがコワいんだ」
「今の桜井じゃあ確かにムリだろうな」
「やっぱダメか」
高見沢が大きく頷く。まぁ、戻らなくてもいいんだけどね。
「この世界の人たちにもっと、“風の詩”の大地を知らせなきゃいけない。それが今の俺の役目だもんな。中途半端な気持ちのまま帰っても仕方ない、か」
「どうしても帰りたかったら俺も高見沢も止めないよ。ただ、今の桜井だと俺たちが後ろに付いていたとしても自分を見失いそうだからね。それが心配なだけ」
「そうそう。あ、でも強くはなってきてると思うよ?そして自分のことばかりじゃなくて、人のことを思いやれるようになっている」
「ホント?」
「色んな人たちと出会ってきたからね。それで成長しなかったら逆に凄いけどさ」
「そうだね」
フフッと笑みがこぼれてくる。
二人の親友の眼差しはいつも温かくて優しい。俺をいつも後ろで見守ってくれている。
二度と会えないと思っていたけれど、今もこうして二人と話しが出来る幸せ。本当に幸せだよ‥
でもね、時々感じるんだ。
そう長くは続かないんだろうなーって。
信じたい気持ちはあるよ。ずっとずっと、死ぬまで二人と一緒だって。俺が死ぬその時まで待ってて欲しいって。
だけど、それはあり得ない‥のかもね。
「ねぇ、二人とも」
「ん?」
「なに?」
「これからもずっと、ずっとよろしくね。俺が二人と同じになるまで」
そのセリフに対して二人は、いつもの優しい笑顔で頷いてくれた。
世界で一番優しい嘘を。
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