妖執筆中 - 2/4

「サカザキ!」

サクライが追い掛けようと、伸びて行く蔓に捕まり自分も化け狸の方へ向かうと、狢が「やめるんだ!」と警告をしてきた。

だが、登り始めてしまっていたのでサクライに降りる気は到底なかった。

「なんで人間がいるんだ?」

「人間がいちゃ悪いか!?」

挑発するサクライを見た狢と送り狐が舌打ちをすると、二匹は捕らわれたサカザキ目掛けて飛び上がった。しかしそれは化け狸が手をかざしたせいで風に押され、二匹は地面に叩きつけられた。

その様子を見ていたサクライはある事に気付いた。

「お前‥タカミザワの技と似てねぇか?」

「ん?あぁ、当たり前じゃん。五色の玉を使って技を覚えたんだもん」

「お前の使った五色の玉は真っ赤な偽物だ!汚れきった邪に支配された物だろ」

珍しく今日は脅える事なく刃向かうサカザキが口出しすると、化け狸は「確かにそうかも」と呟いた。現に今サカザキが五色の玉を使って技を覚えてる途中なのだから。

そして本物の五色の玉はサカザキの体内で保管されている状態で、タカミザワ意外誰も取り出す事も触れる事は不可能だった。

蔓を伝い、ようやくサカザキがいる場所まで辿り着いたサクライは体に巻き付いた蔓を取り除こうとしたが、固すぎて上手く取れなかった。

「サカザキを離せ!」

「やなこった。俺は誰よりも強くなるんだ」

「でもお前は絶対タカミザワには勝てない!」

「全くだ」

聞こえた声の方へ顔を向けるサカザキ達のもう少し上空には片車輪の牛車の上で胡座をかきながら膝に右肘を着きながら頬杖を着いてるタカミザワの姿があった。

たまに行儀が悪いよなぁ‥と心の中で喋るサクライだが、彼が来てくれたお陰で早く解決しそうだったので安心した。

「タカミザワ!」

「サカザキを離せ。ソイツを喰っても美味くはないぞ?」

「お前の言う事は聞かない。俺はコイツを食べて強くなる」

「なら私の血を飲めば普通の妖怪ならほんの少しだけ力は手に入るぞ?」

そう言ったタカミザワは、持っていた小刀を舌に乗せて、しかもよく切れる方の刃を舌にグッと食い込ませた。

切れた部分からは血がダラリと流れ出してくる。それを見ていたサクライが「うわっ‥」と小さく呟き、如何にも自分が痛そうな気持ちにさせられた。

人間なら死んでしまうがタカミザワは妖怪だ。しかも他の妖怪なんかより何十倍も力があるので、そんな行為痛くも痒くもないだろう。

「誰がお前なんかの血を飲むか!」

「早くしないと塞がってしまうぞ?ん?」

血を流し、舌を出してからかうような素振りを見せるタカミザワの余裕そうな笑みがサクライにとっては清々しかったが、同時に恐くもあった。

「ふんっ。噂は聞いてるぞ。百鬼夜行達に襲われたんだってな?はぁー、どう考えても弱いじゃねーか」

「‥‥。」

化け狸が過去にあった出来事を話し出すと、タカミザワは無表情ではあったが左の瞳は怒りに満ち溢れていた。さっきのサカザキと似ている部分もあり、なんか親子っぽいなと思ったサクライだった。

否、殆ど親子同然なのだから仕方ない。

するとタカミザワはあろう事か、乗っていた片車輪の牛車を拳で殴ると、そこがバキッと壊れる音がしたと思ったら腕が貫通していた。普段無口で怖い顔して無表情な片車輪を操ってる男の顔が一瞬だけ「えっ!?」と、なっていた。

小さな声で「勘弁して下さい‥」と泣きそうに言う男の声はタカミザワに届いてなさそうだった。見ていた皆が片車輪に同情した。

「おいタカミザワ。片車輪が可哀想だろ‥」

「後で新しいのをやる。化け狸、貴様は毎回私に痛い目に合わねば済まないようだな。サクライ、下に降りろ」

指示を出され、サクライはサカザキを目の前にしているが彼の言う通りにする。

「サカザキ、放電しろ!後は頼んだぞサクライ」

シュッと血の付いた小刀をサカザキに向かって投げると、それを受け取ればサカザキはペロリと一口だけ舐めた。そしてすぐに体中から放電し始めると、蔓がバチバチと焼け焦げていく。
しかし蔓が固いのか、中々燃え散らなかったのでタカミザワが手を貸し、左手を小さく縦に振ると、いきなり雷がドンッと物凄い音を立てながらサカザキに墜ちてきた。

あんなに固かった蔓が一瞬にしてただの灰になった為、サカザキは真っ逆様にそのまま落ちていったが、下で待っていたサクライによってキャッチされた。

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