妖執筆中 - 3/4

「大丈夫か!?」

「うん、平気。それよりタカミザワ‥」

顔を上に向けると、化け狸に火の玉を連続で投げつけていたが、本気でやってるようじゃなかったのがサクライに感じ取れた。

何故殺さずに追い出すだけなのかが不明だが、何か理由があるのかも知れない。だけど今はそんな事を考えてる場合ではなかった。

化け狸もかなり強いらしく、あっさりとタカミザワの攻撃をかわしている。さっき言っていた偽物の五色の玉を使ったからこの力が手に入ったのは本当なのかも知れない。

「こざかしい奴だな。とっとと消え失せろ」

「俺はサカザキを喰らうまで何度もここへ来る。あと一つ‥玉のあと一つ技を身に付ければアンタに勝てる」

「やめろ。そんな物を使ったって真の強さは手に入らぬ。お前の玉は使い道を間違えれば心までもが邪に支配されてしまう。そうなる前に手を引け」

「ふざけんな。俺は誰よりも強くなる」

「ただ単に強いだけでは意味なんてない。誰かを守ろうとする心がない限り強くはなれない」

「‥何にも知らない癖によく言うよ」

ギリッと奥歯を噛み締める化け狸の瞳は恐ろしく濁っていた。サクライは久しぶりにヤバい奴を相手にしていると気が付き出した。

腕の中にいたサカザキを下ろせば、恐い顔してサクライに向かって話し出す。

「アイツ昔はただの動物の狸だったんだよ。何があったか知らないけど弱っていた所、タカミザワに救われたんだって。その恩も忘れて妖怪になった時、アイツは村を襲ったんだ。

一旦はタカミザワに注意されて森に棲まわせてたけど、言う事を聞かないでまた無闇に村を襲ったんだ。

だからタカミザワはアイツをこの森から追い出した」

「そんな事が‥?」

サクライが知らないという事は、まだ自分が生まれてないか、生まれて間もない頃の出来事だと判断させる。化け狸があの村を襲ったなんて聞いた事がなかった。

退治屋の書物にも書かれていなかったし、どうして今まで知らなかったのか‥。それはきっと、タカミザワの嫌な過去の一つとしてその出来事は村人の頭から消されているからだろう。

伝えられない事実だってあるのだ。

「お前は罪を犯した。何もしなかった人間に傷付ける行為は許されないもの。例えお前が動物の頃に何かあったとしても‥」

「なっ‥!なんでソレを‥」

「化け狐から聞いた事あるのだ。お前達は仲が良かったからな‥」

狢と送り狐はその妖怪の名前を聞き、表情を暗くさせた。二匹だけでなく他の妖怪達もがそうだった。
サクライはまた訳が分からずに置いてけぼりだった。

サカザキに耳打ちして問いただすと答えは返ってきた。

「化け狐は人間に捕らわれて殺された。なんでも虐められてたらしい」

続いてタカミザワが話し出す。

「お前が動物の頃、家族を人間に捕らわれ殺された事。その復讐としてお前は妖怪になった時、無差別に人を殺した。

そして私が止めに入り二度とこんな愚かな事をしないと誓った筈なのに‥お前はそれを破って人間を殺したのだ」

「だって‥アイツらは‥!アイツらは俺の家族を、!」

「やはり間違いだったな。貴様はあのまま見捨てるべき存在だった。私はそんな事をする為に命を与えたのではない。それが何故分からん?」

「‥関係ねぇよ。そんなの‥、関係ねぇよ!」

「どの口が抜かす」

タカミザワの目がキツくなり、右手を横に切ると、いきなり池の水が全部化け狸を取り巻いた。

大きな水柱の中でもがき苦しむ化け狸を見てタカミザワは話を続けた。

「私も化け狐には悪いとは思っている。お前がアイツを人間から守ろうとしていた事には気付いていた。しかし、化け狐は人間に捕らわれ殺された‥。

化け狐の剥製を売ろうとしている奴らだけを私は許せなかったからお前に託したのだ。だが、お前は再び見境なく人間を殺していったな。

気持ちは痛い程に解る。しかし、限度というものもある。それを越したお前にこの森にいる資格等なかった。だからこうしてお前を追い出した」

サクライは話を聞いていて胸が痛くなった。自分の家族を殺されたという状況はサクライも心から解る。力が手に入ればきっと自分も化け狸と同じ事をしてしまうと思ったから。

ずっと独りぼっちで、悲しい一生を終えたくはない。誰でもいいから隣にいて欲しい。

そしてやっと大切なものが出来た矢先に失うのだ。

送信中です

×

※コメントは最大1000文字、10回まで送信できます

送信中です送信しました!