希望の詩 短編集 - 5/7

がくせー

 

「おい、坂崎っ!またお前にラブレター来てるよっ」

 

教卓に腰を下ろしている高見沢が、袋に入っているラブレター‥もとい、ファンレター‥?よく分からないけど、それが入った袋の中身をゴソゴソと漁りながら、書いてある文字を確認してからそれを坂崎にヒョイと手渡す。

 

しかし当の本人は、そんなもの興味なさそうにしながら受け取っては隣の机にポイと投げ捨てては勉強に励む。お前、ホント興味ないんだな‥

坂崎が投げ捨てた手紙が机の上にいくつも散らばっている。これだけ来るのだから、坂崎があの文化祭でやらかした事を間近に見ていた女子共だろう。別にやらかしたって言っても、この間みたいな大問題になるような事ではない。

 

ただ、高見沢達が毎回やっているバンドの中に入って、体育館のステージで坂崎のそのギターの技術と嫌々ながらも歌わせたハンドマイクがあまりにも色っぽいと女子の間では評判になり、何故か坂崎だけがやたらと人気を獲得していた。

高見沢にもまぁまぁファンレター‥?みたいなのは届いてるらしいけど、坂崎の方が上らしい。俺?俺はなんていうか‥うん。

 

「げ、これも坂崎じゃん。お前さー、俺らのバンドに一時的に加入しただけなのによぉ、何なんだよこの人気ぶりは」

「知るか」

「桜井も来てるよ」

「えっ?俺?」

「桜井先輩の声が素敵でした‥だってさ」

「ちょ、何勝手に見てんだよ!」

「いいじゃねーか、減るもんじゃねーしよぉ。うわ、これもまた坂崎」

 

まぁ、手紙‥というよりメモ用紙に自分のラインIDやメアドに電話番号が書かれた簡単なものがほとんどだけどね。それに付け加えられた簡単なメッセージと、一枚のプリクラとか。こんなもん貰うとか俺らアイドルみたいだな。

‥なーんて思うのはやめやめ。未だ三人共彼女なんて作った事もないし、坂崎に関しては作る気なんて更々なさそうだし。高見沢はどうなんだろ。やっぱり欲しいとか思ってんのかなー。

手許にあるメモ用紙に視線をチラリと落としては俺も坂崎同様、それをポイと机の上へとほかった。すると高見沢が「桜井の癖に生意気だなぁ」と、ジト目で俺を見てくる。

 

「悪かったな、俺にはどーせ彼女なんて出来ませんよーだ」

「その子にすりゃあいいじゃん」

「そういう高見沢だって彼女作らないのかよ?」

「今はどーでもいいかな。お前らと一緒にアホな事やってる方が楽しいしなー」

「お前みたいな不良はギャルみたいな奴と付き合ったりしてるもんかと思ってたがな‥」

「俺は見た目こんなんだが根は案外真面目だからねー」

「ウッソつけ、お前と坂崎は根っから腐ってるだろーが‥」

 

そんな俺のツッコミにケタケタ笑う高見沢と、相変わらず黙々と勉強を続ける坂崎。時折ジュースを喉に流し込みながら‥シャーペンを進めるだけ。

 

「なぁ坂崎ぃ、お前は彼女とか作らないの?」

そんな何気ない質問にピタッと一瞬だけ手の動きが止まったので、「お?」とは思ったものの、彼は一つ溜め息をついてから再び勉強の再開。

そんな秀才の坂崎を見た不良な高見沢は、ハッと嘲笑うかのような態度で「さてはお前、好きな奴いるな~?」なんてからかってみせるが‥坂崎は高見沢をシカトして勉強勉強勉強‥

なんにも反応を示さない坂崎をつまらなく感じたのか、高見沢は「あーぁ」と呟いた後に顔を歪ませては持っていた袋をポイッと捨ててしまった。

 

「もったいない」

「はいはい、知ってますとも。坂崎が女達に興味ないのも仕方ないんじゃねーのぉ?なぁ、坂崎?」

「‥‥。」

「ま、いいんだけどよ。文化祭での坂崎は確かに格好良かったからな~、女共がキャーキャー言うのも分かるわ」

「でもさ、これからも高見沢たちとバンドやってくつもりないんでしょ?ほら、いつも高見沢たちがやってるあの迷惑騒音中庭ライブとか」

「ないね」

「迷惑騒音とはなんだ。俺らはこの学校の奴らに元気を与える為に‥」

「お前たちみたいな不良やギャルや、やる気ない奴らには楽しいんだろうけど、お前らみたいなタイプが苦手な奴らは絶対に迷惑してるだろ。特に坂崎が居るような特進クラスとかは。だろ、坂崎?」

「‥半分くらいかな」

「いいじゃねーか、うるせぇ教師共は諦めてなんにも言ってこなくなってきたんだしよ」

「‥俺もまぁ、お前らのバンド楽しんでるから何とも言えんけど」

 

ははっ、と出たから笑い。

俺らってどうしようもねぇよな‥

 

すると突然坂崎がシャーペンを置き、「もう俺はバンドに入らない」と宣言してくる。

それにかなーり大きな声で「えっ!?」と驚く高見沢は、一瞬だけ固まっていたが、次には首を左右にぶんぶん振りながら「いやいやいや‥!」と何かを否定していた。

 

「なんでっ?また来年の文化祭とかにもやろうよ?」

「もう大人しくさせてくれ‥。あの時の事件だけでさえ俺たちは目立ち始めてるんだから」

「いいじゃねーか、人気者になれるんだから」

「人気者になんてならなくていい。それに俺は‥‥」

 

グッと力を入れた彼の手に、それと鋭い視線をどこかへとチラリと流していた。

その坂崎の魅せた瞳の奥には何かに取り憑かれているような‥捉われているかのような、ゆるんだ瞳だった。彼にしてはこんな表情を浮かべるなんて珍しい。

 

まぁ‥ね、坂崎はね。

 

「‥‥もういいや」

「はぁっ?なんだよそれー!言えよ、最後までちゃんと言えよー!」

「うるさいっ。勉強に集中出来ないだろ」

「なんでだよー!?」

 

俺たちの毎日の放課後はやっぱりこんな風だ。変わらない毎日。あとどれだけこんな日が続いていられるのだろう。

 

俺らはまだ二年生。あと一年とちょっと‥か。

坂崎の机に置いてあったジュースを無断で飲んでいると、坂崎が「桜井お前後でダッツ奢れ」なんて無謀なアイディアを出してくれた。

 

「なんでだよ!?たった一口飲んだだけじゃん!」

「えー、坂崎だけずりぃ。なら俺はレディボーデン!」

「お前らふざけんなぁッ!!」

 

高「坂崎お前よく俺のセリフで我慢出来たな(ニヤニヤ)」

坂「その手にはのらん。お前だろ、俺らの世界観壊すなとか言ってたのは」

桜「でも結構頑張ってたな坂崎。ソフィアの名前出したくて堪らなかったでしょ?w」

坂「はぁ?」

高「ホントおっかねーなお前はw」

 

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