希望の詩 短編集 - 6/7

懐かしいあのメロディー

 

でた。また坂崎が学年一位だ。

配られた順位表を眺めながら、俺は坂崎の居た教室から自分たちのクラスへ戻る所。頭いいよなぁ‥羨ましいなぁ。

 

でも!なんとか古典の赤点は免れた。前日に坂崎と高見沢が付きっ切りで俺に出題範囲をみっちり教え込まれたお陰か、いつもよりかはいい点が取れた。これでいつも以下だったら二人からなんて言われるか分からないのがコワいからね‥

チャイムが鳴る数秒前くらいに、高見沢が教室から出てきて俺を呼び止める。

 

「おい桜井、やっぱ坂崎が一位?」

「うん。数学以外全部アイツがトップ」

「さーっすがだね、俺なんて学年十位だったのに」

「あっそ‥」

 

サラッと自慢してくる高見沢だが、コイツもこんなハデな格好してる割には特進クラスの奴らよりも頭がいいから困る。高見沢の場合、これがあるから教師たちから余りとやかく言われない秘訣でもあるんだし。

 

するとキーンコーンと鳴るチャイム。おっと、教室戻らないと。高見沢と一旦サヨナラして残りの授業を受ける。

つまらなくて退屈な授業。この間席替えをしたばかりなので、今は一番後ろの窓側の特等席。授業を開始して二十分経過した辺りには、周りの奴らは机の下でスマホ弄って遊んでる。俺もいつもそんな事をしているけど、今日は何故かそんな気にはなれなかった。

 

「‥‥。」

 

授業もいつしか終わり、眠りこけていた顔を持ち上げてはボーッとしながら鞄に必要最低の物を詰め込んでは友達とバイバイして教室を出た。

そして隣の教室に居た高見沢。俺に気付いた彼は、こちらに駆け寄って来ては「よっ。今から音楽室行くんだけどお前も行くかっ?」と尋ねてくるので、行くと返事をしておいた。

 

「また練習?」

「練習したり下らない事したり」

「なんだよそれ。で、坂崎も呼ぶ?」

「いいぜ。んじゃあ、桜井先に音楽室行ってこれ置いてくれ」

「お前のカバンじゃねーか!んなもん自分で持ってけよ!」

「ケチケチすんな!持ってけ!」

「はぁ~~?」

 

とか言いつつも高見沢のカバンを音楽室まで持ってきてあげた俺ってば優しい~。

高見沢のカバンだけを無造作に放り捨てると、アイツの仲間が既に三人ここにおり、「それ高見沢のカバンじゃね?」とか言いながら笑っている。

 

「桜井も今日は一緒にやんのかー?」

「うん、気晴らしにね。テストも終わって、順位も発表されたし‥」

「え、マジ?俺らまだ紙貰ってねーぞ」

「じゃあ明日の朝配るんじゃね?」

「いらねー!!」

 

こんな下らない会話。

そして五分後には高見沢とその仲間がまたここに集まってきては、早速ギターやドラムやらを準備していた。

 

「高見沢、坂崎は?」

「あ、まだ呼んでねーや」

「じゃあ俺呼びに行ってくるわ」

「悪りぃ」

 

音楽室から出て、坂崎の教室まで向かう。

坂崎、高見沢か俺の教室の方に行っちゃってるかな?なんて心配をしていたら、坂崎のクラスから数人の声が聞こえてきたけど‥

 

その声の会話からして嫌な予感が胸をよぎった時、俺は恐るおそる教室の中を覗いてみせた。‥ら、案の定坂崎が数人の男共に囲まれて何かを言われている。

しかし坂崎は何ともなさそうな涼しい顔をしながら相手の話しなんて聞いちゃいない風だ。そんな態度にムカついたのか、坂崎を嫌ってる奴らはまた心ない言葉を並べていく。陰湿なのか、そうじゃないのか‥

高校生にもなって虐めなんかする人はどれだけ幼稚なのだろう。

 

ガラッとドアを開け「坂崎~」と呑気な声で彼を呼びつけると、俺の登場に驚いたのか、坂崎を囲んでいた奴らは若干焦っている。そして坂崎本人は、俺が来た事によって「やっと面倒な奴らから解放される」という表情を見せながら、机に置いてあったカバンを持ち上げてはこちらへ来てくれた。

 

「今から高見沢たちと練習するんだけどお前もくる?」

「じゃあ行く」

「で、何してたんだ?」

「あぁ‥。アイツらが俺は何か不正行為をしているんじゃないかって詰め寄ってくるんだよ。何言ってるかサッパリ理解出来ないけど」

「坂崎の才能と努力に嫉妬してるんだよ。あーやだ恥ずかしい」

「ホントだよね。学年トップになりたければ努力すればいいだけの話しなのに」

 

そんな会話をしながら教室から出て行こうとするけど、坂崎の相手をしていた奴の内の一人が「ふ、ふざけんな!」とか何とか怯えた口調で歯向かってくるけどさ‥

 

「お前らこの歳にもなって虐めって恥ずかしくないの?」

「虐めじゃない。聞いてただけだ」

「そっかー。でもさ、ここに来てたのが俺で良かったね。もし高見沢が坂崎を迎えに来てたら‥‥あー怖っ!お前らタダじゃ済まされないよ?」

「あんな不良なんかに‥」

「見た目は不良でも心はお前らなんかよりずっと綺麗だと思うんだけどなぁ。ま、いっか。友達なんかより勉強が大事な君たち特進クラスには俺ら普通科の事なんてどーーーでもいいもんね!ごめん、悪かった。バイバイ」

「ちょ、ちょっと待て!この事を高見沢には‥」

「知らなーい」

「お、おい!!」

 

相手の言葉をシカトし、今度こそ俺と坂崎はこの場から離れていった。

チラッと見やる彼の顔。ほんの少しだけ傷付いたかのような顔をしていたけど、坂崎は決まってこう言うだろう。

 

「坂崎‥」

「大丈夫」

 

ほら。

強がってるコイツの姿は何度も見てきた。でもさ、俺たちがお前を守るから。辛い事があれば俺たちを頼って欲しいし、お前が逃げ出したってまた何度でも追いかけてお前を守るからさ。

ま、そんなもの口にしなくてもお互い分かり合ってるけどね。

 

「あっ。そういえばお前また告白されたのか?噂広まってるぞ?二組のあの子でしょ?」

「あぁ、なんかされたね。興味ないから断ったけど」

「またかよ!」

「女なんてどうでもいいよ。今は桜井たちとバカやって楽しんでいたいんだ。それに、俺はさ‥‥」

「‥‥。うん、そうだね。俺もお前らと遊んでいたいから別に付き合わなくっても全然いいんだけどねっ!」

「お前の場合告白される事はないだろ」

「失敬な!俺だっていつかは‥」

「いつかっていつだよ」

「それは‥来年の、春」

「バッカみて~。あとで高見沢に言お」

「やめろ!!アイツそういうのに関してはめっちゃバカにしてくるんだから絶対言うなよ!?」

「え?なんだって?」

「お前~!さっき助けてやったのにお礼ぐらい言えよ!!」

「だって頼んでないしー」

「腹立つわ~‥!」

 

こんなバカをしている時が一番楽しいのに変わりない。

 

そして音楽室に近付くにつれて大きく鳴ってくる楽器たちの音色。

それは、高見沢が自分で作ったという、希望の詩を奏でている最中だった。

 

ノーマルさんたちが歌ってる「希望の詩」とは限らないよ

 

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