FC! - 2/23

FC!

俺と遊んでくれと猫達が足許でチョロチョロしている。

マナが俺のピアスを咥えながら、「耳に着けてよ!」とでも言ってるように見える。いや、本当に言ってるのかもしれない。

なんていったって、俺は猫になれちゃう身体だもんでねぇ。

そのお陰で夜になると、俺は猫達を相手にしながら話し相手をしたり、遊んでやったり、時にはベッドで寝たりもする程だ。

それと、桜井と高見沢だけに限らず、俺が猫になれるという事実を知っている人は周りに意外と居たりもする。でもまぁ、本当に信用してる奴らじゃないとこんな姿見せないんだけどね。

仮に誰かが他人に言いふらしたって、こんなファンタジーな出来事を信じるような心の純粋な大人がこの世界に居るのだろうか。

「坂崎さんって猫になれるんですか?」と聞かれても、適当に「なれるんだにゃー」とか言っておけばその場で誤魔化せるしね。

そういう訳で俺が猫になれる、という真実を信じるか信じないかはこの目で確かめなきゃ不明なもの。

「はいはい、分かったから。ちょっと待ってな」

マナからピアスを受け取り、俺はそのピアスを左耳へ装着させる。

すると、俺の身体は白い光に包まれたかと思いきや‥

既にそこにあるのは猫の体。

とっても簡単に変身が出来ちゃう。

「コウ~!寂しかったよぉー!」

「寂しかったって、昨日も猫になったじゃないか」

シッポナが寄ってきたかと思うと、いきなり俺の体へと愛のある体当たりをしてくる。これを受け止めるのが上手になるのに、一週間くらいはかかった。

それに、前まではみんな俺の事を「サカザキさん」と呼んでいたが、この呼び方だと多少の距離を感じてしまう為、俺が初めて名乗った時の名前で呼んで貰っている。

タクヤは少し眠たそうにしていたが、俺の存在に気付くとなんの迷いもなく近寄ってくる。

「コウっ!昨日の仕返しだっ!」

「わっ!?ちょ、お前っ‥!」

「コウちゃん独り占めにするなんてずる~い!」

「こ、コラっ‥ワカ!」

何やらモフモフしてる。集合しすぎてモフモフしてる状態だ。

そしたら最後にドングリが「とうっ!」なんて言いながら俺の方へと飛び付いて来るではないか。

一斉に来られてしまえば、もみくちゃになってしまう。実際もみくちゃになってるんだが。でも堪らない。大好きな猫達にこうして俺って愛されてるんだな‥って実感出来るから。

他の猫達も俺に気付けばすぐに寄って来てくれるし、笑顔でお喋りしてくれる。一杯いっぱい遊んでくれる。

たまに思っちゃうんだよね。

このまま猫でもいいかな~‥なんて。

冗談だけど。

「ナカノ」

「あら、コウ。今日は早かったみたいね」

みんなを寝かし付けた後の楽しみの時間。

それはナカノとフタリきりでベランダに出ながら月を眺め、静かに少しの間お喋りする事だ。これも日課だからね。

ピョンとナカノの隣までやって来ると、彼女は細い三日月を愛おしそうに見つめながらフフッと笑ってみせた

「?」

「ごめんなさい、何でもないの」

「何だよ。言いたい事あるなら言えよ」

「いえ、何にも‥」

「言えっていってんの」

キッとかる~く睨みつけると、彼女は諦めたかのように「はいはい」と仕方なさそうに笑って答えた。

「あの細い三日月がコウの人間の時のお目々みたいって思っただけよ」

「俺あんなんじゃねーよ」

「そうね。もう少し細かったわね」

「あのなぁ」

猫にも弄りを覚えられてしまったが、こういうやり取りは飽きないし、クスッと笑っていられる安らぐ時間でもあるから落ち着いていられる。

うん、ナカノと居る時の特権というか。そりゃ他の子達と居る時間もそれぞれの特権があるけどさ。

空を見上げてるナカノの横顔は可愛い、と言うよりも美しいと言った方がいいだろうか。

人間に戻ると可愛くて仕方ないのだが、俺が猫の間は自分もしっかりと猫の気持ちになってるせいもあり、人間の時とはまた別の感情が沢山湧いてくる。それが面白かったりもする。

「なぁ、ナカノ」と何気なく口にすると、彼女は「うん?」と返事をしてくれて片方の耳だけをピクリと動かす仕草を見せた。

「俺さ、猫のままでもいいかな~ってたまに思うんだ」

「猫の恩返し?」

「何でその作品知ってんだよ‥」

「だってこの間テレビでやってたわよ。みんなでアレを観ながらコウをハルちゃんに置き換えて観てみたり」

「ハルちゃんはヒロインでしょうが!」

「ならバロンのが良かった?」と聞き返されたが、そういう事じゃ‥いや、バロンはバロンで嬉しいかも。

「猫の国かぁ‥」

「行ってみたいの?」

「へ?」

「猫の国」

「‥あるの?」

「どこかにあるんじゃない?」

本当かよ。

そんな下らない会話も終わりを迎える頃、俺達はベランダから家の中へ入り、ナカノはそのままみんなの場所へと向かおうとしていた。

しかし、「あっ」と声をあげると、こちらに戻って来ては俺のほっぺにチュ、と口付けをしてから「おやすみ」と付け加えた。

うん。まぁ、これも恒例‥だから慣れた。

名残惜しそうにナカノは俺から離れると、俺が人間になるまでを見届けてくれる。

いつもはそうだったけど‥

俺は耳に着いているピアスを器用に外してみせるが、ここでならいつもは身体は光に包まれて元の身体に戻る‥のだが。

「え‥?」

なんで‥?

「こ、‥コウ‥?」

何でだよ‥

ピアスは外したのに‥

「人間に戻れてない‥」

猫達は一応、リクエストで頂いた時のメンバーだけのつもりなので、他の猫達は名前は出ても多分活躍はしないですよ

そして坂崎さん、一体どーなる

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