Funky Cat!20
高見沢の車で俺の家まで一旦戻って貰い、高見沢はパソコンをテーブルの上に置きっぱだったのでそれを持って帰る為に家にあげた。
桜井の方はドングリが甘えっぱなしで、車の中でもずっと彼の腕の中にいた。ふむ、桜井の事を相当気に入ってしまったようだなコレは。彼が猫になった間に何があったのかはまだ詳しく聞いてないから不明だけれど、ドングリもシッポナもナカノも車の中で桜井の事を褒め称えてたしな。
‥ちょっとだけ妬いてしまったのは内緒。
車から降りる際は俺も人間に戻り、とりあえず全員まとめて俺の家に戻ってきて‥たった今玄関のドアを開けて「ただいまー」と、誰もいない部屋の中へ‥いや、誰もいなくないか。沢山の動物達がいるしね。
靴を脱ぎ、廊下を歩いてく足音がいくつも耳に届く。
「ほら、ドングリおりな」
「えーっ!まだサクライさんに抱っこして貰いたいよ~!」
「お、今ドングリなんか言ったんじゃないか?」
「桜井お前気に入られてるんじゃないの?」
「ほんとか?ドングリ、ありがとなーっ」
「わっ!」
ドングリをおろす前に軽くキューっと腕に力を入れ、オマケにドングリの額にチュッと唇を落としてみせると、それを見ていたのであろうシッポナが急に桜井の足元へと駆け寄り、まるで「自分にもやって!」と言いたげな表情で見上げているじゃないか。
なんとなく察知したのであろう桜井が、今度は代わりにシッポナを抱き上げてみせると、先程と同じ行為を繰り返してみせた。
‥写真に収めておけば良かったな。
シッポナも下におろし、二匹同時にポンポンと頭に手を乗っけて「暇があれば会いにくるね」と言った瞬間、ドングリもシッポナもパアッと瞳が輝いた気がした。
一方高見沢は持ってきたパソコンをしまい込み、帰る支度をしながら「うーわ、もう四時じゃん‥」なんて呟いている。
「わ、悪かったってば‥お前の仕事の邪魔して」
「んー、でも一応終わりも近づいてるから気にしてないんだけどね。俺は締め切りなんかよりお前が人間に戻れない方のが不安だったし‥」
「う、ん。ありがとう」
面と向かって言われると何だか照れるな‥
言った本人も後から恥ずかしくなったのか、話題を急に変えては桜井に「帰るだろ?」と聞いていた。
まだドングリとシッポナの相手をしていた桜井は、高見沢の質問に「うん」と答えた。
「車だろ?」
「そりゃあね」
「一緒に下まで行こうぜ。‥坂崎も猫達とゆっくり話したいだろうし」
「そうだな。じゃ、俺ら行くな坂崎」
「え?お、おう‥」
気遣ってくれて二人は俺と猫達だけにしてくれようとしているこの親切さ。しかしドングリとシッポナは少々残念そうにしながら桜井の「バイバイ」というセリフにニャアと挨拶をしていた。
「じゃあな、坂崎。もう迷惑かけんなよ」
「猫達によろしくねー」
「う、うん。‥本当、ありがとう」
「にしてもお前よく起きてられたな」
「バカ言え。あんな状況で眠たくなる訳ないだろ」
「そっかー」
ふーん、なんて興味なさそうにしている高見沢。じゃあ聞くなよ。
そして何事もなく二人は家から出て行ってしまった。見送る為一緒に玄関まで付いてきていた猫達も二人が帰ってく様子を惜しんでいるような感じが漂っている。
‥うん。もう一度猫になろう。
廊下を歩き際、ポケットにしまい込んでいたピアスを着けると再び俺の体は白い光に包み込まれる。
そして‥‥
「コウ!ホント人間に戻れて良かったね~!」
「シッポナが頑張ってくれたお陰だよ」
「俺たちコウがタカミザワさんに怒られる所見て焦ってたんだよっ?もう心配かけさせないでよね!」
「タクヤもそんなに心配してくれてたのか?悪かったよ」
「マナね、コウちゃんの笑ってるお顔がまた見れて良かったよ!」
「もうあんな悲しい顔をお前達の前では見せないよ」
「あのねあのねコウ、サクライさんってさ~‥」
「桜井が次いつ来るかが気になるのかドングリは?」
うん‥と控え気味になりながらも素直に答えるコイツはやっぱり可愛い。
「コウちゃん、ワカもいーっぱい心配したんだよ?」
「ごめんねワカ。もう二度と心配なんかかけさせない」
「‥‥。」
「どうした、ナカノ?」
「ううん、なんでも」
みんなが声を掛けてくれる中、何故だかナカノだけが暗い顔をしてしまっていた。さっきから大人しくしているな‥とは思っていたけど、何か俺やらかしたっけな?
思い当たる節がなく、眉を潜めながら考え込んでいるとナカノは「コウのせいじゃないわ」と否定してくる。
「‥‥俺とあんな風にお喋りしてなかったらこんな事態にならなかったのに~、とか考えてる?」
「私‥‥」
「気にするな。俺が全ての元凶なんだから‥ナカノが自分を責める必要ないんだよ?」
「けど半分は私のせいなんじゃないかって‥」
「もう言うな」
「でもっ‥!」
「言うなって言ってるだろ」
他の子達がいるにも関わらず、彼女がいつも俺にやってくるようにナカノのほっぺにチュッとわざとキスを落としてみせた。
‥瞬間、驚きすぎたナカノが「な、何するのよ!?」と大声を出し思い切り猫パンチを喰らってしまった。
「いってぇ!」
「ご、ごめんコウ‥!」
「別にいいんだけどさぁ‥っ、力強すぎぃ」
「コウが突然そんな事してくるからでしょっ!」
「ナカノがいつまでもウジウジしてるからだろーがっ」
「ば、バカコウ‥!」
「なんだよソレ~」
照れ臭そうにプイとそっぽを向いてしまったナカノは、自分達の部屋まで行ってしまった。あーぁ‥、せめてこの子達が居ない所でした方が良かったかなぁ?
それとこれは関係ないか?
「コウ、ナカノねーちゃん嬉しがってたね」
「嫌われてないかな?」
「ナカノおねーちゃん、すっごく照れて可愛かったよ~」
「ね、可愛かったね」
そんな事をお喋りしつつ、この子達にも部屋へと戻るよう促すと元気よく「はーい」と口にする。そして俺は人間に姿を戻してみせては‥‥
「‥‥猫になれるピアス、か」
左耳に装着していた猫の形をしたピアス。
これのお陰で俺はこの頃振り回されっぱなしだったけれど、このピアスに感謝しなくてはいけないんだよね。
王様達、これからもこんな俺やあの子達‥それに、まだまだ救われない子の為にも俺に力を貸してくれ。
あ、でも二度と悪戯だけはしないでね‥
おしまい
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