FC!18
しかしな‥コレは元はといえばこの王様達のピアスだ。それも、かなりの想いが詰め込まれた大切な大切な物だ。やはり返すべきだよな‥
チャリ‥と右の掌で握られてあるピアスに目を落とし、意を決し「これ、返します」と口に出そうとしていた俺をすぐに察知したのか、現王様が「それは貴方が持っていてくれ」と遮ってくるではないか。
「だけどコレは貴方達が作り上げてきた‥命と同等とも言えるような宝物でしょう?俺なんかが持っていても逆に罪悪感が‥」
「貴方はそれを悪用するなどと考えておるのか?」
「それはあり得ない!悪用するなど絶対にしませんよ。使う時はこの子達と遊んだり、一緒に過ごしたりする時間だけだし」
「では持っていて欲しい。その先代の王達や、私の失った視力が込められているピアスを‥」
「まって王様‥。まさか、その青い方の目って‥」
「そうだな。私の視力を半分与えたお陰で完璧なピアスになったのだよ」
「‥‥っ。だったら尚更‥」
もう一度顔をしかめ、王様に反対意見を告げようとした時だった。
今まで後ろで見ていただけの高見沢が痺れを切らしたかのように、俺に対して「貰ってやれよ坂崎」と言ってくる。
けど、そんな簡単に「はい、ありがとうございました」って素直に受け取れる訳が‥
「俺なんかが‥!」
「坂崎だから王様は認めているんだろ?」
「いかにも。他の人間になら譲りはしないな」
「だってよ坂崎。‥素直にご褒美だと思って受け取ってやれよ。今まで沢山の猫達を救ってきたお前なんだからさ、何をそんなに拒む必要がある?」
「ムダに命を犠牲にしてまで作られたピアスなんか‥っ」
「ムダじゃないだろ?そこに浮いている王様達も、本気でそのピアスを作った人の願いを叶えてあげたんだろ?王様達が自分で決めた道なんだから‥それを否定するのはどうかと思う」
「‥っ、」
「そりゃあお前が猫達を助けているのを知っているし、消えた命を惜しむのも分かる‥。けど、そこまでして作り上げられたピアスなんだからさ、世界に一つしかないんだし?お前が持っていて誰も損はない。むしろ感謝されるのは俺は当然だと思うな」
言いたい事を言い終えた後に高見沢は、おどけた口調で「なーんて猫達の事情をよく知らない俺が言うのもなんだけど‥!」と笑いの混じった困ったような声と表情を魅せた。
「‥‥。」
「高見沢の言う通りだよ、坂崎」
後押ししてくれた桜井は優しい顔をしていた。
下に居る猫達に目を落とせば、みんなが俺の方を見つめてはその愛らしいつぶらな瞳で何かを訴えてきている‥ような気もする。のは、気のせいじゃない筈だ。
数秒だけ時間をくれ。
グッと握り締めたピアスと固く閉じてみせた瞼。
猫になる度に俺は何度もみんなに迷惑を掛けてきた。二人やこの子達に何度も心配をされた。
みっともないこんな飼い主なのに‥お前達は俺をいつまでも好いてくれている。
でも、‥‥そうだ。
俺はこの子達や色んな‥まだ救われない猫達を救いたいし、沢山の本音を聞きたい。
「‥っ!、王様‥俺は!」
目を開いたと同時に、俺はこの決意を‥信じてくれた王様や他の猫達の為にも役に立ちたい、猫達の気持ちを知りたい、救いたい。
そう伝えようとした時。
王様のしっかりと見開かれた目に吸い込まれ、俺は一瞬の間言葉を失ってしまった。
「‥俺は‥、」
「分かっておる。だからずっと貴方が持っていて欲しい。‥きっと今の貴方の決意であの方も悟られた筈だ。だからピアスを外してみろ」
「え‥?」
本心を伝える前に全て王様に言われてしまい、ポカンとしていた俺にそう命令してくる。なので、素直に恐る恐る左耳に飾られてあるピアスを取り外してみるも‥
「人間の‥まま?」
「あの方も認めてくれたのだよ。貴方に全てを託したのだから‥我々王である者、サカザキの事を見守っていく」
見守って‥いく、か。
すると先代の王様達が、「我らのご加護をバカにするなよ」と告げた後、俺が持っていた猫の形をした方のピアスへと還ってしまわれた。
強い光がまるでピアスの中へ閉じ込められるように、シュウゥ‥とみるみる内に明るかった周りは次第に月明かりだけが照らしてくれる弱々しい光だけになってしまった。
戻っちゃったのか‥
「‥‥。」
「私にはもう用事はないだろ、サカザキ?」
「え?‥まぁ、」
「時期に夜明けになってしまうぞ。貴方達も帰った方がいい」
「‥‥。ねぇ、王様」
「なんだ?」
「ありがとう。‥この一言だけに尽きるよ」
「言われなくとも分かっておる」
「なんだよソレ」
プフッ、と小さく吹き出してみせれば王様はそのたくましくて凛々しい目が細くなり、微笑みを向けては「これからもよろしくな」と言いながら片足をポンと俺の膝に乗っけてきてくれた。
‥可愛いと思ってしまったのは仕方ないよね。
俺もそれに答えるように王様の小さな手をキュッと握り、「よろしく」とだけ伝えた。
「何か分からない事があればいつでも来ていい?」
「もちろん。私はいつもここにいる」
人型をしたピアスの方を王様に返してみせると、彼はそれを口に含んではクルリと背を向けて大木の隙間へと戻そうとしていた。
‥あ、そうだ。
「えいっ」
「んおっ‥!?ど、どうした?」
「いや、王様の尻尾ちょっと触ってみたかっただけ」
「なんだ、そんな事か。驚かすな」
まん丸になっている両目と今の反応が可愛くて、思わず胸がキュンとしてしまったのは内緒。
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