FC!19
「それにしてもさ~、坂崎ぃ」
王様とも別れ、来た道を戻る途中に俺の左隣で歩いている高見沢が名前を呼んでくる。
俺達の前方には何やらじゃれ合ってる風な猫達を見ているだけで癒されるなーなんて思っていたけど、高見沢に何を言われるか分からなかったので、ドキッと悪い意味での心臓が鳴る。
そうだよ‥。俺、さっき高見沢に一回本気で怒られちゃったんだからさ‥
あの時は返す言葉さえ見つからなかったのは言うまでもない。高見沢なんか仕事が残っているのにわざわざ俺の家まで来てくれたんだし‥
横目でチラッと高見沢を確認した後に「ん?」と平然を装いながら返答してみせた。
「お前さー、本当に猫になりたかったって‥冗談だよな?」
「あ、うん‥まぁ」
「なんだよ、その曖昧な返事は」
キツいツッコミが右隣から入ってきました。はい。
そして構わず続ける高見沢。
「冗談じゃないのか?」
「‥‥。冗談といえば冗談だよ。俺が猫になっちゃったらこの子達の世話なんて出来なくなっちゃうし、第一お前らと音楽がやっていけなくなるのは勿論嫌だからね」
「‥なんだ、ちゃんと考えてたんだ」
「人間に戻れないって知った瞬間の絶望と、高見沢の本気の説教で痛い程感じたよ」
「ま、別に俺は本気で怒ってた訳じゃないけど」
「えっ?そうなの?」
「あ、そうそう坂崎。俺が坂崎んチから出た後によ、高見沢がわざわざ俺にメールなんかくれちゃったんだぜ?」
「メールを?高見沢から?」
桜井のイタズラな笑顔を見せながら俺へと高見沢からのメールとやらを説明してこようとするが、恥ずかしかったのか高見沢が「おまっ、バカッ!」と真っ赤にしながら、逃げ出そうとした桜井を追いかけて行ってしまった。
タタッと俺より先に走り出して行く二人の様子を眺めている俺と、六匹の猫達。アイツら何やってるんだか‥
呆れ気味にしている俺が二人の後を急がず、歩いてゆっくりにでも追いかけようかな‥なんて思ってみたけれど、クルリと頭をこちらに向けた猫達が俺にピカッと煌めいた瞳が捉える。
「‥なる?」
ニカッと歯を見せ笑ってみせると、猫達は先に二人が走り出してしまった方へと駆け出して行く。
俺はさっきから握っていたピアスをパッと耳に飾ってみせれば、俺を包み込む白い光。その光が収まる頃には再び猫の姿を纏った俺がそこに現れた。
「ぷっは‥!おい!お前達ちょっと待て!」
「あはは!コウ早くしないとビリだよ~ッ!」
「コウちゃん、マナ達に追いつけるかなーっ?」
「ほらコウ、タカミザワさんとサクライさんが行っちゃうわよ!」
まぁまぁ大分後ろの方で置いてけぼりにさせられている俺に対し、こっちを振り返り際にあの子達がからかいながらもとっておきの笑みを見せてくれるではないか。
くそ、可愛い奴らめ‥!
しかし負けてられないっ。
「コウ、あんまりムリしちゃダメだよーっ?」
「せめてお前達にだけは追いつきたい‥!」
「あっ、ほらもうタカミザワさんとサクライさんに追いつくよ~!」
「誰が一番二人に追いつくか勝負だ!」
ドングリの掛け声で、かなーり本気を出し気味になってしまったあの子達の足の速さといったら‥!お、追いつける気がしない。
何故かそれがおかしくてプッと思わず吹き出してしまい、ちょっとの間油断をしてしまっている間に、あの子達はほぼ全員同時に高見沢と桜井へと追い付いてしまってるではないか。
二人の足許に、ちびっこくてすばしっこい猫達が駆け抜けて行くと桜井が「うおっ‥と!?」なんて驚きの声をあげ、高見沢がバランスを崩しそうになりながら「おわっ!?」と間抜けな声を漏らしてはフラついていた。
相変わらず危なっかしいな。
「やったー!僕がいっちば~ん!」
「えーっ、違うよ、ワカが一番だよーっ!」
「違うって、僕だよ!」
「こら、お前達危ないだろっ!」
「うわーっ、タカミザワさんが怒ってきたー」
「逃げろーっ!」
楽しそうにじゃれ合っている猫達と高見沢。思わずこぼれる笑みが先程から止まらなかった。
また‥これからもずっと、こうしてあの子達と話せる。こんな風に走り回って遊んであげられる。
よくやく俺も二人の足許までやってこれば、桜井の方は疲れ果てたようにヘロヘロしながら息も上がっており、走るというよりもう歩いてる時と同じスピードも同然だった。一方高見沢はそれなりに鍛えてる効果や普段ライブで走り回ってるせいか、若干疲れてる感はあったがまだ体力は余ってそうだ。
他の子達は先に高見沢の停めた車の方で待機していたが、ナカノだけが二人のスピードに合わせてゆるやかに走っているじゃないか。
そんなナカノの隣に来てみると、彼女は「早くお家に帰りましょ」とニコッと微笑みかけてくれる。
「‥うん。帰ろっか、俺達の家まで」
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