罪人続編 番外編弐 - 21/32

誰のために生きるの

 

二十四番がとても仕事が出来る状態じゃなくなってしまったので、俺と七十二番だけが先に外へ出て行く道中、隣で歩いてた彼はとても暗い顔をしていた。

 

あんなものを見せつけられたらそりゃあ、コイツだって他人事ではないと思い知らされるだろう。あれを見て何とも思わない方が逆におかしいし、まさにゲスといった所だ。

幸いにも七十二番の心はまだ死んでいないようだしな。二十四番を心配したり、信じたくても信じ切れない苦しさだってこの三日間味わってきた。

 

クズはクズでも、二人共やっぱり人間なんだなと実感させられた三日間だった。

七十二番、と呼びかけてみると彼は前を向いたまま「なに」と不機嫌そうな声色が俺の耳に届いた。

 

「お前さ‥どう感じた?」

「はぁ?」

「二十四番見てて‥どう思った?」

「どうって‥」

数秒の間は空いたけれど、すぐに言葉を紡ごうとする七十二番の神妙な面持ちと真面目な口調が伝わってくる。

 

「桜井を見てて‥俺も他人事じゃねーな、って思ったさ」

「そりゃあ、お前ら二人が首謀者だからな」

「‥‥。俺たちがどれだけ重い罪を背負わされてるのかを改めて知れたいい機会だとは思うがな。あとの五年も本気で生きようってなる」

「あぁ‥。俺たちもあと五年‥か。あっという間に四十になって、そのまま死んでいくんだろうな」

「船頭は本当にそれでいいのか?」

「俺自身が決めた事だ。今更ごちゃごちゃ言った所でお前ら二人も悪魔たちだって相手にしてくれないのは目に見えてるし。‥でも、昔の仲間たちが俺の事をちゃんと見ててくれたって知れて嬉しかった」

「‥いい奴らだったんだろうな」

「あぁ。‥お前たちが殺さなければ今頃みんな幸せに暮らしていたさ」

「‥‥、」

 

この言葉にだけは何も反応を示さなかった七十二番。喋る気をなくしたのか、施設の方へ戻るまでそのまま無言になってしまった。

沢山の事を考え、八年前の反乱を悔やんでくれたら俺はそれで嬉しい。許される罪ではないけれど、今回の出来事で俺も多くの真相や二人の気持ちが知れた。

‥俺もちょっとは成長した証しかねぇ。

その日一日は、二十四番抜きでの仕事を終えた。

 

...

 

「はぁ‥っ」

「‥‥。」

 

最後に罪人たちの死を見届けた仕事も終え、悪魔たちに報告もし終わった後の事だ。

何故か俺の家に七十二番が居座る形になっている。

まぁ、その理由は言わずとも分かるだろうが、家に居る二十四番を気遣って一人にさせているらしい。仕事終わったーと思い、家まで帰ろうとすると何故か七十二番までシレッと俺の家の中に入って来るので、若干ビビったが気にしないようにしておいた。

勝手にテーブルを陣取り、疲れたという表情を浮かべながらゴツッという鈍い音と共に、顔をテーブルに突っ伏してしまった七十二番。どうしたのかと問えば「眠い」との事らしい。

聞く所によれば、彼は一晩中二十四番を見張っていた為に一睡もしてないそうだ。寝てない上に、仕事に加えあの出来事を見せつけられてしまえば相当疲労も溜まっているだろう。

「ベッドで寝るか?」と優しさのつもりで聞いてはみたが、案の定「キモぉイ」の発言。優しさなんて振りまくんじゃなかった。損するだけだし。

呆れ気味の溜め息をつき、部屋着に着替えている間の一分もしない内に寝息が聞こえてくるではないか。

 

‥お疲れだったな、今日は。

暫くそっとしておこうかなと思い、一服する為に台所の冷蔵庫からお茶を取り出して、それをコップに注ごうとした時だった。

ドアがコンコンとノックする音が聞こえたので、「はい」と短く返してる間にもドアは勝手に開かれていた。‥大体は予想してだけどさ。

 

「‥落ち着いたか?」

「少しはな」

入って来たのは二十四番。

チラッと移した視線を気にして、静かにドアを閉めるこの気遣いは七十二番だけの特権だろうな。

台所から出て、二十四番が立つ前までやって来ると彼は「悪かったな‥」と謝る。うん、‥謝られても困るんだけど。今回の件は誰も悪くないのだから。

 

「謝るな。お前は何もしてないし、親の役目を果たしただけだろ?」

「‥いや。その事で謝ってるんじゃねぇ。八年前のあの反乱だ」

「‥‥。もういい、その話しはするな。‥分かってる、分かってるさ。お前たちが犯した許されない罪の重さをその肌で感じてくれただけ救われてる」

「今更気付いた‥。俺たちが何故生かされてる本当の理由を‥。遅すぎた」

 

虚ろすぎるその覇気を失った瞳。

二十四番のこんな顔‥初めて見たかもしれない。

上手く言葉が出てこないけれど、コイツはよく頑張ったんじゃないかな。大事な人を失う本当の意味もきっと理解してくれただろう。

この世界がいかに不条理で忌まわしい世界かという事も。残酷で‥醜い世界だって。

 

「‥ここに運ばれて来る奴らには、何かしらの大きな理由があって島流しにされるんだ。そんな犯罪者がごまんといる。なのに、理由もなく死んでいった仲間たちはこの島で息絶えた‥。悔しかっただろうな」

「‥‥。」

「大切な家族、友人、恋人に仲間たちが消えて逝く悲しみをお前にも分かって貰えたと思ってる」

「‥あぁ。俺たちの犯した罪はどんなに償っても償い切れない。それに、俺の魂は生まれ変わってもアイツと再び巡り会う事はないだろう」

「なんだ、知ってたのか」

「そこまでバカじゃねぇよ。‥全て分かった上で話してたんだ。もう二度とアイツとは会えない‥ってな」

 

そういえば、あの子の遺体‥どうなったんだろ。マモン様たちに預けられたようだが、ちゃんと葬られてる‥よな。悪魔たちもさすがにそこまで鬼畜じゃないか。

ぽやっと考え事をしていた途中に、二十四番が「ありがとな、高見沢」と七十二番の眠りこけた後ろ姿を見つめるその目は穏やかになっていた。

 

「‥明日は一応休みだからゆっくり休んどけよ?」

「そのつもりだ」

普段なら絶対俺になんて魅せてはくれないであろう、二十四番の優しい微笑みがこちらに向けられた瞬間、やはり違和感を覚えてるこの感覚は慣れてはくれないものなのか。

ま、仕方ねーけど。

 

「飯食ってくか?」なんて何気なく聞くと、「そうだな」と返ってきた答えに驚きつつ俺は再び台所に立った。

そして二十四番は、眠っている七十二番の隣に座ると「疲れてたんだな」なんて呟きながら少しだけ笑顔を見せてくれた。今日初めての笑いじゃねーか?

 

 

「良かった‥」

 

そう呟くような囁き声が、どこからともなく聞こえてきたような気がした。

 

 

長くなってしまいましたが、ここまで読んで下さりありがとうございます‥!

今回なんでこんな話を書いたかというと、二人の罪人のやらかした罪というものを改めて知って欲しかったからです。

 

‥なんて格好つけるのは後付けで、ただ単に思い付いただけですけどねw

ですが二十四番や七十二番の本音や、船頭さんに対する気持ちやらマモン様や他の悪魔たちの優しさなんかを普段全く書かないような事を書けて凄く新鮮で楽しかったです。

 

八年間ずっと仲良しでいた二人の罪人の間に入った微妙な距離感や、七十二番と船頭さんの会話などなど自分で書いてて「あー、すごいなー」なんて思ってたとかなんとか

まぁ、あとの五年間はきっちりと生かさせていきますよ、この三人には⑅◡̈*

 

そして出来たらいつか三人の最期も書いてみたいなと前々から思ってますが、その時はやって来るのかが疑問です

 

 

オマケ

七「桜井お疲れぇ元気ぃ?大丈夫ぅ??」

二「気にするな、俺は大丈夫だ」

七「なら良かったぁ。桜井が死ななくて俺安心したんだよぉー?」

二「だろうな。船頭とお前二人だけだとどうなるか分からんしな」

七「まぁねー。でもぉ、最初考えてたパターンは桜井が俺と船頭裏切ってあのガキを逃がすつもりだったんだよねー」

二「あぁ。それとお前とも一戦交えようかと思ってたらしい」

七「俺とお前ほぼ互角だしねぇ。あ、あと墓の前で償う為に死のうとするとかー、ガキ逃がそうとして悪魔たちに罰を与えられるとか」

二「その罰を与えられる時にお前が“俺にも桜井と同じ罰を与えてくれ”とか格好よすぎるセリフなんか言っちゃったりな」

七「言ってみたかったねぇw」

二「まぁ、俺と高見沢がどれだけ許されない事をしたのかを読んでる奴らにも解って貰えただろうな」

七「そうだねー。時に船頭の女バージョンはアレでいいのか?」

二「船頭ファンの人が喜んでくれてるっぽいし、いいんじゃねーの」

七「鍛えてるだけあって歳のわりにはいい身体つきしてるが‥胸が小せぇのが惜しい」

二「揉めば?」

七「揉むか」

「お前ら俺の命返せ」

 

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