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あれから私はもう一度眠りに着き、暫くはサクライの世話になって貰う事となった。
「ふわぁ〜…」
ふわふわとした柔らかいベッドの上は私の眠気を誘うのだが……
突然扉がバタン!!と開く音がしたと同時にもう一人の男の声が響き、うとうとしていた瞼が一気に覚めた。
「?…??」
見るとサクライより一回り小さい男が勢い良く入ってきて、その様子はどこか焦ってるようにも見えるが……
「サークライぃいいい!助けてくれぇ!!」
「はぁ?またかよ」
「隠れてるからアイツが来ても俺居ないって言っておいて‥‥ん?」
「っ‥、」
屋根裏に続くはしごを駆け上ろうとしていた男がベッドに寝ている私に気付き、こちらをジッと見つめてくる。その視線が嫌だったので私は身を小さくしていたが、男はいきなり被っていた布団をバッと剥ぎ取り私を凝視してきた。
「お前は‥」
「‥‥、」
驚愕している男にサクライはハァ‥と溜め息をついて「見つかっても知らんぞ」と言うと、男は「やべっ!」と呟き慌てたようにはしごを駆け上り、そのまま屋根裏へと消えていった。
「ほら、タカミザワもその背中を隠して寝てなさい」
「う、うん」
言われた通りに翼を上手く折りたたみ再びベッドの中で小さく丸まっていると、バタバタという音が家の外から聞こえてはまたドアが勢い良く開く。
「ちょっと!ここにコウちゃん来てるでしょ!早く出してちょうだい!」
「来てねぇよ。来てたとしても俺がとっ捕まえてこっぴどく叱ってるよ」
「本当に?」
「本当だ」
怒りを露わにしている女性がサクライを疑うようにしつこく聞いてくるが、負けじとサクライも嘘を貫き通す。さしずめ“コウちゃん”と呼ばれているのがさっき屋根裏に隠れていった人物だろう。
先程の会話を聞いている限り、そのコウちゃんとやらは何度も同じような行為を繰り返しているらしく、隠れる場所はさも当たり前かのように屋根裏へと上っていったしな。
少し言い合いをしていた二人だったが、その内女性の方が折れたので諦めて帰ろうとしている所みたいだ。
「あら、誰か寝てるの?」
「病人だよ。だから早く帰ってくれ」
「ふぅん。じゃあ、お邪魔して悪かったね。うるさくしてごめんなさい」
「‥‥。」
こっそり顔を覗かせた私と目が合った女性は怒りを含んだ声ではなく、そこには優しさしか見当たらない目に戻っているではないか。
出て行った女性を確認するかのように屋根裏の天井から頭だけをひょっこり覗かせるコウちゃんとかいう男。「もういいよ」と窓の外を眺めるサクライが合図をすると、ソイツはぴょんと軽い身のこなしで降りてきた。
そしてまたもや私の布団を剥ぎ取れば、「有り得ない」と呟く。
そりゃあ人間から見れば私は有り得ない存在だ。きっと伝説上の生き物とでも思っているのだろうからな。
「おいサカザキ。そいつは見せもんじゃねぇ。そっとしといてやれ」
「‥んっとにバカじゃないの?なんで天使なんか拾ってくるんだよ!」
「俺がそういう生き物が好きだって知ってるだろ?死にかけてたんだから救うのは普通だろうが」
「いや、でもお前‥。ハァ、有り得ないよ。天使なんか空想の生き物だと思ってたのに‥」
私の翼に触れる男、‥サカザキは白い羽根一枚一枚を丁寧に扱う。
余り触られた事がないので体がぴくんと反応を示してしまう。勿論神経は繋がっているので折れた部分だってズキズキと今も痛みが伝わってくるもの。
優しい手付きで撫でてくるサカザキは低い声で「名前は?」と聞いてきたので、少しの間を空けてから自分の名前を彼に教えてみせた。
「た‥タカミザワだ」
「タカミザワね。‥お前、男なんだな?」
「あぁ」
「女だったら抱いてたのに」
「サカザキ、お前は懲りない奴だな。何回女に追いかけ回されれば済むんだよ?今まで何人抱いてきたんだこの野郎」
「んーっと、町の可愛い子ちゃんは大体‥」
「いい、いい!言わなくて結構!天使がいる前で穢れた話しをするな!」
必死で止めに入るサクライは、サカザキの頭を後ろから思い切りパカンとひっぱたいていた。
「いてっ」と声を上げるサカザキと殴るサクライを見て、私は思わず笑ってしまった。そんな笑っている私を見て二人はぽけっとした顔になっていた為、私は慌てて口元を押さえつけてしまった。わ、笑ってはいけなかったかっ?
「すまない。お前達がおかしくてつい‥」
笑顔を消そうと表情を戻せばサクライは私の肩に手を置いて「やっと笑った」と嬉しそうに微笑みかけてくれる。てっきり笑ってはいけないものだと思っていたのだからちょっぴり拍子抜けしてしまった。
「笑っても‥いいのか?」
「ぜーんぜん。ほら、もっと笑えよ!タカミザワは顔が綺麗なんだから笑顔を絶やさない方がいいよ。な、サカザキ?」
「えっ?俺に振らないでよ‥」
同意を求められたサカザキは殴られた部分を押さえ、眉間に皺を寄せながらもサクライの言葉に答えていた。
「なぁ、タカミザワ。人間にその姿見られてもいいなら外に出てみようぜ?」
「外に‥?」
「ダメか?」
私は首を横に振って差し出されたサクライの手を取り立ち上がってみせると、あまり使えない翼を広げて、ベッドの上からふわりと降り立ってみせた。
今の私の姿に見惚れるような眼差しで見てくる二人に「よろしく」と告げてみせれば、サクライもサカザキも満面の笑みで「こちらこそ!」と返してくれたではないか。
‥ちょっぴり照れてしまうな。
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