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外に出た私達三人は、サクライが案内される場所へと向かった。私の背中から生えている翼を見て、道行く人々は不思議そうに眺めているだけで余計な事は言っても来ないし、関わりを持とうとも思ってもなさそうだ。
私としてはとても有り難いが、ここまで関心がないと翼の意味がない気がしてきて少し落ちこむな‥。それに気付いたサクライが「気にすんな」と慰めてくれるが、本物の天使を前にして人間って騒がないんだなと。
否、騒がないだけでやはり物珍しそうに見ているのは一応伝わってはくる。
「タカミザワの事、女だと思われてるからみんな近付けないんだぜ?」
「何故?」
「サカザキがいるからさ。コイツ、ほんっと遊び人なんだよねぇ。サカザキの隣にいる女に手出しするようならそれはそれは恐ろしい制裁が待ち受けてるんだ。少なくとも二週間はその女を狙っちゃダメだ。サカザキが気に入った女は全てサカザキが思い通りにする。コイツ人気だから人が寄ってくるのよ。みんな気に入られようと必死でさ、サカザキと関係を持っただけで自慢出来るんだぜ?この町の連中は騙されてるんだよな~」
耳打ちしてくるサクライの話を聞いてるだけでサカザキの存在はとても凄いのだと理解した。こんな小さな体なのに‥。
でも、町のみんなからしたら今私はサカザキの女だと思われているのか。なんだか余りいい気分ではないが特に嫌な気もしないので黙っている方を選ぶ。
歩く事数分。サクライはある一件の店に足を止め、ギイッとドアを開けると中へと入って行く。それに続けるようサカザキが店内に入ろうとするが、立ち止まっていた私に気付き、手首を掴まれるとサカザキと一緒に中へと吸い込まれていった。
店内は落ち着いた色と雰囲気の酒場だ。大きいとも小さいとも言えない中だが、客は結構入っており席は殆どが埋まっている。
そしてサクライはカウンターの中にいる男に声を掛けると、何かを二つ受け取ってはもう片方をサカザキに渡す。その様子を窺っていた私に気付いた男は目を丸くしてこちらを見てくるが‥。
その視線が痛くてビクッと体を跳ねらすと、サクライは「大丈夫だよ」と言って私の傍までやって来てくれた。
「タクローさん、見て下さい!コイツ天使なんです!タカミザワって言って傷付いて気絶していた所を俺が発見したんです!やっぱり天使は本当に居たんです!あの歌の歌詞に間違いはなかったんです!」
「そ、そんな事急に言われてもよぉ‥。俺はそういう類の物を信じずに生きてきたから今更こんな事があっても‥」
声を上げるサクライに呑んでいた客達が注目し始め、やはりみんな驚いたように私を眺めていた。慣れない視線を体中にひしひし受け、折りたたんでいた翼を広げて顔を隠そうとしたが、サカザキによってそれは阻止されたみたい。
グイと肩を寄せられサカザキは店に響き渡るように声を出す。
「この天使に手出しするような奴は俺とサクライが許さないからなぁ?傷付けたらどうなるか分かってるよな?」
脅すような口調と表情を客に向けるとカウンターの中にいたタクローさんとかいう店主がサカザキの頭を空のビンで軽く殴る。そのちょっとした衝撃だけでも、頭を抱え込んでは悶えてるサカザキを横目にタクローさんは大きく溜め息をつく。
「店員のお前が客を脅してどうするんだバカ。数が減ったらクビにするぞ」
「ちょっ、それだけは勘弁して下さい‥!クビになったら働き口がないんです‥」
「情けねぇ野郎だなぁ‥」
最後の一言はサクライが言った台詞で、それにムカついたのかサカザキが手元に置いてあったお酒が入ったグラスをバシャッとサクライの顔にぶっ掛けてしまう始末。
「てめぇ!何するんだよ!」
「ふんっ」
上半身ずぶ濡れなサクライはガッとサカザキの胸倉を掴めば彼も負けじとやり返して、今にも殴り合いになりそうな雰囲気になる所だ。店の客達が「いいぞ!」「やっちまえ!」と二人を煽るものだから、やる気になってしまったサクライとサカザキはその場から一歩二歩と下がり出し、拳をギュッと握り締めてお互いの頬目掛けて腕を伸ばした時だった。
バキッ!と鈍い音が耳に届いた瞬間私は見ていられずに目を逸らしてしまったが、その逸らした方には小さな男の子が私の事をじっと見つめていたのに気付く。
「ねーねー、お姉ちゃん天使さんなの?」
「‥私は女ではなく男だよ。そして正真正銘本物の天使さ」
「わあぁあ‥!凄い!本当に、本当に天使さんなんだね!羽根触らせてよ!」
「あぁ、しかし右側だけにしてくれないか?左側は折れてしまって痛いのだ」
「分かった!ありがとう天使さん!」
無垢な笑みを向けられ私の心は落ち着きを取り戻し、はしゃいで純白な羽根を触る子供を私は大きな翼で包み込みながら一緒に遊んでみせる。
あと、包み込んだ理由はもう一つ。サクライとサカザキが殴り合っていて大人達が楽しそうに騒いでる所を子供に見せたくなかったから‥。
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