Rtf9
「貴方はまた勝手な事を‥!」
「えー?別にこれくらいいーじゃん。純粋に楽しもうぜ、な?」
「私は貴方の事を心配しているのですよ?全く、自分の命の危機感もない人に付いてる私の身にもなってみて下さい。呆れます」
「ったく、お前って奴はいつまで経っても頭かってーよな。ちょっとは遊び心持ってみれば?」
「あのですねぇ‥」
楽しそうにしている社長のお顔は私にだけ向けてフフッと黒い微笑みを魅せてくる。
本当に貴方って方は怖いもの知らずすぎて私が困る程なのに‥。どうしたらこんなガッチガチの鋼のようなハートが手に入るのだろうか。仮にもほぼ命を狙われてるような立場でありながら、この余裕の笑み。
‥えぇ、そうですとも。私は貴方のそんな所が魅力的なんだと思うのですけどね。ただ、誰にもこの魅力が伝わらないだろうし、むしろ否定されそうなものだろうから仕方がないとは思うが。
そしていつまでこのお遊びは続けるつもりなのだろう。社長の気まぐれさは今に始まった事でもないが、こんな急なルール変更‥というより、ゲーム自体が変わってしまっている。
何か考えがあって実行しているのか、それとも無計画か。多分これは後者だろうけど。
「社長。もし万が一奴らが辿り着いたら‥」
「もし万が一アイツらが外の世界に繋がる唯一の扉を見つけ出せたら、その時は俺が外の世界へ連れ出して行ってやるよ」
「バカ言わないでくださいっ!殺されるのかもしれないのですよ!?」
「殺されねーよ」
「なぜ言い切れるのですか‥」
「‥‥。ただ俺はあの左手と話しをしてぇだけだ。まぁ、扉まで辿り着けるかどうかは知らんがな」
「一番の危険人物ですよっ?あの男が社長を誰よりも憎んでいるのに」
「大丈夫だ。アイツは人を殺せない」
「でも他の奴隷たちが‥」
「殺そうとすればここから二度と出せなくしてやればいい。どんなに力を合わせたって扉は開かず、奴らは一生奴隷のまま。‥こんなような筋書きなんだけど、上手くいくと思うっ?」
最後のセリフ部分だけパッと明るく喋り出す社長に私は振り回されてばかりいる。
小さく溜め息をつき「知りません」と言い放てば、社長はアハハと笑い出し「じゃあ、上手くいくな」と勝手に決め付けてくる。私のこの発言にどんな効果があるというんですか‥
「見ず知らずの他人がこうして足掻いてもがいて、必死に苦しんでいる姿を見るのが何回見てもゾクゾクするねぇ」
「自分自身と重ねているのですか?」
「‥‥あぁ?」
「昔の貴方もそうでしたものね。人生に疲れ、身も心もズタズタになっていたではないですか」
「‥だけどここまで這い上がって来た」
「這い上がって来た‥は語弊ですよね?確かにこの五年間は会社を更に大きく作り上げ、社員たちからは慕われている貴方でしたが‥」
僅かに腰を曲げ、社長の耳許まで顔を近付けさせればボソッと告げてみせる。
「貴方はただその権力を盗んだだけの‥本当の姿ではない事だって、私ともう一人以外は誰も知りませんものね」
「‥っ、」
そっと社長から離れ、社長の背中を窺ってみるだけに変えれば、社長の肩が僅かに震えているようにも見えた。
しかし社長は、私の方へと恐ろしい視線を流して何か言いたげな表情を浮かべるも、グッ‥と自分を抑えている様子。そんなにも焦る必要はないのですよ?
今の貴方がいるからこそこの会社はとてつもなく成長したのは変わりない事実です。感謝していますけどね。
「棚瀬‥、俺が今までどれだけ辛い思いしたかなんてお前には分からないだろうが」
「えぇ。私はとても順調な人生を歩んできましたから」
ニコッとわざとらしい笑顔を社長に向けるも、社長は顔を引きつりながら私へと怪しい笑みを下さった。
「そして私だけですからね。貴方がこんな惨い事が出来てしまうようになった過去を知っているのは」
「‥不覚にも見られてたからな、お前には。失敗したわ」
「いいえ。私はあの時の社長程素晴らしい人間を見てきた事がありませんでしたので。だからここまで付いて来たのですよ?」
「お前の言葉にはトゲがある‥。あれのどこが素晴らしいんだよ」
ジト目で私を見てくる社長。
「そうですか?私は冷酷な人間程素敵な人間は居ないと思っております」
「褒められてるのか、コレは?」
「それはもう、とっても」
「‥‥。」
私の言葉をサラッと聞き流し、モニターに視線を戻してしまった社長の目に留まったのは、奴隷たちが一斉にあの部屋を出た後の事だった。
集団で動く方を選んだか‥
これから社長がどんな罠を仕掛けていくのか、楽しみにしていますよ。
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