Roar to freedom(自由への咆哮) - 9/28

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やる気に満ちてきたみんなの声が響く中、坂崎が俺だけにしか聞こえない程度の声で「まだ必ずしも全員が同意した訳じゃない」と忠告をくれる。

 

「あぁ。この流れに流されちまってる奴だって、納得してない奴らも居る筈だ。だからそういう奴らはここで大人しくして貰っても構わない。‥ただし、仲間同士で傷つけ合うのだけは勘弁して欲しいが」

「‥‥上手くいくかどうか」

「全員でこんな暗い世界から抜け出そう。もちろんお前もだ。嫌がっても俺がお前を連れ出してやるよ」

「迷惑にしかならない」

「お節介焼きなんだ、すまんな」

 

フッ、と僅かに笑みをこぼしてみせると坂崎はほんの少しだけ目を大きく開いた。まさか俺がこんな状況でも笑うなんて思ってもみなかったからだろうな。

案の定坂崎は「‥笑った所初めて見た」と口にしてくるせいで、なんだか照れくさいなコレ。だけど俺もまさかこんな場所で笑顔を取り戻せるだなんて考えてもみなかったから、若干自分自身でも驚いているが。

思わず口許を手で隠してしまったが、坂崎がそんな俺の行為を気にする事もなくみんなの居る方へ顔を向き直した。

 

「これからの作戦は?」

「作戦なんていらない。俺たちがいくら企んで策を練ったって、奴に知れ渡っているんだ。なら個々で頭を使って考えて行動していくしかないさ」

「まぁ、そうなるわな」

 

見る限り意気込んでいる者も多そうに見えるが、これだけの中でどれだけ裏切る奴がいるか‥。先導を切ってしまっている俺に責任はあるから、下手に煽って相手を怒らせたくはないしな。

多分だが、ブレスレットの数が多ければ多い奴程納得いってないのだろう。最初から諦めかけていた人達は俺に賛同してくれてる節もある‥とは思う。

 

「みんな聞いてくれ!この計画に作戦なんてない!奴に情報が漏れてる以上、これから個人で考えて動いて貰う!一人でもいいし、大勢でも構わない‥が、これから先は俺たちに何が起こり得るかは不明だッ」

 

すると坂崎が「さっきの黒スーツたちが銃持って撃ってくる」と付け足してくれた。

 

「‥だそうだ。この坂崎という男は、ゲームに何度も参加した事があるし、こうして全員で協力し合った場合の悲惨すぎる最後も見てきた!‥そして、あの男が一番に気に入ってる奴らしい。だから分からない事があれば坂崎に聞いてくれ!」

「協力した覚えはない」

「分かってくれ坂崎‥。みんなの命が掛かってるんだ」

「‥みんなも可哀想だね、こんな頼りないリーダーじゃ逆に高見沢がコイツらに殺られる可能性だってある」

「‥っ」

 

坂崎のこの一言で、他の奴らの顔を窺ってみる。

そりゃ‥俺だって不安だよ。まだこの俺の行動に反対する奴らだっているんだろうし。

しかし、前の方に居た男の一人が「俺はアンタの強い意思は伝わった」とフォローを入れてくれた。それに伴い、俺に賛同してくれる奴の声もまたチラホラと上がってくる。

 

‥みんな。

 

「俺もブレスレット、これだけ集めたから本当はそんなもんに賛成したくない。‥ただ、アンタの言うようにもう誰も殺したくなんかないんだ。心の奥では分かってるんだよ、こんな無駄な事をしても虚しいだけって‥」

「俺だって今も罪悪感でいっぱいだ‥!こんな風に遊ばれて、俺らまるで人形じゃねぇか!」

「だから決めたよ、アンタの言う通りに従ってみようって。死ぬ時は既に覚悟出来てる。仲間殺し合うより、あの男をボコボコに殴ってから殺された方がまだマシだっ」

「ありがとう‥みんな」

 

さっきまであんなに狂ったような目付きをしていた奴らが、今は人間らしい瞳を取り戻しつつあった。

俺のこんな情けない演説なんかで‥きっとわざと俺の言う事を信じ込んで、自分をなんとか保とうとしているのだろう。だけど間違ってはいない。

死んでいった人達の分まで俺たちが生きのびなきゃならないんだ。これが例え自己満足だとしても、他にいい方法が思い付かないから。

 

ギュッと握り締めた拳が俺の誓いの印。

もうこれ以上誰もこんな暗い世界へ連れ込ませたりなんかさせてたまるもんか!

 

「坂崎っ、ここの地下から抜け出す為の扉の場所は知ってるんだよなっ?」

「‥記憶が少し曖昧だけど、何回かその扉の前までは行った事がある」

「お前やっぱすげーのな。いっつも上位五組以内に入ってたって事だよな、その口ぶりからすると」

「まぁ。このゲームに一番慣れてるのは俺だからね。だから俺とコンビを組んできた今までの相手は外の世界へと戻っていけた」

「そうなんだ‥。お前どこからそんな体力出てくるんだよ、こんなボロボロな身体で」

「さぁ。‥それより扉の話だけど、辿り着けるルートは何パターンもあった筈だ」

「みんなが今から散り散りになるのは危険‥だよな。離れちまうといつまた出会えるか分からないだろうし。かと言ってこれだけの集団なんだ。黒スーツの奴らが殺しに掛かってきたら全滅か」

「だけど数は多い方がいい。‥‥きっとご主人様はまだゲーム感覚で遊んでいる筈だ。だからさっきここに来た黒スーツ四人以上は投入してこない事を願いたい」

「‥とか言って喋ってるときっと大勢の黒スーツ野郎放り込んできやがるんだろうなぁ」

 

こんな会話を続けていると、またガサッとした雑音の後に聞こえてくる憎い奴の声が届いた。

 

「お前たちの面白さに免じて四人以上は投入しないでおいてやろうか」

「‥だそうだ。相手はプロだから狙われたらほぼ確実に死ぬだろうな」

「出会わなきゃいいんだろ?」

「ご主人様が無線か何かで知らせれば、俺たちが今どこを移動してるかなんて一発だ」

「‥‥でもあの男はこのゲームを楽しんでいる。となると、」

「あぁ。ご主人様を信じてみよう」

「信じる価値があるかなんて言われたら、ないんだけどな」

 

まぁグダグダ言ってても仕方ねぇ。

とりあえずここを出るか。

 

「俺に賛同してくれる人は今からここから離れて貰うッ。嫌な奴らや死にたくない奴らはここで待機していてくれ」

 

その言葉を最後に、俺たちはこの部屋を出る事になった。

嬉しい事に、誰も部屋に残る者がいなかったのは喜ばしい出来事でもあるか、な。

 

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