罪人たちの舟 終焉を書くにあたってその前にmemoしていたものです。時間がありましたら読んでみて下さい。本編とはちょっと違ったりする箇所もいくつかあります
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罪人たちの舟
いつも通り罪人たちが運ばれてくる。今回はそこまで人数多くない二十人前後ほど。だけど数日間、悪魔たちは魔界に帰っていて今はいない
いつもの流れといつもの仕事をこなし、罪人を収容したあとに船頭さんたちは仕事を終えてみんなが帰ってしまう。そのあとに一人の罪人がブツブツと不気味な表情で何かを唱えて小石?か何かで地面にガリガリと呪文のようなものを書いていると、その直後にそこから現れた黒いモヤのようなものに生気を吸い取られてしまう
罪人はただ藁をも掴む思いで助かりたいが為の、こんな呪術のようなものにでも縋ってでも助かりたいと純粋で軽い気持ちでやってしまったが為に、命を狩り取られてしまった。かなり深い時間帯だった為、それを目撃してる人はいなかった。そして死んだ罪人の体を借りるその黒いモヤ
次の日、船頭さんたちが仕事の為に罪人たちを別の場所へと引き連れて行っている最中、明らかにおかしな挙動をしていた罪人に気づいた船頭さんが「お前どうした?」と声をかけたところ、その罪人がとても人間とは思えないような力で反撃してくるので船頭さんは身構え、周りもザワつく。そしてその罪人が唐突にどこからか出したのか分からない大鎌のようなものをとんでもない力と速さで振り切られてしまった為、船頭さんが棍棒でそれを防御しようとしたが、棍棒も真っ二つになりそのまま船頭さんは負傷して倒れ込んでしまう
それを見ていた他の船頭や罪人二人が只事ではないと悟り、このままではこの場がパニック状態になり危険だと察知した為に七十二番が1番〜5番の船頭とここを制圧しようと試みて、二十四番と6,7番船頭は倒れて動けない船頭さんを二十四番がおぶって悪魔たちの館まで必死に走り出していく
「死なせない…!!船頭は絶対に死なせねぇ…!!」
七十二番たちがその罪人をなんとかしようと思っていた矢先、その罪人の体の中からズズズッ…と出てきた物体は黒いモヤ。そのモヤが段々と人のような形になったかと思いきや、黒いモヤがフード代わりのようになっているせいで相手の顔はよく見えない。しかしこの世の者ではないのはなんとなく察知出来る七十二番たち。今ここにいる罪人たちを避難させろと七十二番が他の船頭仲間に命令をして、行動に移ろうとしたその時。その黒いモヤが唐突に近くにいた罪人の一人を殺してしまう。それに焦った七十二番たちだが、周りにいた罪人が次から次へとそのモヤによって殺されていってしまい、今生き残ってる人たちだけでも逃がした方がいいと船頭仲間とやり取りしながら全員でここから逃げようとした時、そのモヤが大鎌を大きく振るった直後に罪人たちが全員一斉に死んでしまった。
それを呆気に取られながら見ていた七十二番たちだが、こんな危険な奴をこの島にのさばらせるのはダメだと判断した船頭仲間たちが黒いモヤ相手に立ち向かって行こうとするので「やめろ!」と止めに入ろうとする七十二番。しかし戦闘も虚しく全員が命を落とすこととなってしまった。その光景を見ていた七十二番が怒りに震えて一か八かで相手に襲いかかろうとするも、相手には敵わず負けて負傷してしまう。大鎌で斬られた為、地面にぶっ倒れて身動き取れなくなってしまったが一応は生きている
?「ん?なんだお前…。なぜ死なん?」
七「知るかよ…このヴォケ…」
?「……そうか、そういうことか。お前の命、お前のものではないな?」
七「それがなんだよ…」
?「狩り取れんはずだ。お前の命ではないのならな。じゃあ誰の命だ?」
七「うるせぇな…とっとと失せろ…」
?「ここにいる者たちの命を狩り取ったあとでな」
七十二番が死なないと分かった為か、彼の縛ってある髪を引っ掴んでそのままズルズルとどこかへと移動していくモヤ。そして遺体を複数操っては逃げ出した二十四番たちをその遺体を使って追跡していく
ところ変わって二十四番たち。船頭さんが瀕死状態の為、全速力で館へ向かうも今は悪魔たちがいないのでどうすればいいのか悩んでいる。取り敢えずあの黒いモヤから船頭さんを遠くへ離し、これ以上狙わせない為にも悪魔たちがいないとはいえ力は十分に働いているので館へと逃げ込むしかないとなる
すると後ろから何かが物凄いスピードで迫ってきているのに気づき、船頭仲間たちが二十四番を庇って「早く館へ行って下さい!」と言ってくれたのでそれに甘えて館へと走り出す二十四番。そこで彼らとの最後の会話になるとも知らずに
追っ手からなんとか巻いて館へと逃げ延びた二十四番だったが、悪魔たちがいない今どうすることも出来ないので取り敢えずはマモンの部屋へと船頭さんを連れて行ってはマモンがいつも座っている大理石の台座の前に船頭さんを横たわらせる。幸いなことにこの館には滝壺から汲んでいた水が置いてある為、それを急いで取りに行きそれでなんとか船頭さんを延命しようとする。あとは悪魔たちがこの異変に気づいてここへ戻ってくるのを祈るしかない
二「死ぬんじゃねぇぞ船頭…!!」
そして七十二番たちが気がかりだったので船頭さんをここで眠らせて、自分も館から出て元来た道を戻っていく道中…先程まで一緒にいた船頭仲間二人が死んでいるのに気づき全身に悪寒が走る二十四番。
「ごめん…。あとで戻ってくっから…」
二人の遺体に謝ってから七十二番たちがいるであろう方向へと全速力で走り出していくも、目の前に広がる光景は地獄のようなものでしかなかった。「そんな…」と絶望した二十四番は、死んでいる罪人たちや船頭仲間を目にしながらある方向までその死体の山の中を突き進んでいく。そして大きめの石に座り込んでいた黒いモヤの目の前には七十二番が倒れ込んでおり、それを目にした二十四番が怒りで震え上がる。
二「なぁ船頭…。俺もようやく大切な人たちを奪われる者たちの気持ちがようやく理解出来たよ…。最後の一人になるまでそれに気づけないなんて、ほんっっとに俺たちは愚か者だよな…。今まで悪かったよ船頭…。もうこれからはお前には何も言わない。何も言えない。高見沢も…この気持ちの狭間で苦しんでいたんだよな…。本当にごめん…。罪人たちも……そうだよな…十年前も…俺たちのせいで全員……。ごめん…みんなごめん…」
?「立ち向かってくるというのか?この光景を見ても」
二「俺が立ち向かわなきゃコイツらの無念は晴らせねぇだろうがッ!!」
二十四番が立ち向かうものの、やはり敵わず敗北してしまう。戦闘シーンは書かない
?「コイツもか…。この男も自分自身の魂ではないのか…。不思議な奴らだ」
マモン「起きろ。目覚めよ坂崎」
船頭「……ぅ」
マモン「何が起こっている」
船頭「マモン…様…?」
船頭さんが目覚めた時、目の前にはマモンがいて体を起こしては「あれ、俺そういえばなんか体ぶった斬られたんじゃ…」と言いながら自分の体を見つめるが、マモンが治癒してくれたお陰で元に戻っている。
船頭「私にも何がなんだか…。なぜここにいるのかも分かりません…」
マモン「私たちも今しがた戻ってきたところだ。この島に人間でも悪魔でもない侵入者を我々は許してしまったらしい」
船頭「人間でも悪魔でもない…?」
マモン「行くぞ、坂崎」
船頭「は、はい」
マモンに連れられて外へと行くも仲間が二人息絶えているのを知り動揺する。どうにかしようとするも、マモンに「今することか?」と問われてしまえばマモンについて行くしか出来ない
暫く歩いていると、向こうの方から何かが歩いてくる
マモン「待て坂崎」
船頭「しかし…!!」
マモン「奴は死神だ。無闇に近づくとその命、今度こそ全て狩り取られるぞ」
船頭「死神…!?」
そこでようやく被っていたモヤモヤしたフードが外れたかと思うと、そこには髑髏姿の死神がいる
マモン「なぜこのような悪魔が統べる島で貴様のような冥府の神が居座る?」
死神「呼ばれたから来たまでだ」
マモン「我々の島だ。今すぐ出ていけ」
死神「……。そうか、お前か。だからあの男たちは死なずという訳か」
船頭「…?」
死神「どうりで狩り取れん訳だ。他人の器に他人の魂が入っているなんて想像すらしていなかった」
船頭(二十四番と七十二番のことか…?)
マモン「出ていけ。お前のような下賤な神が来るような場所ではない」
死神「その男の命をくれたら帰る」
マモン「…私の可愛い哀れな使者を奪い去ろうというのか、死神よ」
船頭「マモン様…?」
マモン「貴様は今七つの大罪である我らを怒らせた。我らが裁くはずだった人間たち、そして他の船頭たちをよくも貴様は…」
船頭「…?マモン様、なにを仰って…」
マモンの合図により、他の悪魔たちもこの場に一斉に集まり、元の姿に戻った悪魔たちによって一瞬で消え去る死神。ほんの数秒の出来事すぎて呆気に取られる船頭さんだが、悪魔たちが勝手に歩いて行くのでその後を黙ってついて行く
そして目的の場所までやって来ると、その悲惨な光景に開いた口が塞がらない船頭さん。罪人たちや仲間、そして二人の罪人が倒れているのを目の前で見てもどうにも出来ずにいる。こんな惨状になったのは、さっきの死神のせいだと知り一人一人に目をやり謝りながら二人の罪人の前までたどり着き膝から崩れ落ちる
船頭「俺は十年前からなんにも変わってねぇなぁ…!!また……また同じことの繰り返しかよ俺は!?何度人の命を奪われれば気が済むんだよッ!!」
号泣している船頭さんの前にマモンがやって来ると、船頭さんはマモンに泣き縋る
船頭「お願いです、マモン様…!!どうか私を…私を殺して下さい…!!また大勢の命を犠牲にしてしまいました…!こんな奴がこの仕事を続けていい理由になどなりません…!これが私の罪なのです…!許されるものだなんて思ってなどおりません、今すぐ私の命で詫びる以外方法が見つからないのです…!!」
マモン「貴様の命は私のものだと言ったはずだ。これは契約だ、勝手な真似は決して許さんぞ坂崎」
船頭「だけどもう耐えられません…!!いっそのこと殺された方のがどれだけ楽か…」
二人で言い合いをしていると、目を覚ました七十二番が「マモン…船頭を許してやってくれ…」とか細い声で唐突に話し出す
船頭「生きていたのか…!?」
七「この命…お前のものだったお陰で、魂は奪われんかったみてぇだな…。ま、生き残ったのは俺と桜井の二人だけしかいねぇらしいがよ…。十年前と全く同じ…。俺と桜井と船頭、またこの三人だけしか生き残らなかった…。俺たちは何度同じこと繰り返せば済むんだろうな…ほんと」
船頭「お前たちが無事なだけ俺の心はほんの少しだけ救われる…。生きてくれていてありがとう…」
七「生きてくれていてありがとう…か。お前からそんなセリフが聞けるとはな…。ホント、視野と心が広くなったな船頭…」
船頭「七十二番…」
七「なぁマモン…。この船頭のことがだぁい好きっつーならよ…、俺と桜井の魂…コイツに返してやってくれないか…?もうこれ以上は船頭を不幸にさせないでやってくれ…。あと数年の命というならば、もうこの場所や仕事から解放してやってくれ…。もう船頭に心の傷を負わせたくない…。もう人が無意味に死ぬところは見たくない……」
マモン「ならん。坂崎の命は私の意のままだ。貴様のような穢らわしい罪人の話に耳を傾けるとでも思ってるのか?」
二「ったくテメェはよぉ…いつまで経っても変わんねーなぁ…」
船頭「二十四番…」
目を覚ましてゆっくり喋り出す二十四番
二「こっちはこんな船頭の姿見てらんねぇんだっつーの…。しかもこんな精神状態じゃあ、仕事だってままならねぇだろうが。もう船頭は十分すぎるくらい頑張ったよ…。ここから解放させてやってくれ…。お願いだマモン…」
船頭「お、おい…!そんなことしなくて結構です、マモン様!全ては私の責任です、どうか私一人で罰を受けますのでコイツらだけは見逃してやって下さいませんかッ?」
マモン「…選ぶがいい、坂崎」
船頭「えっ?」
マモン「この罪人二人をこの惨事の後片付けを終えたのち、その魂をお前へと戻しお前は永遠に私の元で働き続けていくのか。それとも」
船頭「……え?」
七「この…悪魔めッ…」
二「船頭、耳を貸すな…!マモンの言いなりになんかなるな…!!」
船頭「で、でも……」
悩んで考え抜いた末、船頭さんはマモンの元で永遠に働き続ける方を選ぶ。どっちにしろ絶望しかないマモンの二択に、怒りしか覚えないが自分たちが何か出来る訳もなく、マモンに治癒して無理やり回復させられたのちこの惨状をどうにかしろと一言吐き捨てられ、悪魔たちはこの場から立ち去ってしまう
二「船頭なんでお前…!!」
船頭「ごめん、でももうこうするしか…」
七「なんでお前はいつも不幸になる方を選ぶ…!?もうお前は苦しまなくったっていいのに…!苦しむなら俺と桜井の方だろ!?なんにも罪を犯していないお前がなんで……なんでッ…!!」
船頭「ありがとう、七十二番。でも、もういいんだ。…これが俺の罪なんだから。また裁きを終える前の罪人たちを死なせてしまい、また仲間を……全て失ってしまった…。これのどこが俺の罪じゃないって?言い逃れ出来ないだろこんなの…!」
七「船頭…」
船頭「昔の仲間の魂はここに眠っているのだけがせめてもの救いだったのに…。でも今回は違う…、死神に魂を狩られたせいでもう魂はここにはいない…。もう戻ってこない…」
二「……。」
船頭「仲間の体も罪人たちの体も…きちんと弔ってあげよう。一人残らず、きちんと埋葬してやらなきゃ」
七「罪人たちは冥道の窯へやるのか…?」
船頭「いや、違う。裁きも下されなかった罪人たちを勝手に窯へと葬る訳にはいかない。ちゃんと本土へ返そう。みんな、全員」
二「…分かった」
この日は遺体を全部回収して、出来る限り綺麗にしてあげてから一人一人丁寧に白い布で包み込んであげる。次の日の早朝、遺体は全て戻されることとなる。今日は一旦それぞれ疲れを持ち越さない為にも自分たちの家へと戻る
次の日、遺体は全て舟へと積まれてもう一度海を越えて本土へと戻すこととなる
船頭「向こうの人たちには連絡してあるから、体は全て回収してくれるらしい」
二「お前これ、どうやっていっぺんに運ぶんだよ?」
船頭「…考えたんだが、俺一人じゃとてもじゃないがムリだから……お前たちが舟を漕いで〝船頭〟をしてくれないか?」
七「えっ…?」
船頭「悪魔たちには予め許可は取ってある。だから…お願いだ、二人とも。みんなを運んであげて欲しい。帰してあげる為に」
二「本当に俺たちでいいのか…?」
船頭「うん。なんてったって俺はお前ら二人のことを信頼してるからな」
七「船頭…」
船頭「少し舟を漕ぐ練習をしよう。今日は波も怖いくらい穏やかだし、お前たちならコツを掴んで簡単に操作出来ると思うよ」
二「分かった…」
練習をしてから遺体の数を確認したあと早速舟を出す三人。薄い霧が立ち込めているが、船頭さんは気にせず先へと突き進んでいく。そしてその霧が晴れてきた頃、目の前に広がるのは見覚えのある寂れた港。案外島と近いんだなと呟く二十四番だったが、船頭さんが「あの霧があの島を隔絶して姿を見せないようにしてあるからな。だから案外本土とは近いんだよ」と答えてくれる。
そして無事港に着いた三人だったが、向こうの人たちが何人か浜にいて船頭さんに声をかけてから遺体を回収していく
「坂崎さんだけが無事だったんですね…」
船頭「あぁ。他の仲間はみんな死んでしまったよ…。また」
「…それよりこの二人は誰ですか?」
船頭「あ、あぁ…コイツらは罪人だよ」
「裁きを逃れた罪人ですか?」
船頭「いや違う。訳あって生きているけどコイツらは十年前、反乱を起こしてあの島から逃れようとした罪人の主犯格だよ」
「えっ…!?あの時の罪人がコイツらって訳ですか…!?」
船頭「そうなんだけど、もう責めないでやってくれないか?コイツらも今回のことがあって自分たちの犯した罪の重大さも、仲間たちが死んだ悲しみ、救えなかった大勢の命に嘆くことが出来るようになって改心してるから…。コイツらもコイツらで深く傷ついてるんだ…、だからお願いだから責めないでやって欲しい…」
七「船頭…」
「は、はい…分かりました。今回のことは異例中の異例でこちらも対応に追われてバタバタしているところなので、あまり長い時間取れませんのでこちらも失礼します」
船頭「よろしく頼んだよ。みんなを…帰してやってくれ」
「はい、分かりました」
遺体の引渡しも終わったので、二人が「帰るんだろ?」と船頭さんに尋ねてみせると船頭さんがほんの少し微笑みながら「すぐそこにコンビニあるからちょっと寄ってから帰ろうか」と提案してくるので、そのあとについて行く二人。コンビニに着き、好きなもん好きなだけ買っていいよと口にする船頭さんは酒やらお菓子、おつまみにホットスナック、スイーツと本当に好きなものを好きなだけ買ってから舟へと戻り再び島へと戻る
島へ戻り悪魔たちに報告してから、もう今日は特に何かすることはないので「俺の家来いよ」と二人を誘って自分の家へと招く船頭さん。一旦着替えてから船頭さんの家へ来た二人とリラックス状態の船頭さんは、先程買ってきた食べ物をテーブルに広げて三人だけの時間をつくる
始めこそは笑って話していたが、次第に酒も入っていくと涙が止まらない船頭さん。そんな船頭さんの姿を見て二人はとあることを思うことになる
二「お前の名前の幸は、きっと幸せになる為につけられた名前だ。もう自分を責めて自分をこれ以上不幸にしようとするな船頭」
船頭「ははっ、よく言うよなぁ〜…!昔あんなにも俺の名前をイジってきては俺を不幸にさせたいだとかなんとか言ってたのに…!やめろよぉ…、そんなこと言うなよぉ…」
七「ウソじゃねぇ。俺と桜井は本気でそう思ってる。船頭はなんで…自分が不幸になる方へ突き進んでいくんだ?」
船頭「それが俺という生き物だからでしょ…。生まれながらの不幸を背負った男なんだもん」
泣き潰れた船頭さんをベッドへ運び、二人はマモンのとこへ会いに行く。もう一度マモンに船頭さんを解放してあげてくれと頼み込む
二「俺たちの命を返せば船頭はあと何年生きられる?」
マモン「お前たち二人合わせて二十年分の坂崎の魂を消費したのでな、残りはせいぜい九年か十年といったところだろう」
七「ならその十年だけはアイツが心穏やかでいられるように暮らして欲しい。だから船頭の安寧を保証してくれ」
マモン「その見返りはなんだ?」
二「俺たちがここに残る…。お前の好きなだけ」
マモン「死して尚解放されぬと思った方がいいだろうな」
七「それでもいい。俺たちがここに残れば船頭は少しくらい救われるんだろ?だったら…俺たちはアイツの為に自分の身を犠牲に出来る」
二「アイツをもうこれ以上不幸にしないでやってくれ」
朝になり、自分がベッドに寝ていることに気づき着替えて罪人二人の家へ向かうが二人がどこにもいないことに疑問をもちつつ館へと向かう。するとそこにはマモンの部屋に二人はおり、他の悪魔たちも並んでいる
船頭「お前ら何を…」
マモン「坂崎、お前を解放してやろう」
船頭「え?」
マモン「代わりにコイツらがお前の分まで永久にこの島で働くそうだ。この身が朽ち果てるその時までな」
船頭「なっ…!?話が違うじゃないですか!それになんでお前らが…!」
マモン「お前の魂は返してやろう」
船頭「そしたらコイツらは…」
マモン「ただの私の人形だ。意思のない、この島で働き続け我ら悪魔にこき使われるだけの人形になるだけだ」
船頭「そんな…」
マモンの術のせいでどこからともなく現れた金の鎖に縛り付けられる二人だけど、抵抗することなく「自分たちが永久にここで働く」と告げる。それに対してダメだと反対する船頭さん
なんやかんやあって二人の命を船頭さんに返し、船頭さんは解放されることとなる。罪人二人も永久に働かされることはないがその命は今日限りだと告げられてしまう。残りの十年と生きていく為の金銭面も全て保証される。そして二人の寿命は今日の日没までと告げられる。
マモン「二十四番、七十二番。貴様らの罰はこの島での死だ。もう二度とこの判決を覆すことは認めん。本日の日没までが貴様らの寿命だ」
二「分かった」
七「異論はない」
船頭「マモン様…!今はまだ船頭候補もままならない状況で本土の方でも混乱している状態です…!コイツらの死はどうかこの状況が回復して体制が整ったあとでもよろしいのではないのでしょうか…!?私一人ではとても……」
二「船頭。もう俺たちはいいんだよ」
七「お前の魂、もうこれ以上は使えない。たったの十年しかないんだから、俺たちを延命するとお前の魂が削られていっちまうからもう俺たちはこの魂は使わない」
船頭「でもッ…!」
二「命をムダにするな船頭。俺たちも人の命の儚さや重みをこの島でお前と生きてきたからこそ嫌というほど知れた。ありがとう」
七「俺なんかホントは生きてちゃいけない人種だったのに…。生かしてくれて、そして俺らの大きな罪を教えてくれてありがとう船頭」
船頭「っ…!」
一応悪魔たちに礼を言う罪人二人。そのあとは三人で館から出て最後の仕事をする
いつも曇り空だが、それだと日没が分かりにくいので今日だけは悪魔たちが力を使って晴天にしてくれたので久しぶりに青空が広がっている。晴天の下、普段通りの仕事をこなしていくが罪人がいる訳でもないので案外すぐに終わってしまう。なので三人でのんびりと過ごす
七「俺たちの体は冥道の窯に捨ててくれ」
船頭「……、」
二「俺たちは罪人だ。さっきマモンが俺たちに判決を下したんだから、最後くらいお前は自分の仕事を全うしろよな」
船頭「だけど……」
七「大勢の罪人たちが死ぬところを俺たちは見てきた。俺たちだけが普通に埋葬されていい訳がないだろうが」
二「約束だからな船頭?…お前の手で俺たちを窯の中へ落としてくれ」
船頭「……分かった」
日没の時間が迫ってくると、二人の罪人の力が段々と落ちていきそんな二人を見た船頭さんは今にも泣きそうになりながらも二人を家へと運んでいき、二人をベッドへとそっと降ろしてあげる
今にも眠りにつきそうな二人に対し、船頭さんは泣きながら感謝の言葉を告げる。そんな船頭さんを見ていた二人も泣きながら船頭さんにお礼の言葉を伝えたあと、窓から見えていた夕日が完全に沈んだと同時に二人は息を引き取る。そして魂が元の場所に帰る。二人に最後、坂崎と名前を呼ばせたい
泣き明かす船頭さんは、二人の住んでいたこの家で今日は無気力に過ごす
次の日、二人の体を丁寧に白い布に包み込みリヤカーで二人を運び、窯の前までやってくる。二人の体を窯のてっぺんまで運んでいき、最後の別れの時間となる
船頭「二十四番…、この数日間いつものあの嫌な目付きなんかじゃなくて、人を思いやれるような優しい目付きになっていたこと忘れないからな…。お前は多分、この島に連れて来られるほど酷い罪を犯した訳じゃなかったのに…運が悪かっただけなんだよな、きっと。そりゃ逃げ出したくもなるよな…、人を欺く力を持っているお前なんだもん、俺たちを騙せはしたとしても、人を殺すようなそんな惨いことが出来るような奴だなんて俺は思ってなかったよ…。子供が好きで、子供の為ならなんだって出来るお前なんだから、違う道を歩んでいればお前はこんな場所に来ることもなかったのに…!」
船頭「七十二番、お前もこの数日ずっと穏やかな目で過ごしてくれていたよな…。それでさ、言い忘れちまったけどお前の話し方……この三日間、普通の喋り方してくれてたよな…。お前の変な独特な喋り方、自分の本心を隠して人に読み取られないようにしていたって以前言ってたけど…最後の数日間とはいえ、お前は俺にずっと心開いてくれてたって意味なんだよな…?気づいてたよ、嬉しかったよ、ありがとう…。お前の罪は元から大きかったし、許されるもんでもなかったうえに俺はお前のことの方が二十四番よりも大嫌いだったけど…、あの二十四番の事件以来お前が改心して俺たち船頭側にも寄り添ってくれるようになってくれて嬉しかった…」
船頭「二人とも、こんな俺に十年も着いてきてくれてありがとう。二人がいてくれたから俺も成長出来た。二人が命懸けで俺を助けてくれたことも、俺の為に悪魔たちに向かって暴言吐いてくれて庇ったりしてくれたことも全部ぜんぶ感謝している…。もう少し一緒に生きられると思ってたのにな…。でも俺が少しでも長生きする為に魂を返してくれてありがとう。俺の魂、二人の中にずっとあったから分かるんだ…。二人が俺の中に今でも生きていられるのが感じられるくらい二人が傍にいてくれるのが伝わるよ…!俺の中で二人は確実に生きているって分かるんだもん…!ねぇ…なんで俺はさ、二人が生きている間にこれを言わなかったんだろう…。俺、二十四番と七十二番のこと…もう嫌いじゃないから…!俺の後悔はこれだけだよ…」
いつだって一緒に二人でいた二十四番と七十二番だったので、二人を同時に窯の中へと落としていく船頭さん
「おやすみ…、桜井、高見沢…」
島にただ一人残った船頭さんは、気持ちを切り替えて日々の雑務を一週間ほどこなしているところに新しい船頭候補七人がやって来る。案外手配が早かったなと思う船頭さんは、自分たちの仕事を短期間で全て叩き込ませ、マニュアルも渡して仕事を教えていく。更にその一週間後には罪人たちも運び込まれてくるようになるので、悪魔たちにも会わせて業務を引き継いでいく
かれこれ一ヶ月ほど島に残っていた船頭さんだが、そろそろこの島を離れる時期に差し掛かってきたので悪魔たちにも礼を言うが、まだ時々島まで戻っては新人たちの様子見などをしなければならないのでこれが最後という訳ではない
船頭「マモン様、今まで本当にありがとうございました。私なんかのせいで多くの事件を引き起こしてしまって…」
マモン「いや、何もないよりは暇潰しになっていい。また度々ここへ戻ってくるのであろう?」
船頭「はい、一応」
マモン「そうか。それと坂崎、この先働かずとも暮らしていける程度の金品は用意してあるから持って帰るがいい」
船頭「ありがとうございます」
マモン「お前がいなくなると少しばかり寂しいな、誠に」
船頭「…なぜマモン様は俺なんかをこんなにも気に入っていたのですか?」
マモン「そんなもの、お前が罪人の為に命を分けてやるほどバカで浅はかで最高に愚かな人間だったからだよ。それ以外に理由などない」
船頭「そうですか…」
複雑ともスッキリとも言えない感情の中マモンにお礼を言い、一旦自分の家へと戻って荷物を取りに行く船頭さん。そして隣の家にも立ち寄り、二人が使っていた物などを形見代わりに持ち帰っていく。この家は使ってもいいが取り壊しだけはしないでくれと新人たちには言ってある
そして最後にお墓のある場所まで行き、十二人+勝手に船頭さんが建てた罪人二人の墓石の前でお参りをしてから目の前に広がる海を眺める船頭さん
船頭「みんな、俺だけいつも生き残ってごめんね…。俺だけが帰ることになるなんて…」
そう泣きそうになりながら呟いていると、「そんなことない」と言われたような気がして後ろを振り返ると……幻なのかそこに本当にみんながいるのかは分からないけど、みんなは笑顔で船頭さんに向かって「幸せになれよ」と微笑みかけてくれていた……気がした
船頭「ありがとう…。本当に、ありがとう…」
島を離れる際、新人たちにエールを送りつつお別れ。同じ強欲の罪担当の新人船頭を舟に乗せてから最後に舟を漕ぐ船頭さん。本土に戻ったあと、新人さんにバトンタッチしてから舟が霧の向こう側に消えるまで見送る
以上がmemoしていたものとなります( ᴗˬᴗ)
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