「あ、あの‥」
「どうした?緊張するか?」
お互いお風呂にも上がり、今はベッドの上で二人きり。
幸桜が恥ずかしいと言うので、その要望に応えて電気は薄暗くしてあるだけだが、今日に限って何故か月明かりが窓から差し込んでいる。いつもは曇りの癖にな。
でも‥、真っ赤にしながら俯け気味な彼女はとても愛くるしい。まるで怯えているかのような小動物みたいに、今は小さく縮こまっているようにも見えた。いや、実際に少し丸まってしまっているが。
膝を抱え込むようにしている為、これじゃあ服が脱げない。こういうの‥初めてなのか?
いや、でも彼氏はいた事があるなんて言ってたよな確か。‥てことは、彼氏はいてもこういう情事に関してはあまり関心がなかったとか?
それはそれで嬉しい事だけれど、幸桜が他の男とこういう行為をしていたんだな‥という考えが過った瞬間、心の奥底でズキンと何かが刺さってくる感覚を覚えた。それと同時に妬いてしまっているこのズルい気持ち。
‥いや。でも、今は俺が幸桜を独り占めにしているじゃないか。目の前にいるのは誰だ?
長年想い続けたこの世で一番愛おしい人じゃないか。
大丈夫だ。もう幸桜はどこにも行かない。俺の目の前から消える事なんてないだろうから。あぁ、そうさ。俺たちはこの島で死ぬその時まで一緒なのだから‥
膝を抱え込んで顔を真っ赤にしている幸桜の方へ手を伸ばし、彼女がかけていた眼鏡をそっと外してみせる。眼鏡をベッドの端へと置き去りにしてしまえば、幸桜が突然「‥桜井」と俺の名前を呼んできたので、なに?と返す。
「‥オレ、こういうの‥さ」
「初めてじゃないんだろ?んな事分かってる‥」
「違う!‥‥は、初めて‥」
「‥えっ?」
「何回も言わせるなっ‥!初めて‥なんだ‥。だから‥、その‥」
「でも昔彼氏いたんじゃ‥」
「いたけど‥最後までシてるとは、限らないだろ‥?」
ふと見上げられた幸桜の上目遣い。
その余りにも可愛すぎる彼女の仕草に、ドキンッと大きく鳴る心臓。次第に幸桜の言ったセリフを理解し始めた時、俺の心に残っていた小さなトゲはいつの間にか綺麗に溶けてなくなっていた。
じゃ、じゃあ‥幸桜は本当に‥初めてなのか?
「‥初めてが、俺で良かったのかよ?」
「バカッ‥!さ、桜井が初めてだから‥オレは‥っ」
「幸桜‥」
俺が幸桜の名前を口にした直後、彼女はハッとなっては手で口許を押さえてしまっていた。それもまた愛おしく思えてきて‥‥
俺が彼女を一生をかけてでも守っていきたい。
そう再び心に固く誓えた瞬間でもあった。
口許にある手をそっとどかし、幸桜の手と俺の掌をふわりと重なり合わせてみせる。その行為に幸桜はちょっとだけ不思議がっていたが、彼女と少しずつ触れていく時間を増やしていき、緊張をほぐさせていこう。
数秒重なり合っていた互いの手であったが、幸桜の方から俺の指へとキュッと絡めてくれるこの細くて白い指。‥この手を俺は離さない。離したくなんかない。
だから俺も彼女の指へスルリと絡めてみせる。罪人の俺と‥穢れを知らない幸桜の手。
本来なら引っ付く事なんて愚か、俺は死んでいてもおかしくはない存在だったんだ。だけど‥幸桜、お前が俺を救ってくれた。こんな俺の為にお前の寿命を半分も失わせてしまった。今でも心苦しい。お前は何も罰なんて受けなくても良かった筈なのに‥
「幸桜‥」
「‥桜井、」
コツンと触れ合うお互いの額。
長かったよ、ここまでが。‥本当に。
想いが重なり合うこの時間。もう二度と失いたくない大事な人。この世界で一番に大切にしたい人。
そして触れ合う鼻先がくすぐったい。優しくて強い彼女の澄んだ瞳が俺を捉える。
‥‥幸桜。
「愛してるよ‥幸桜」
「オレもだ‥桜井」
ふわりと重なるのは彼女の柔らかくて甘い唇。
奪いたくても奪えなかったこの唇が、ようやく俺の手の内に入ってくれた。こんなにも幸せなひと時があるだろうか?
俺のこの汚れた手で彼女を穢したくはない気持ちがないと言えばそれは嘘になる。しかし、彼女を想うこの気持ちは紛れもなく本物だ。だから俺は、彼女を壊さないようにするだけ。
「‥んっ、」
一度彼女と顔を離してみせる。そうすれば、こんなにも可愛らしい声が俺の耳に掠めていく感覚がたまらなくて‥また聞きたいという欲求に駆られるのは仕方ない事だ。
綺麗な瞳に映っているのは俺だけという事実。
そして今度は幸桜の方から俺の方へと顔を近づけさせ、また重なり合う濡れた唇。ちゅ‥っ、と軽く落とされる口付けだけれど、これ程にまでキスが愛おしいと思えたのは幸桜だからなのか。
数秒だけのキスだったが、俺の心はもう既に満足すぎるくらいに満たされていた。だって、やっと幸桜が俺に振り向いてくれたから。好きだと認めてくれたから。
ハァ‥っと漏れる彼女の吐息。こんなの初めて聞いた。
「まだ緊張する‥?」
「‥さっきよりかは、マシ」
小声気味になりつつある会話の中、それさえもこの甘ったるい夜を誘うには十分すぎる程の材料。すると幸桜が、俺を見上げては「桜井の声‥もっと聞きたい」なんて甘えてくるじゃないか。
そんな事を言われたら理性が爆発しそうな訳で‥、彼女にグッと心を鷲掴みにされた俺はそこでやっと彼女をゆっくりと組み敷いていく。
彼女を下に寝転ばせつつ、耳許で「俺は幸桜の声が聞きたい」と呟いてみせると、彼女は恥ずかしそうにしては目を逸らしてしまった。‥ヤバい、全部が可愛すぎる。
だからもう一度キスを落とす。今度は唇ではなく額に。そっと落としたキスに、幸桜が「‥口が、いい」と躊躇気味に告げてきた。そう、それを待っていたんだよ。
「可愛い、幸桜」
「‥ばか」
照れ隠しが下手な彼女の要望に応える為、俺は再び彼女の唇へとキスをする。最初は優しく、壊れ物を扱うがごとく‥今度はさっきよりも長い時間の触れ合いで。
ちゅっ‥と触れ合う程度だった唇は、次第に深く移り変わりゆくもの。幸桜に口を開ける勇気がなかったのかは分からないが、中々開いてくれなかったのでこちらから舌を割って入れてみせる。
嫌なら断っても良かったが、俺の侵入させていった舌は難なく彼女の口内へと滑り込んでいった。
ヌルリと絡み合う互いの唾液に触れる舌先。はじめこそは戸惑い気味ではあった彼女の舌だったが、俺が優しく‥そっと絡みつかせると、それに応えてくれる幸桜。そこで何かの糸が切れたかのように、彼女も徐々に積極的になり始めては俺の舌を味わうようにねっとりとした感触を楽しんでいた。
目を瞑りながらの暫しの口付け。口内をかき乱され、くちゅ‥と聞こえてくる唾液が絡まる音。この気持ち良さが頭を段々と麻痺させていく。
「ハァっ‥、さく、らい‥」
「気持ちいい?」
俺の問いにコクンと頷く幸桜の素直さ。いつもは強がってばかりいる彼女だが、今日だけは俺に思いっきり甘えて欲しかった。
きゅっ、と俺の服を握り締めてくる彼女のこの行為‥今はどういう意味が含まれているのだろうな。寂しい、なんて答えは期待してないから。
もう一度幸桜にキスを落とす。そうすると、今度はちゃんと始めから口を開けては俺をすんなり受け入れてくれるこの姿勢が何とも言えないくらい愛おしくて‥
そろそろ俺の理性も危なくなってくる頃だろうな。
ちゅ、くちゅ‥と吸い付く度に聞こえてくる淫靡な音。なのに幸桜は美しいまま。恥ずかしさを心に飼いながらも俺に身を委ねてくれた彼女に感謝しなければならないから。
キスを続けてる間に幸桜を纏っている服をゆるゆると脱がしていくと、ちょっとずつ彼女の身体が強張り始めてきてしまっていた。怖くない、怖くなんかないから俺に全てを任せて欲しい。
一旦キスを終え、寝そべっている彼女に向けて微笑みを向けながら「大丈夫」と安堵の言葉を渡す。
相変わらず真っ赤な顔をしている幸桜だったが、俺の言葉を信じてくれたようで、彼女の上半身はようやく脱がされていく。‥しかし、何故サラシを巻いてるんだ?風呂入ったんだから、別に巻かなくても‥
とは思いつつ、仕方ないよな‥なんて心で独り言を呟いてはサラシに手をかけた。
そしてするり、スルリと何重にも巻いてあったサラシが次第に消えていくこの感覚。ブラジャーだと取ってしまえばすぐに胸が見えてくるのだが、サラシだと‥なんかこう、ドキドキ感が増してくるな。
キツく巻かれてあったサラシがようやくあと一巻きという所まで来てしまえば、幸桜が小さく深呼吸を繰り返しているのに気付かされた。
大丈夫‥。大丈夫だから。
「‥‥っ、」
「‥幸桜の胸、可愛いね」
「う、うるさい‥!」
本心を言ったまでなんだけどな。
下唇を噛み締め、俺と目を合わせようとはしてくれない幸桜。‥触ってもいいのかな?
つつっ‥とお腹の辺りから指を這わせるように、そして彼女の身体が少しでも敏感になってくれるようにとちょっとした準備。ヒクンと僅かに跳ねた身体。
アンダーバストから徐々に近付けさせていく指は、やっと胸の先端まで来ている。しかし今ここでは触らない。焦らしてあげるのだから。
バストトップの周りだけをスルスルと指先だけ撫でさせてみせると、幸桜のハァ‥ッという吐息が聞こえる。脚をモゾモゾ動かし、何かを我慢しているかのような態度。
ここでようやく胸を包み込むように、胸の先端だけを避けて掌で覆ってみせると幸桜が早くも物欲しそうな表情を浮かべさせてくれていた。でもまだまだあげないよ?これからどんどん気持ち良くさせてあげるから待ってろって。
やわやわと円を描くように片方の胸だけは揉みしだいていく。そしてもう片方はというと、先程と同じで指先を突起周りに這わせては焦らしに入っている。
「やぁ‥ッ、さく‥らぃ‥」
「舐めてもいい?」
「‥なめ、て‥っ?」
ゾクリと粟立つ全身。
幸桜が俺を欲してくれている。その事実だけでも俺にとっては彼女の全てのように思えてきた。
要望通り、相変わらずチロッと舌先で胸の先端周りを舐めていくと、彼女の口からは普段からじゃ聞けない女らしい声色が溢れ出てくる。
「あっ‥、やッ‥!」
「可愛いよ幸桜‥」
「いじわる‥しない、でッ‥」
「意地悪じゃないよ?これは幸桜がもっともっと気持ち良くなる為にしてあげてるんだから」
「で‥もっ、」
ハァ、ハァッ‥と大きくなってくる呼吸。
ふぅん‥案外幸桜って胸でも感じてくれるんだね。
こんな風にしながら数分彼女を焦らしていたせいで、幸桜が我慢出来なくなってきているようだ。そのせいで「早く触って」なんて言ってくれるこの可愛さが堪らなかった。エロすぎでしょ。
だからずっと焦らし続けていた胸の回りにようやく指を置き、キュッと摘んでみせただけなのに「あぁアっ‥!」という啼いた声。クリ、グリッと捻ってみせたり、押し潰してみせたりと徐々に刺激を与え続けていく。
それのせいでまたより一層幸桜の口から出てくる声。
「ぁ‥やっ、‥!さくら‥ぃ!、もぅ‥舐め、て‥ぇ!」
「舐めて欲しいの?幸桜はエロいんだな」
「ちが‥っ、ぁあッ!?」
ちゅくッ、とわざとらしく音を立てながら彼女のバストトップを口に含んでみせた途端に、艶めいたこの声色が部屋に響き渡っていく。
舌で突起部分を包み込むようにしてみせたり、小さな割れ目を重点的に攻めたり、時には甘噛みしながら彼女の反応を楽しむ。その度に「やッ‥、あ、っ‥!」などと喘いでくれる幸桜。俺に感じてくれて嬉しいよ。
我慢を重ねてしまっていたせいか、幸桜の目には涙がうっすら浮かべられており、まるでもっと舐めてとねだるような表情。それに俺の頭を軽く抱え込んでは脚をくねらせ、求め縋ってくる彼女の態度が一々俺の理性を一つずつ壊していく。
身体に籠る熱。吐き出されるのは熱い息と俺の名前。
「幸桜っ‥、ごめん‥。俺、我慢出来なくなってる‥」
「我慢‥しないで‥ぁッ‥!もっと、‥もっと桜井‥のが欲しい‥よぉッ‥」
「っ‥、幸桜可愛すぎるだろ」
「やぁアあっ‥!あっ、ぁッ‥きもち‥ぃ‥!」
溢れてくる幸桜の情欲と抑えが利かない俺の霞んだ頭。
もう‥‥止められない。
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