昼間の事があって何となく幸桜と顔が合わせずらいからどうしようとか思いながらもいつものように夜食用の弁当を作ってしまった。
仕方ないから今日は高見沢に頼もうと思っていたらあいつに絶対に行かないと突っぱねられてしまった。
行かない理由次第では行ってやっても良いと言われたがなんだか正直に言う気になれなくて。
幸桜が今日は俺と顔を合わせたくないみたいだからと幸桜のせいにしてしまった。
高見沢はニヤリと笑うとそれだけ?と聞き返してきた。
「桜井ぃ。船頭は今ごろ落ち込んでるよぉ」
お前に何が分かる、と言いかけてやめた。
不意に真剣な目付きになった高見沢に真っ正面から見据えられたから。
こういう時の高見沢の目は反らしたいのにそれを許してくれないくらい強い目をしている。
「周りの為に自分の気持ちをコロす事も時には必要だけど。ここには桜井が気持ちのまま行動して迷惑かかる人間なんて俺くらいなんだよ?」
こいつ、何が言いたい?
「その俺が許可してやる。たまには気持ちのまま行動してみろよ。桜井は気持ちを抑え過ぎだ。だから行き場を無くして罪人になったんだろ?」
……高見沢にはちょっとだけ話した事がある俺の過去。
確かにあの時にもっと運命に抗っていれば詐欺師にはなっていなかったかもしれない。
そう思った事もある。
だけどあの時の俺はあの人が傷つく事を分かっていて運命に抵抗する事はできなかった。
大切な人が傷つくなら自分が傷ついた方がいい。
それは今も変わらない。
今の俺には自分より幸桜の方が大切で。
ついでに高見沢が傷つくのも嫌だって思うくらいには大切だとは思ってる。
「残り少ない人生、また同じ事を繰り返すのか?」
「……お前に、何が」
「桜井の気持ちは分からないけど。少なくとも桜井が今いっぱいいっぱいな事と今日、桜井が船頭の為に用意したおやつが無くなってる事は分かるよ」
反論するためにやっと絞り出した言葉は高見沢にサラリとかわされてしまった。
幸桜に拒否された後、やっぱり何かちょっとでも食べてから仕事に行って欲しいと思って冷やしお汁粉を作っておいた。
それを知るはずの無い高見沢が気づいていたのに何度も冷蔵庫を開けていた俺は無くなっていたことに気づかないほどテンパっていたらしい。
「早く行かないと~お腹を空かせた船頭さんにホントに嫌われちゃうよぉ」
急にいつも通りに戻った高見沢に弁当箱を手渡され反射的に受け取ってしまった。
すると高見沢にクルッと方向を変えられてそのまま家の外へ押し出されてしまった。
じゃあね、と楽しそうに言う高見沢にドアを閉められてしまった。
仕方ないから行くか。
今までになく重い足をゆっくりと幸桜のいる所に向けて進めることにした。
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