高見沢に家を追い出されて決意ができないままさ迷っていたら幸桜が仕事をしている部屋の前まで来てしまった。
でも、どんな反応をされるのか少し怖くて中に入れないでいる。
……俺はこんなにも弱かったのだろうか。
詐欺師なんてやってて危ない橋もそれなりに渡ってきたし捕まってしまった時だってこんなに悩まなかった。
噂の島に連れて行かれて自分の人生がそれで終わりだって知った時だって平気だった。
なのに幸桜の事だけは物凄く臆病になってしまう。
幸桜がたまに照れたように『桜井、助かった』と言ってくれると生まれてからずっと必要とされなかった俺だけど少しは頼られてるのかと思えて嬉しかった。
今、幸桜にすら必要とされなくなったら二度目の人生は俺にとって意味もないものになってしまうとすら思える。
今の俺の世界は幸桜を中心に回っているのは間違いない。
だから。
幸桜が俺をただの罪人として見ているのならそれでもいい。罪人と馴れ合いたくないと言うのならそれなりの距離をあけていよう。
幸桜が俺を死んだ兄貴の代わりにしていると言うのならばそれでもいい。いくらでも幸桜の兄貴のように優しく守って行こう。
幸桜が俺をただの仕事のパートナーだと言うのならきっちり罪人を裁く手伝いをしよう。
今までだって相手の思うような俺を演じてきたんだ。
いくらでも幸桜の思う俺を演じて行こう。
それで幸桜の後ろをついていく事が許されるならば。
……ガタガタッッ!…ダンッ!!
自分の暗い思考に捕らわれていると部屋の中から凄い音がした。
イヤな感覚に突き動かされるように今まで開けるのをためらっていたドアを乱暴に開け放つ。
「…幸桜!!」
床に落ちている書類の束の中に幸桜が倒れていた。
慌てて抱き起こすが返事は無く、血の気のなくなった顔をしかめて苦しそうに浅い呼吸を繰り返している。
やっぱり今日は体調が悪かったのか。
仮眠用のベッドに運びそっと横にする。
倒れた時についたのか腕にかすり傷があった。
こうなる前に気づいて休ませてやれなかった事に少し後悔する。 でも、落ち込むのは後だ。
さて、どうしようか?
「おい、マモン!どうせ覗き見してんだろ!!出て来いよ」
俺は会いたくもないがこの状況をなんとかするため幸桜の主を呼び出した。
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