昼間の仕事から帰ってきた俺たちと入れ違いで幸桜が夜の見張りの仕事に出掛けていった。
正直、幸桜と顔を合わせないことにホッとしている自分がいる。
今日の午後の事だった。
高見沢が急に腹減ったおやつが食べたいって騒ぐから仕方なく仕事を抜けて一度家に帰ってきた。
とりあえず量を食べさせて静かにさせればいいかと思いながら材料を確認する。
基本的に俺が調理するから幸桜が好きそうな物しか仕入れていない。最近は特に食が細い幸桜だからたまにはおやつを作って食べてもらおうと思いこの前、和風おやつの材料は揃えてみたばかりだった。
仕方ないからそれを今日の高見沢のおやつに変更してやるか。
それでも夜の仕事に行く前にちょっとでも幸桜が食べられるおやつにしようとリクエストを聞きに部屋へ行ってみた。
寝てるかもしれないと思って小さくノックをして静かに戸を開ける。
幸桜はベッドの上でこっちに背を向けて丸くなっていた。
「何しにきた」
寝てるかと思っていたのは間違いだったらしい。
背を向けたまま冷たい声で問いかけられた。
「仕事中だろう。戻れ」
「高見沢がうるさいからおやつを作りに来たんだ。幸桜も食べれそうなら……」
「仕事中になにやってるんだ。マモン様に怒られるのはオレなんだ。さっさと戻れ」
いつもならなんだかんだ言っても振り返ってくれるけど今日はこっち見てくれない。
そんな時は何かを隠しているとき。
まさか、起き上がれないほど具合が悪いとか?
「すぐ戻るよ。でも、幸桜。本当に大丈夫か?具合でも悪いのか?」
確かめるために額に手を当てようとして…
パシッ‼
「触るな‼」
幸桜は俺の手を払って布団の中に潜り込んでしまった。
手に残る赤みに幸桜に叩かれたんだと漸く気づく。
「……仕事に戻るよ」
それだけをようやく喉の奥から絞り出すと歩き方を忘れたように重くなってしまった足をやっとの事で動かして幸桜の部屋を出た。
そして今。昼間よりも少しは冷静になった頭で冷たく拒否された理由を考えるが思い付けない。 それともそこまで嫌われる事を気づかないうちにしてしまっていたんだろうか?
いや、体調が悪くて触られたくなかっただけだと思いたい。
正直、今顔を合わせたらいつものように平静でいられる自信がなかった。
幸桜に嫌われて側に居れないのなら俺がここに居る意味もない。
その時は……
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