見た目が変わったらダメか?
…
「……あっ…」
幸桜は目の前の桜井を見て言葉を失った。
桜井も突然の事に頭が真っ白になったらしく動かない。
「ごめん……」
とにかく幸桜はそれしか言葉が見つからなかった。
事の始まりは少し前に遡る。
いつも通り幸桜より少し早く起きた桜井は今から作る朝ごはんのメニューを考えながら身支度を整えていた。
……今日は罪人を向かえに行く日だから少しガッツリ食べてほしいけど。
食の細い幸桜では無理か?せめて腹持ちの良いものにするか。
考えながら毎日していることなのでそれはもう流れ作業のようなもの。
考えなくても体が動く。
髭の手入れをしようとカミソリを手に持ったとき。
おはよう、と幸桜が部屋から出てきた。
おはよう、と返しながら考える。
まだ幸桜が起きるのには早い時間だ。
「もう少し休んでて大丈夫だぞ」
「うん…今日は罪人を向かえに行く前にマモン様の所へ一度顔を出せって言われてたから」
聞いてないぞ。でもそれなら急がなければ。
桜井は頭の中でさっき考えた朝食メニューを簡単に出来るものに考え直す。それと同時に急いで髭も整える。
「幸桜も着替えておいで。その間に準備するから」
言えばうん、と頷いて歩き出す。まだ完全に目覚めてないのか足取りは怪しい。
髭の手入れをしながら鏡越しに様子を見ていたら突然幸桜の足が止まった。
「あ……」
眉間にシワを寄せて何かを掴むように手を伸ばす。
その動きに覚えのある桜井は焦って手を伸ばす。倒れ込むギリギリの所で幸桜の手を掴み自分の方へと引っ張る。
勢いが付きすぎて二人で床の上に倒れ込んだ。
「幸桜!!」
「だい、じょうぶ……ちょっと眩暈がしただけ、だから」
少し呼吸が荒い。
桜井はゆっくり呼吸するように背中をゆっくりと擦る。
しばらくそうしていたら落ち着いた幸桜がもう大丈夫、と顔をあげた。
「桜井、ありが…」
桜井の顔を見た幸桜は絶句した。
幸桜を助けることで精一杯だった桜井は髭の手入れをしていることを忘れていた。
「桜井、顎…」
幸桜に言われて顎に手を当てる。
それで最初のシーンに戻るのだった。
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