戦場のギタリスト
突然目の前に現れて「弟子にしてくれ!」と言ってきた旅人のような格好をした男。
見れば、背中にはギターを背負っているではないか。この男は俺に何を求めているのだろうか。俺は命を落とすような危険な場所でギターを弾いて、歌を歌ってるだけだぞ?
「お前、誰?」
「じ‥自分は桜井と申します!貴方に憧れて旅をしながら弾き語りをしています‥!」
「旅人さん?」
「は、はい!以前、貴方を目にした時から自分の目標が貴方になったのです。命を救う大きな事は出来ませんが、歌を‥歌を歌って人々を幸せにさせる事くらいなら‥」
この男の眼差しは本物だ。
けれど、俺は俺。戦場に出向いて愚かな争いを止めさせるのが俺、“戦場のギタリスト”の役目。
こういう真っ直ぐな意志を持った奴が俺と一緒に居て命を落としてしまってはダメだ。
だから‥
「お前はお前。旅人さんよ、あんたはそのギターと歌で幸せにさせられるんだろ?だったら旅人さんは人々を幸せに、俺は人々を救うギタリストになればいい。目指す場所は違うけど、似たようなもんだろ?」
「‥‥はい」
少し納得いってなさそうな顔をしていたが、何もない空間にコソコソと話をし始めては「分かったよ」と呟くと、俺の方に顔を向けてニコッと笑顔になった。
「ありがとうございます。俺は人々を幸せにします。‥なので、貴方の事を弟子にさせてくれたらまた旅を続けて歌を歌い続けます」
ヘヘっと、悪戯っ子のような愛らしい表情の旅人さん。その言葉に俺が「やだね」と返せば少し傷付いたような表情に変わってしまった。
ちょっと言い方がきつかったかな?
「旅人さん、あんたとは兄弟だよ」
「兄弟‥?」
「あぁ。兄弟になった証として俺と一緒に叫ばないか?ジャムらないか?」
優しく微笑みかけると、旅人さんは満面の笑みで「はいっ!」と元気のいい返事がきた。
「所で君はなんの旅人だ?」
「風の詩の旅人です」
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