旅人桜井さん 「悲しき墓標」
ザクリ、と雑草を踏み潰す靴の底に残る感覚が心地よかった。頭の上には天使と悪魔がぐっすりと眠りこけている。さっきまで高見沢と坂崎が俺の隣で歩いていたので、二人の体力が消耗しきってしまい、力を蓄える為にこうして睡眠を取っているのだ。
二人の案内がなくてもふらふらと歩いているだけでいいので、俺は自由気ままに歩いていた。
ふと何かが気になり、視線をそちらに向けるとそこには寂しそうに石みたいな物体がぽつんと突っ立っていた。「ん?」と思いそちらに足を運ばせてみて、砂埃や蔦が絡まっており、それを取り除くと腰の位置まである大きな石が姿を現した。
「何か書いてある‥。かな‥し、き‥ぼひょ、う?‥“悲しき墓標”って確か‥」
何年か前‥高見沢と坂崎を捜す旅をしていた途中で天使が言っていたような気がする。理由を聞いても上手い具合に逸らされたが、これは一体なんなんだ?
ぺたりと石碑に手を触れさせてみると、俺の中に何かが流れ込んでくる感覚がした。
「なっ、なんだコレ‥!?」
心を負の感情で埋め尽くされた感じだ。ボロボロと涙が流れてくる。苦しい、悲しい。嫌だ。この世の全てが嫌になってくる。死にたい死にたい死にたい死にたい!!
「う‥ぐあぁあ‥!!」
涙が止まらない。意味もないのに流れてくる。やだやだ‥!
「「桜井ッ!!」」
グイと髪を引っ張られ、二人の怒鳴り声がはっきりと耳に届いた。
「バカッ!お前、なんでこんな‥!?」
「悲しき墓標から今すぐ手離せ!」
「嫌だ‥!ここから離れたくない!死にたい!死なせてくれっ!!」
「くっ‥、俺達の力じゃどうにもならん!」
「天使、“高見沢”と“坂崎”に代わって貰うぞ!」
二人の声が憎く感じる。死なせてくれ!俺は‥俺は‥!
「しっかりしろ桜井ッ!!」
ガバッと高見沢に体を揺さぶられると同時に、坂崎が無理やりあの場から俺を遠ざけさせた。しかし、俺の気持ちは収まらず、負の感情に捕らわれたままだ。
二人して俺を抱え上げ、墓が見えない所まで運んで行ってくれたお陰か、少しして何とか落ち着きを取り戻した俺の涙は枯れに枯れていた。
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