罪人たちの舟3
償いの島に着き、舟に乗っていた人々を施設という名の監獄へ移動させる。そこで二日間暮らし、島での作業を徹底的にやらせ、三日目には裁きを下す時間となっている。ま、基本的な三日間の流れは大体こんなもんだ。
その間俺は自分の仕事をしたり、他の船頭と交代で罪人達を見張っていなければならない。裁きの時間は俺の場合はマモン様に付き従い、あの方の言いなりになるだけ。
こんな暮らしをもう何年もやっている。だから、まともな人間というのにはここ数年出逢っていないような気もするが‥俺の仲間が唯一の話し相手だったりもする。世間一般とはかけ離れた生活環境に慣れるのには時間は掛かったりもしたけれど、これは俺が選んだ道だから後悔なんてしていなかった。
罪人を全員牢に入れたのを確認している最中に、またあの髪の長い男が俺に話しをかけてきた。
「ここせま~い」
「黙れ。文句を言う権利等貴様らにはない」
「ひっどぉい。てかさぁ、今時島流しって古くねーか?」
「光栄に思え。こんな伝統的な刑に出逢えたお前は選ばれし人間なんだろうな」
「そっかー」と納得しているのかしていないのか分からない口調で言葉を放つ男。やっぱりコイツの目、すげぇヤダ。見ていると沸々と怒りに似たようなものが込み上げてくるから。
一緒の牢に入っていた見慣れた髭面の男も俺を見て初めてフッ、と口角を上げて笑ってきやがった。‥なんだよ。
「国は何をしているんだ。裁き切れない罪人をこんな島に置いて、人間に代わってわざわざ悪魔様たちが俺らを裁くとはな。こんな笑い話他にあるか?なぁ!」
「黙れと言ってるだろ。聞こえなかったのか?」
「くくっ。では、この二日間をたっぷり楽しもうじゃないか」
なんなんだこの二人は‥
何をしたいのか分からない。普通の罪人なら、必死に命乞いをし、縋って泣いてる奴らが多い。稀にコイツらみたいな思考回路がぶっ飛んでる奴もいるけどさ‥。いや、むしろ何も考えてないとか?それはないか‥
そんな考え事をしていると、鉄格子の間から腕を伸ばしてくる七十二番は、俺の持っていた棍棒を掴み取ろうとしたが、素早くその手をパッと払いのけた。
「触るな!」
「それ、すごぉく大切な物なんでしょー?」
「‥‥。」
気持ち悪りぃ。
ニヤニヤしながら聞いてくる男の問いには何も答えず、俺は眉間に皺を寄せながらその場を後にした。
「二十四ばぁん。楽しもうって何をどうするのー?」
「‥まずはじっくり考えるとするか」
お腹をグッと押す男の口からは、白い粉が入った小さな袋が出てきた。興味深そうにそれを見ていたもう一人の男は、「悪いひとぉ」とからかう口調で言ってくる。
「やるか?」
「俺はそういうの好きじゃないんだぁ」
「あっそ」
「でもハマると気持ちいいもんなのソレ~?」
「そりゃあな。嫌なことなんてぜーんぶ忘れて吹っ飛ぶぜ」
「んじゃあ今だけは忘れられるね~」
「確かにそうかもな」
あの二人が何かを喋っていた声だけは遠くから聞こえたが、何を話していたのかなんて俺には全くもって興味がなかった。
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