罪人たちの舟4
「マモン様、今回の罪人は二十六名です。リストに目を通しておいて下さい」
「そうか。では下がってよいぞ」
「はっ」
言われた通り、俺は広すぎるこの部屋を出てから自分の家へと帰る。
明日からが体力を奪われる仕事が待っている。重労働をさせるのは罪人の筈だが、俺たちだって目を見張っていなければ何をやらかすか分からない凶悪な犯罪者ばかり。仕事中は一時も集中を切らしてはいけない。
毎回、この二日間だけは少しだけ鬱になりそうになってくる。慣れているとは言っても、思いもよらない自体がたまに起きたりもするので、その時の対処に困る。いや、慣れてるけどさ‥
まぁ、大変なのには変わりないって意味だ。
明日も早いからな‥。今日はやる事だけやってすぐに寝よう。仲間達と話し合いをしたかったが、その体力も残ってなさそうだし。
棍棒の手入れをしていると、七十二番が口にしていた事を思い出した。これが大切だって、なぜアイツはそれに気付いたんだ?こんなどこにでもありそうなただの木の棒をしているのに‥。
あの、今にも人を殺しそうな目でも洞察力はあるらしいな。やはり、侮れない奴だ。
それに、あの二十四番もかなり鋭い。確実に知識は他の奴らよりかはあるような雰囲気はするし、俺たち船頭からすればアイツは面倒くさいタイプだ。何から何まで計算し尽くしたような‥全て分かりきっているかのようなあの感じ。
‥‥どうしてあの二人を同じ牢に入れてしまったのだろうか。
少し後悔しつつ、俺はもう気にせずにサッサと風呂に入る事にした。
*
「もう、それ終わったぁ?」
「‥あぁ」
「だったらさぁ、脱獄してみなーい?ここなら簡単に抜け出せそうじゃない?」
「ゲームじゃあるまいし‥。ここは常に見張られている筈だ。逃げても周りは海に囲まれているからムリに近い」
「へーきへーき。舟盗めばいいんだし」
ヘラヘラとしている長髪の男に対し、もう一人の男は呆れ気味な表情をしている。しかし男は再び口を開く。
「でもさぁ、あの船頭相当強いよな」
「それ分かる」
「アイツ、多分俺の事嫌いだぜ。あの顔見てると堪らねぇ」
「お前、そういうの好きそうだよな‥」
「人が苦痛に悶えて泣きながら許しを縋る奴がだぁい好き。それが特に女なら文句はない」
それを黒髪の男は「流石だな」と怪しい笑みを浮かべながら聞いていた。
二人が何を企んでいるのかは、まだ誰にも分からないし、知られてはいけなかった。
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