罪人たちの舟 - 6/32

罪人たちの舟5

 

次の日の朝、罪人達を施設の裏に集めて誰一人として欠けている事がないのを確認すると、早速作業に取り掛かって貰う。

この島はあまり整備がされていないので、罪人たちが土木作業等をして島をより住みやすく、移動が出来やすいようにして貰う。住むって言っても、俺たち船頭と悪魔たちしか住んでないけどさ‥

 

この島はかなり広い為、やって貰う作業は尽きない。しかし、こんな荒れた場所だけれど神聖な島でもあったりするから、常に綺麗な状態でなければならないのも事実。

先程言ったように男は土木作業をし、女は畑仕事をさせる。自分達で食う食材は自分達で育て、自分達で収穫して貰うのが当たり前だ。あとは施設内を徹底的に掃除させたりと‥そんな感じだ。

 

そして、サボっていたりする奴がいないかを見張るのが俺ら船頭の仕事。さっきも立ち話をしていた奴らを注意し、棍棒で背中をつつきながら作業場へと戻し、作業を続けさせる。

 

「‥ん?」

 

なんだ、またあそこで喋ってやがるぞ?

数人固まって喋っている奴らがいたので、そちらへと近付いて行く。

 

「‥‥という訳で、よろしく」

「あぁ、了解」

「分かった」

 

俺が近くまでやって来ると、それと同時に皆が散らばっていったが、あの黒髪の男だけがその場に残ってこちらを窺っては「どうも」と軽い挨拶をしてきやがった。俺のことナメてやがんな、コイツ。

 

「さっきから何をしている?」

「‥‥サボっていても怒鳴りもしない、体罰を与えもしない。ここはおかしな場所だ」

「クズとは言っても人間だからな。人生終わりに近い日くらい、お前ら罪人だって余裕を持って過ごしていたいだろ?」

 

そう返答すれば、「一理ありますね」と木にもたれかかりながらダルそうに呟く男。

 

「船頭さん、アンタこんな仕事してて頭狂ってこないの?人が目の前で死ぬ仕事なんて」

「生憎、俺は人が死ぬ場面を見た事がなくてね‥。裁きを受けた人間は島の中央にある“瞑道の窯(めいどうのかま)”という場所に身を投げ出して貰うんだよ。ほとんどの罪人がそこに飛び込んで逝く運命だけどな」

「へぇ‥。じゃあ、俺もそこに逝くのかな?」

「それはマモン様次第だな」

 

もたれていた体を動かす男の背中を棍棒でグイと押し、自分の作業場所へと戻した。

 

「もう少し貴方と喋っていたかったのに」

「俺からしたら迷惑なだけだ。ほら、サッサと仕事しろ」

「‥分かりましたよ」

 

鋭い目付きを受け流し、俺はここから離れてまた他の場所へと見回りに行く。

‥しかし空を見上げても曇りの日が多いこの場所は、いつも雨が降りそうだ。多分、強力な悪魔たちのせいで天候が狂ってるのかもしれないけれど、実際の所は不明だ。

今回の罪人は全部で合わせて八十人だったはず。その内二十六人は俺が担当している強欲に支配された犯罪者たち。人には欲がある。それは俺だって同じだが、その一線を超えてしまったら後戻りは出来ない。

 

そんな犯罪者達を見張るのに苦労するのなんて当たり前に決まっている。だが、これが俺たちの仕事なのでやるしかないけどな。

 

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