罪人続編 番外編弐 - 11/32

いーつの日も~

 

妙にソワソワしている二人が仲間から借りた服で体を包みこめば、これまた違った二人の雰囲気がそこの空間に現れた。

一昨日マモン様に本土へ帰る許しを得てから、この日の為に準備されていた用意を持ち上げた彼らは今から島を出る。まだ朝の六時だが、早めにあちらへ行かせてやって、懐かしんで貰いたいと思う‥ので、わざわざこんな時間から出て行く。

それにしてもコイツらが洋服着てる姿も違和感あるな‥。むしろ洋服着て違和感あるって方がおかしいんだが。

二人共とっくに準備はし終わっているようなので、言葉にしなくても目で「行くぞ」と伝えれば二人はこの家から出て行く事になる。たった一日だが、とても長旅になりそうな気がする。

仲間たちが用意して待ってくれていた舟へと乗り込み、俺は他の奴らに「頼んだ」と声をかけた。その返答に頷くみんなの顔がまだ眠たそうだ。

 

「二十四番さんも七十ニ番さんも逃げないで下さいよ」

「ばーか、誰が逃げ出すかよ」

そんな会話をしつつ、舟を沖の方へと押してくれた仲間たちとは少しの間だけお別れだ。まぁ明日の朝には戻ってくるから別に何とも思わないんだけどさ。

 

‥それよりコイツら二人がこれからの事をどう思い、感じるのかが気になる。

俺はいつものようにこの舟を漕いで行く。

ただ、いつもと違うのは二度も同じ罪人を舟で運ぶ‥という事だろう。

俺たちの舟に乗る奴は、あの島までの時間だけ。だがこうして今は二度も俺の舟に乗ってる奴がいる。それも俺が一番大嫌いな二人が‥

 

なんだか現実味がない。

先頭で漕いでる俺の少し後ろに二人は居るはずだが、さっきから会話が一言も交わされていなかった。あまりにも静かなので、逆に気まずく感じてしまうのは自分だけか?二人はやっぱり大人しくしていたいのだろうか。

それとも‥あっちに着いた時の事を頭の中で整理でもしてるのか。

そうだよな‥。八年も離れていたんだ、あれこれ考えてしまうのは無理はない。

‥あ、そういえば。

 

「お前らさ‥左手の焼印、隠せよ?俺のバッグの中に包帯とテーピング入ってるからどっちかで巻いとけ」

俺に指図されたのが鬱陶しかったのか、七十ニ番が面倒くさそうに「へーへー」と適当な返事をしながら俺のバッグの中身を漁っていた。

その後「ほらよ」と言う声が背中から聞こえてきたので、二十四番にどちらかを渡したんだと思う。

はぁー‥と大きく溜め息をついてしまうのは最早俺の癖になりつつある。嫌な癖だ。まだコイツらが俺の不幸を願ってるかのように思えて適わん。

しかし舟はどんどんと進んで行く。わりと穏やかな海の波に流され、未だマトモな会話すらないこの舟の上で漕ぎ続けた。

 

「‥‥あのさ、一旦俺の家に荷物置いてから出掛けるって形でいい?」

「船頭んチに行くのかっ?」

「仕方ねーだろ‥!ホテルとる予約もしてないんだし、てか出来ないし‥今日は俺んチで泊まる事になる‥と思う」

「ん?日帰りじゃねーのぉ?」

「‥マモン様が、明日の朝までに帰って来れば許すって言ってたから‥さ。少しでも長く本土に居たければ俺んチに泊まる‥という風になる」

「ま、まぁ‥別にいいんじゃね‥」

 

渋々といった所だが、二十四番が案外優しい声色で答えるものだからかえって気持ちが悪かった。

もっと否定してくるかと思ってたからさ。

 

「‥にしてもよ、二十四番はどうやって子供たちを捜し出すんだ?」

俺の質問に二十四番が「それな‥」と訝しむような感じでゆったりと喋り出す。

「場所は把握してあるんだ。‥まぁ、こういっちゃ何だが一応こんな俺でもそっちの世界では有名人だったからよ‥、あの島へ連れて来られた罪人共の中に俺を知ってる奴は結構居たわけ。

だからソイツらが知ってる限りの情報聞き出して、お前らには知られないようひっそりと裏ではやってたんだよ」

「そこまで子供に執着するかぁ?」

 

二十四番の今の発言で七十ニ番が怪訝な声を発した。なんていうか‥気味が悪いっていう感想もあるけど、やっぱり引いたりはしない。子供が生きてるかどうか、健康かどうか、どうなってるのかって考えるのは当たり前だしな。

それに、親の代わりといっても二十四番の子供好きの姿を見てしまえば全て納得出来てしまう。どれほど大事に育ててきたのかなんて‥きっと俺には理解出来ないものなんだろう。

「そういう高見沢はどーすんだよ?妹に会いに行くんだろ?」

逆に聞き返される七十ニ番の反応が少し気になり、俺はチラッと後方へと視線を向けるが、七十ニ番は「分からねぇ‥」と曖昧な返事をしてしまう。

 

「会いたいと思わねーのか?」

「そりゃ‥思うけどさ、こんな俺が‥いきなり目の前に現れても、どういう反応するのかが怖くて‥」

「らしくねーな」

「他にも謝りたい人たちが沢山いるしな‥」

「その人たちには会うのか?」

「いや会うつもりはない。どこに居るかも知らねーし、第一あの時の過去は消し去りたいはずだ。忘れかけた頃に俺が現れたとしても、憎しみと悲しみが蘇るだけで何もならない。俺が謝った所でそんなものただの自己満足にしかすぎねーしな‥」

「そうだよ‥な。じゃあ両親には?」

「会える勇気があれば‥」

「‥‥。」

 

口調が元に戻ってやがる。聞かなくても真剣な話をしていた事くらい分かるが、この男が急に普通の喋り方になると胸が苦しくなるのは俺だけなのか。

でも‥コイツはコイツなりに考えてるっぽいしな。

俺はあえて何も口を出さない。本人たちがやりたい事をさせるだけで、それを見届けるのが今回の仕事だ。信用はしているからこの二人が逃げ出したりするなんて事はないと思っているさ。

 

ぼちぼち会話をしながら三十分。

やっと海岸が見えてきた。

「‥あそこは」

「あぁ。あそこな、懐かしいだろ?お前らがこの舟に乗り込む前に待機していた場所だ」

「俺ら全員の出会いの場って訳ねぇ‥」

 

あんまり嬉しくない出会いの場だな。

使われなくなった漁港を閉鎖して、こっそりとここまで運ばれてくる罪人たちが集まる場所。

舟を岸辺の方まで漕ぎ進めると、だいぶ浅瀬に来た所で既に二人は勝手に舟から降りており、手慣れたように舟を岸辺まで運び上がらせていた。意外と大きいので、舟全体を岸辺にあげるのも一苦労なのだが二人が居るのでそれもすぐに終わり、舟を人には見られない場所へとしまい込んだ。

 

まぁ、こんな閉鎖された港に人が来るとは思えないが万が一ってやつさ。

舟から荷物を下ろし、俺たちはこの港を後にした。

 

「あ、お前ら帽子かぶっとけよ?目深にかぶってないと、もし知り合いとかに見つかったら大変な事になるからな」

「帽子‥ねぇ」

バッグの中から取り出したキャップを深くかぶり始める二人の姿が更に新鮮に見えてしまう。‥すっごい違和感しかないんですが。

少し離れた場所に駐車場があるので、そこにいつも放置してある俺ら船頭が使う車の内の一つに乗り込む。しかしだな‥俺は免許持ってはいるが、ほとんど運転しないせいで怖いんだよな‥

 

「な、なぁ。どっちか運転得意な奴いる?」

「はぁ?おめー運転も出来ねぇのぉ?」

「ペーパーですから‥」

「仕方ねーな、俺がやってやるよ」

助手席に座り込もうとしていた二十四番が席を交代してくれて、俺が助手席に座る事になった。しかしコイツだって八年もブランク‥いや、刑務所の中に居たんだろうから軽く十年は運転してない筈じゃ‥‥

 

「お、おいっ‥!ちょっと待て!お前最後に運転したのいつだよ‥」

「うるせぇ。こんなもんカン取り戻せば何とでもなる」

「俺ら殺す気かよッ!?」

「うるせぇな」

後ろに乗っていた七十ニ番にも「やかましい」と言われたが、どーなっても知らんぞ!?俺は知らねーからなぁ!?

 

‥とは思ったが、案外走り出せば普通の走行スピードで、特にこれといった変な運転する訳でもないのでひとまず安心して俺の実家まで辿り着いてしまっていた。とちうより今気づいたのだが、コイツ無免許じゃん。

やっぱり次から俺が運転する。

 

車から降りて、開口一番に七十ニ番が「へー、ここが船頭の家ねぇ」と呟きながら一軒家でもある俺の家を見やっていた。

そんな奴らをよそに、俺は玄関の鍵を開けてから「ただいまー」と発しながら家に帰って来た事を伝える。するとすぐ出て来てくれたのはお袋の方で、「あらおかえり。珍しいね、こんな時期に帰って来るなんて」と驚かれてしまったが、俺の後ろに居た二人を目にした途端、更に驚きの声をあげていた。

 

‥まぁ、会いたがってたしな。

 

「もしかして桜井さんと高見沢さん?」

「初めまして。桜井と申します」

「高見沢です」

「このお方たちが幸二のいう犯罪者さんなの?とてもそうは見えないわ~!優しそうな人たちじゃない!」

「はぁッ?」

 

そんなお袋の耳を疑う言葉に、思わず変な声が出て来てしまった俺はすかさず後ろをバッと振り向けば‥‥

 

そこに居るのはまるで別人のような罪人二人だった。

 

目は普通。むしろ本当に優しいくらいだ。な、何だよお前ら‥!そういう目になれるのかよ!?特に七十ニ番に驚愕させられた。

 

「さぁ、あがってゆっくりしていって~」

「お言葉に甘えさせて頂きます」

「お邪魔します」

「‥‥、」

 

あいた口が塞がらないとはこの事か。

。。

この話はここで途切れております、すみません(;_;)

 

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