愚か者たちの正月
「‥‥ん」
目が覚めたらもう正午を回っていた。
向こうで寝てる筈の桜井はベッドにはおらず、俺一人だけがここに置いてけぼり状態か。アイツどこ行ったんだろ。
クルッと部屋を見渡してみるも、ただヒーターが音を鳴らしてこの空間を温めているだけだった。桜井がつけておいてくれたのかねぇ。
「‥‥。」
夜中まで飲み明かしていたせいか、頭が若干フラフラしている。
それに、昨日本土まで帰ってしまっていた船頭たち全員が、俺たちの為にとお酒やら食い物やらつまみやらを置いてくれたから普段よりかは贅沢出来ているからまだ許せるけど‥
何年ここでこんな虚しい正月を過ごさないといけないんだよ、ったく。
桜井と二人で飲み明かした後がそこのテーブルや床に散らばっていた。片付け面倒くせぇなぁ‥
頭を掻きながら長い髪をクシャッと掴んでみせて「起きようかな‥」と思うも、ベッドから出たくない。いつも朝が早いからこういう時しかゆーっくり出来ないからね。
‥しかし桜井どこだ?
「んー‥」
「よぉ、高見沢。起きたか?」
ガチャとドアが開いたかと思うと、そこに現れたのは案の定桜井だった。あぁ、さみぃ‥。早くドア閉めてくれ。
「うっ‥、つ。さみっ‥」
「そりゃあな。外雪降ってるぜ?」
「雪ぃ?この島に雪降るのか?」
「今は悪魔たちも魔界に帰ってるからな。この島にも悪魔の力がそんなに働いてねーから普段降らない雪が降ってるんだろ」
「‥‥だから俺の体力もすぐに回復してないのか」
悪魔たちの力が働いてないせいで、俺たちも歳相応な体つきに戻っちまってるな‥。憎い事に、俺と桜井がこんな歳になってもムダに体力が付いてしまったのもあの悪魔たちの影響でもある。
この島全体がアイツらの力で支配されているせいか、一般人には到底真似出来ない事が俺と桜井にも出来るようになってしまったのは事実。しかし、船頭に鍛えられたお陰ってのも本当だからな?
窓から雪を眺めようとカーテンを開けようかと思ったが、その前に桜井が「外行こうぜ!」と子供じみた誘いをくれる。
え、行きたくないのに‥
「ちょ‥、桜井っ‥」
「いいから。案外綺麗だぜ?」
布団で丸まっていると、俺の手首を掴んでしまう桜井の後に仕方なく着いてく為に、俺は椅子に掛けておいた上着を羽織ってあげた。
しかし、開いたドアの先に広がるのは真っ白な美しい世界。
十年以上ぶりに見る雪はこんなにも感動するのか‥
「はァ‥っ。さみぃよぉ‥」
「さみぃけどよ、すっげー綺麗じゃねーかっ?この島には俺とお前二人だけだし、やりたい放題だぜ!」
「いや‥。遊ぶ気ないよぉ‥俺」
「つまんねーなぁ!雪合戦くらいやろうぜ!」
「お前、子供かよぉ!?」
「なら雪だるま作ろう」
「作ろうって‥、地味に何個か作ってあんじゃねーか‥」
よく見れば五個くらい小さな雪だるまが作られてあった。コイツ‥子供好きな奴だなとは思っていたが、心も子供っぽいんだな‥
船頭が見たら、普段全く笑わないアイツが本気で笑いそうだ。それが想像出来そうな俺に嫌気が差した。アイツが爆笑してる所なんて別にどーでもいいしぃ。
はぁっ、と白い息を吐いて純白な雪を手で包み込む桜井の横顔はキラキラと煌めいている様子。‥うん、俺と違って意外と純粋な部分を持ち合わせているんだよな、桜井って。
寒さで頬や耳に手まで赤くなってしまっていたけれど、心から雪を楽しんでいる桜井に思わずフッと俺らしくない優しい笑みが零れてしまった。
‥ま、少しだけなら桜井の相手してもいっかな。
「なぁなぁ、雪うさぎ作ろうぜ!」
「‥‥。」
コイツ本当に詐欺師か‥?
❄︎
普段ゲスいからちょっと可愛くしてみたらキャラじゃなくなったw
多分この場に船頭さん居たら本気で笑ってたと思う
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