罪人続編 番外編弐 - 13/32

あーしーたーをぉ

 

遠くの方からやって来る七隻の舟が俺と高見沢の視界にボウっと入って来た頃、何故だか俺は妙な寒気が腕の辺りをゾワワと這っていくような感覚に襲われた。

ぶるっと体を身震いし、両腕をさすっているような仕草を見せてしまえば隣に居る高見沢が「どぉしたのぉ?」などと呑気な質問が飛び交ってくる。

どうしたと問われれば、寒気が襲ってきたとしか言い訳が思いつかない。なので、俺は素直に「ちょっと寒気がな‥」と返すと、高見沢は不振そうに「風邪ぇ?」なんてごく普通の返答がまた来た。そうだよな、そう思うのが普通だもんな。

 

だが気分が悪い訳でもないし‥

なんて言えばいいのだろうか。

そうこうしてる間に、あっという間に舟は目の前まで迫って来ていた。ま、考えても仕方がないので俺と高見沢は、流れてきた舟を砂浜まで引き上げる手伝いをする事になった。

七隻の舟をようやく砂浜に引き上げた後、罪人たちが降ろされて船頭の命令によって点呼が行われる。番号を読み上げられていくが、今日は少ない方か‥

 

二十四という数字だけが飛ばされ、約四十人程の数字が示されてそこで点呼が終わった。

いつも思うのだが、こんだけ犯罪者が死んでも次から次へとこの島へ来てしまうシステムが知りたい。そんなにこの国は犯罪者が多いのか?それとも、必要とされてない人間が処分されてるだけ?

‥考えた所で何かが判明する訳でもないので、この考えを無理やり消し去った。

その直後。

再びゾワッと背筋を冷たい冷気か何かが襲ってくるような感覚に捉われた。

 

「うっ‥、」

「ん?おい大丈夫か桜井、具合悪りぃなら帰って寝てろよ」

「いや‥体調が悪い訳じゃ‥ないんだ」

「じゃあなんだよぉ」

「わ、分からねーけど‥凄い視線を感じる」

「視線?」

「あぁ‥。誰かに見られてるような気もする」

「お前そっちの世界では有名人だから、知ってる人がたまたまジッと見てるんじゃないのぉ?」

「‥そうだといいんだがな」

結局は分からずじまい。

俺と高見沢は、罪人たちの先頭を歩いていた船頭の隣まで行き、施設までの道のりを嫌な感覚に撫で回されながらも何とか気にせず辿り着いた。

しかし終始無言だった俺に不信感を抱いたのか、船頭が途中で「どうした?」と相変わらず鋭い目線であるが、そう尋ねてきたので「何でもない」とだけ返した。

「‥そうか」

「今の所、な」

「‥?」

「後ろの奴らがいる前で話せない」

そう俺が指摘すると、船頭はチラッと後ろに並んで歩いてる罪人たちを横目で確認した後、再び前を向いては無言でコクッと頷いた。

そして罪人たちを収容する施設まで着けば、もう一度点呼をした後に二人ずつ部屋という名の牢獄に閉じ込められる。俺たちの時よりは随分マシな内装になったが、不自由なのには変わりない。

しかし俺たちのせいで、昔より厳しく監視や準備が行われてしまっている。反乱なんて多分この島ではあり得なかった出来事だろうから、尚更だ。

罪人たちが振り分けられている間、俺と高見沢はお喋りをしていた。そして罪人を収容し終えると、外に残ってた船頭がこちらを見ていたので奴の傍まで寄って行けば、船頭は俺を見てきては質問を投げかける。

 

「さっきのアレはどういう‥」

「悪りぃな、確信はないんだが俺の事を知ってる奴があの中にいるみたいだ」

「なんでそう思う?」

「物凄い視線を感じるんだよ。気味が悪りぃ程のな」

「視線‥」

そう呟いた船頭が、俺の隣に居た高見沢をジト目で見やると彼がいかにも嫌な顔をして「俺じゃねぇ」と否定を告げた。

 

「気味の悪りぃ視線といえばお前しか思いつかん」

「はぁ?ざけんなよ船頭ぉ。俺の目付きはそんな生温いもんじゃねーぞ」

「知るかよそんなの!ったく、」

こんなやり取りをしている二人を差し置いて、俺は気になってしまっていたその視線の正体を突き止めるべく施設の中へと吸い込まれるようにして歩いて行く。後ろから「おい!桜井っ?」と高見沢の声が聞こえるが、聞こえないふりをした。

 

「アイツ大丈夫かぁ?」

「‥俺らも中行くか。罪人の話し相手してくれるよな?」

「するよぉ。それが俺らに唯一してやれる仕事なんだしねぇ」

二人の会話を背中に、施設へ入るとそこにはまず他の船頭たちが入念にチェックをしており、最後の奴らが収容を終えるとガチャンと錠の落ちる音が静かな建物の中で鳴り響いた。

そしてキョロキョロと見回り、ある牢を通り過ぎた頃だった。

 

「‥マサ兄、だよね?」

 

え‥?

声も出ずにいる俺は、その声にピタッと足の動きを簡単に止めてしまった。

だって‥俺の事をマサ兄なんて呼ぶ奴なんて‥‥

ゆっくりと振り返ってみると、そこに居たのは紛れもなく俺が大事に育ててきた子だった。

 

「なん‥で‥?」

「マサ兄‥」

頭が真っ白になったのは言うまでもない。

 

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