親子?の再会
なんで‥?
なんでお前がここに居る‥?
コイツの存在に気付かなかったのは仕方がない事は言い訳にしかならない?
いやしかし、もう十年も会ってないんだ。成長していた我が子同然のように育ててきた子がこんな場所に来るという思考なんて、この俺には全くもってなかったから。
身体はあの頃とは違う体格になってはいるが、顔はやはり面影が残っている。間違う筈がない、コイツは俺の育てた‥‥いや、育て上げる事すら出来なかった子の内の一人だった。
「お前‥何しにここへ‥?」
「何しにって‥、罪を犯したからこの島へ流されたんだよ。それにマサ兄も何やってるの、こんな場所で?」
「俺は‥」
「‥マサ兄も連れて来られたんだね」
「あ、あぁ。八年も前の話しだけどな‥」
俺の発言で思わず「八年っ?」と不思議そうな顔で俺を見やっている。それにしても、鉄格子の向こう側なのに何だってこんな普通に会話が続けられるんだよコイツ‥
「お前‥何が原因でこんな場所まで流されてきたんだ」
「え?そんなのマサ兄と同じような理由じゃないの?」
「俺が居なくなってからもアイツらは詐欺を続けてたのか?」
「うん。マサ兄達が捕まったから、代わりに育ててくれて詐欺の方法を教えて貰ったよ。だから詐欺をやり続けていたらこの歳で島流しになっちゃった」
「‥‥バッカだなぁ‥お前は‥っ」
本当にバカという言葉以外出てこなかった。
でも‥そうか。俺が捕まってからは、生き残った仲間達が施設に預けられていたこの子らを何とか救い出して育てていたのか‥
その真相を知れただけでも心の底から安堵出来たのは束の間。今は目の前に居るコイツの事を考えるのが先だ。
しかし‥コイツはまだ未成年だぞ?俺が捕まった時は確か五歳かそこらの歳だったよな?
おいおいおい、この国は未成年にすら容赦はしねぇのかよ。
‥いや、知っていた。今までも多くの未成年をこの島で見てきたじゃないか。きっとコイツらと同じくらいの歳だった子達があの窯の中へと飛び込んで行く所だって目の当たりにしてたじゃないか。
その子達をコイツらと重ね合わせて見ていたのは事実。目を背けていたのは俺の方だった。
「はぁ‥」
「どうしたの、マサ兄?」
「どうしたのじゃねぇよ!お前三日後には死ぬんだぞ!?それ分かってんのか!?」
「噂はなんとなく聞いてるよ。神かなにかに裁かれるって。あり得ないよね、そんなの」
「神じゃない、悪魔だ。本物のな」
「それ本当?」
「嘘じゃない。俺は一度‥悪魔に殺されかけたからな」
「じゃあ、何でマサ兄は今生きているの?ここに連れて来られた犯罪者は死ぬんだよね?」
「あぁ、ほぼ全員死ぬな。だが俺ともう一人の‥‥」
そう説明していると、「桜井ぃ」という高見沢の声が耳に届いた。呼ばれた方向に顔を向けると、そこには高見沢と船頭が歩いて来ている。
「‥‥また後で話そう」
「今じゃダメなの?」
「ちょっと厄介な奴が居るもんでねぇ」
「へぇー」
会話を中断させ、俺はこちらに向かってくる高見沢たちの方へと戻って行く。俺を呼んだ高見沢に「なんだ?」と返せば、「罪人のお相手の時間よぉ」と相変わらず独特な喋り方で俺に伝える。
「分かった。なら高見沢はあっちから頼む」
「りょーかぁい」
「船頭もやんのか?」
「いや、俺はマモン様の所へ行って報告して来る。戻ったらやるよ」
「早くしろよ」
高見沢と船頭をここから一旦離れさせ、背中を向けたのを確認してからさっきの位置まで戻ると、「マサ兄、あのメガネの人嫌いでしょ?」と問われたので素直に頷くしかなかった。
「なんで分かった?」
「目が全然違うよ。ていうか誰が見ても一発で嫌いって分かるって。そんな分かりやすいと詐欺師の資格なしだよマサ兄」
「うるせぇな、この島じゃ誰も騙す奴が居ないからもういいんだよっ」
「強がってる」
「あのなぁ‥」
自分が今置かれてる立場を思い出せよな。
しかしな、‥コイツを死なせたくないという心に小さな火が僅かに灯り始めてしまっていた。
どうする‥?やるか‥?
「‥‥船頭」
ボソッと七十二番が隣で呟くと、かなり真剣そうな顔を魅せながら「桜井をしっかり見とけよ」と不気味な言葉を並べてくる。
眉間に皺を寄せ、しかめっ面で「はぁ?」と声をあげると「静かにしやがれ」と言われ、思い切り頭を引っ叩かれてしまった。いってーなぁ‥!
「なんで叩く‥」
「いいか?桜井がさっき話してた相手‥きっとアイツが育ててきたガキだと思う」
「えっ‥!?」
また頭を引っ叩かれる。
「声がデケェ。そういう事だから、今回ばかりは俺も桜井とあのガキを見張るつもりだ。アイツらが何を仕出かすか分からねぇからな」
「えっ‥、てか、何でアレが二十四番が育てた子供だって‥」
「桜井見てりゃ分かるでしょお?」
いや‥分からないんだが。
しかし、七十二番がこんな発言をしてくるなんてよっぽどだろう。彼の言葉を信じ、俺はあの二人を見張るように努める。
けど‥七十二番は辛くないのだろうか。
いつも隣に居て、ここまで信頼し合えるのかと問いたい程仲のいい二十四番を、疑うような目で見るなんて‥
そう口に出そうとした時だった。
立ち止まった七十二番が俺の耳許へと顔を近づけては囁いてくる。
「船頭ぉ、アイツはお前と違って超絶頭のいい詐欺師だからな?今回ばかりは言葉巧みに俺をも騙しに掛かってくるだろうねぇ。‥‥だから本気で気を付けろよ?」
「う、うん」
「‥八年前みたいな悲惨な記憶が蘇る前に手を打つことだな」
「‥‥。」
恐ろしい程に冷めた目付きで俺にそんなセリフを吐いてきた七十二番は、フッと嘲笑うかのような笑みで俺を挑発してきた。
その後は、閉じ込められている罪人の牢の前へと腰を落とし、俺なんかそっちのけで罪人たちに話し掛けていた。
二十四番に気を付けろ‥か。
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