罪人続編 番外編弐 - 18/32

夢を諦めた時ぃ

 

あれからは桜井たちが何か怪しい行動を取る事もなく、二日目がようやく終わりそうな頃だった。

罪人たちは牢の中へ全員閉じ込められ、俺と桜井の仕事は終わりの時間だったので、アイツを呼んで家にでも帰ろうかと思ったが‥あのガキと喋ってるな。もう俺たちに隠す気も更々ないらしいし。

昼間は船頭の訳の分からない一言でイラッとしてしまったが、俺が今持っている感情は嫉妬とかそういうのじゃない。

俺が本気で嫉妬したらどうなるかなんて‥あー‥見せれないけどよぉ。嫉妬で済めば優しいもんだけどな。まぁ、確かに嫉妬に近いものってのは間違いないのかもしれないけど‥

 

なんて言えばいいんだろうな。

せっかくここまで八年間生きてきたのに、あんなガキだけの為に桜井が死んで‥それで死んでも尚悪魔たちに許されないままアイツがこれからどんな目に遭うのかと考えるとやるせない。

俺たちは間違いだらけの人生を送ってきた。それを更生するという訳ではないが、ここの島に来てからはマトモに生きてきたじゃねーか。

桜井があんなに悩んでる姿なんて見たくねーしよ。いつもの調子で船頭イジって悪さ企んで仕事して‥俺はただ、もう何事もなくこの二度目の人生を終わらせたいんだ。

それに‥この命は船頭のものなんだからよ。

結っていた髪をバサッと下ろしてみせる。さて、先に家に戻るとするか。桜井はここに残して、家へ帰って来る事を信じよう。見張り役ならまだ船頭がここに残っているだろうし。

 

あぁ、そうさ。まだアイツを信じてない訳じゃない。

 

 

三十分後、ガチャと開いたドアから家に入って来た桜井。

ふーん‥ちゃんと帰って来たんだぁ。疑ってたとかではないが、ひとまず安心している自分がいた。

ホッと胸を撫で下ろしている所を気付かれたくなかったので、帰って来た桜井に向かっていつもと同じように「おかえりー」とベッドに寝転がりながらやる気ない声で迎える。

「ただいま」と一言で済ます桜井の元気のなさといったらどーしようもねぇな。普段ならペラペラ今日あった事を喋っては下らない話しで盛り上がるのによぉ。

着替え終えていた桜井が台所に立ち、晩飯を作ってくれたのでそれを食べて風呂に入って、各々やりたい事‥といってもロクに娯楽がない場所だからサッサと寝るしかないんだけどな。

テレビはあるけどよく分からない放送が流れてるし、携帯なんて持ってないから時代遅れ甚だしいしよ俺らは。

風呂から上がりたての桜井は、ベッドの端に座り込むと首に掛けてあったタオルで頭を軽く拭きながら俺の名前を呼んでくる。

 

「なぁに」

「迷惑かけっぱなしで悪かったな‥」

神妙な面持ちで語る桜井に違和感を覚えたのは言うまでもない。

「あー‥、うん」

「俺の不甲斐なさが目に余る二日間だったしな‥。明日の夕方にはもうアイツがこの世に居なくなるなんて考えられない」

「それがこの島に連れて来られた奴の運命だしねぇ」

「あぁ、そうだ。俺たちも死ぬはずだった」

 

‥何が言いたい?

しかし、桜井はそれから何も言わなくなってしまい、結局は曖昧な会話で終わってしまった。

もう疲れたと呟きながら、濡れたタオルを床へと無造作に落っことしてしまうと、桜井はそのまま布団に包まりながら眠りにつこうとしまっていた。案外アッサリしてるもんだな、とは思うものの‥コイツが今どれだけ何を考えているのかは不明だ。

実際は物凄く頭を使って、あのガキをどうにかして救ってやろうかと一日中考えていたのだろう。けど、何も思いつかないまま諦めに入ってる感じか。

‥このままあのガキが桜井の目の前で死んじまえば、コイツはこれからどうなる?

暫くは無気力になってしまうのが目に見えている。それを回避させる方法はなかろうか。やっぱちっせー子供‥?桜井は子供がいれば何でもいいのかねぇ?

とは言っても‥

 

「桜井‥。お願いだから死ぬのだけは勘弁してくれよ」

「‥‥。」

「お前が何考えてるかは知らねぇけどさ、あのガキの気持ちを踏みにじらないよう考えてから明日は行動しろよ」

「‥言われなくても考えてる」

「なら素直に見守るのも親の役目だろ」

「‥無茶言うなよ」

消え入りそうな声を聞き取るのが精一杯だった。

半乾きのままの長い髪をクシャリと掴んでいたら、溜め息が自然と出てきてしまっている。

 

もう何をしてもムダか‥。

 

電気を消してから俺も布団に包まり、この夜だけは寝てるふりを続けた。

 

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