罪人
勢いで大罪の悪魔達が居る館まで来てしまったけど‥実際会いたくねぇんだよな、アイツらなんかと。けど、マモン一人相手なら何とかなるかもしれん。
船頭があんな風になっちゃあ俺らが負担かかるっつーのによ。アイツの仕事が全部俺と高見沢に回ってきました、なんてのはまっぴらゴメンだ。
ギィ、と大きくて重たい扉を開けば、広すぎると言ってもいい程の部屋の中へと迷いなく吸い込まれていった。
そこに居る悪魔は俺が来るのを分かっていたかのように「来たな‥」と微笑しながら顔をこっちに向けた。その見下した目と態度が一々腹立つ。くそっ、何でこんな奴相手に‥
マモンとの距離は程々にして、俺は船頭の事を話してみるが‥コイツならもう全て知ってるかもしれん。
「何で失明するハメになった?」
「私にそれを聞いてどうする?坂崎の身体の代償はお前らも知ってる筈だ」
「こんなの聞いてねぇぞ。目が見えなくなるなんて‥」
「目だけではない。次は耳だ。そして脚が動かなくなり腕も上がらなくなっていくだろう。アイツの四肢は死期が近付くにつれて機能しなくなる」
「は‥?何だよソレ、そんなの聞いてねぇよ!?」
「誰もそんな事を聞かないからな。知っておるのかと‥」
「ふざけんなよ!!てめぇ、船頭の事どうでもいいとでも思ってんのかよ!?てめぇ、それでも主か‥っ?‥ちっ、んっとに船頭は哀れだな、お前のようなご主人に仕えちまってよ」
「何故貴様らは坂崎の事を嫌っておるのにそこまで擁護するのだ?」
「はっ‥。そういうレベルじゃなくなってきてるんでね、俺達は‥」
船頭の事は嫌いだ。けど、アイツは俺達罪人の事を必死に理解しようと努力してきたのは知っている。俺らが出会った頃の船頭とは考えられねぇ程アイツは成長している。
そんなアイツをみすみす死なせてたまるか。俺らの事を理解も出来ないまま動けなくなって、罪人相手に何も出来なくなるなんて‥それじゃあ、アイツ自身がやり切れねぇよ。船頭がここまで来たのは俺らが誰よりも知っている。
嫌いだが俺らは誰よりもアイツを信じてる。
「坂崎を助けたいのか?」
「死なせはしねぇよ‥。アイツにはあとの五年間、きっちり生きて貰う。‥‥なんなら俺と高見沢の命をアイツに返したっていい。この命は誰のものかって、船頭のものだ。俺はアイツに殺されかけた。高見沢はてめぇのせいで一度死んだ。俺らの命は元々もうないもの‥。だから‥船頭が助かるなら‥」
「ならアスモデウスの所へ行け」
「‥あ?」
「聞こえなかったのか?」
聞こえねぇ筈ないだろ。
この世で一番嫌いな相手なんだからよぉ‥
たまにアイツの使者である2番使って部屋にあるクスリ(毒)を取って来いって命じたりするけどさ‥
顔を歪ませながら渋々この部屋から出て行けば、少し先にあるアスモデウスの部屋へと辿り着いた。何でコイツの姿見なきゃいけねーんだよ‥
嫌々ながらも扉を開けると、その中にはやはりあの悪魔。
くっそ、コイツはマジで心の底から大っ嫌いだ。
待っていたと言わんばかりに「お前がここへ来るとはな‥」と挑戦状でも叩きつけてくるような言い方。
サソリの化身。俺はその毒にやられて死にかけた。あの時を思い出すだけでも憎しみが蘇ってくる。
無駄な事を話す時間も惜しいので、さっさと用件を伝える。
「船頭を助けたい。マモンに言われてここに来た」
「マモンの奴も可哀想な事をするな。坂崎が段々と壊れゆく姿を見て楽しんでおるのか」
「‥‥、」
「俺を睨んでも仕方ないだろう?そういう事はマモンに言え。‥あぁ、そうだな。これを坂崎に飲ませろ」
ポーンと飛んで来たのは小さな小瓶。
その中には無色の液体がチャプンと音をたてながら中で揺れていた。
「その使い道を間違えるなよ」
「あ?」
「それは薬にもなるし毒にもなる。視力も回復するだろうが、同時に身体全体を蝕んでいくだろう。坂崎の命はあと五年か?」
「‥そうだ」
「なら飲ませても構わん。しかし、治るとは言ってないからな?坂崎が無理をすればする程身体の異常は悪化していく」
「つまりこれは船頭自身を抑制するもの‥」
「あぁ。無理をすれば坂崎の寿命は縮まるぞ」
「‥!?」
「さぁ行け。もう俺に用はないだろう」
「‥‥貰ってくよ」
この毒か薬かも分からないもの一つで船頭の命を左右する‥
本当に回復するのか?でもこれは悪魔が作り出したもの。きっと信じていい筈だ。
けど‥船頭がこれから仕事をして無理していく度に命が削り取られていくのか?
‥ちゃんと伝えておいた方がいいに決まってる。だけど、船頭がこれ以上辛い思いするのは俺と高見沢からしたらもう見たくない。
せめて‥死ぬ時くらいは楽でいさせてやりたい。
あんな悪魔なんかに一生を捧げてしまう船頭は本物のバカだと思う。本当に‥大バカ者だ。
船頭、アンタは死ぬまで不幸なのかもな‥
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船頭さん、ほんとごめん
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