罪人続編 番外編弐 - 8/32

船頭さんお休み中の様子

 

「ただいまー」

 

ガチャンと玄関のドアを開け、久々の帰省にお袋が「お帰り。今日はいつもより遅かったんじゃない?」と聞いてきた為、「忙しかったんだよ」とだけ返しておいた。

そこまで多くない荷物をお袋に手渡し、俺はそのままリビングに向かえば、ソファーの上に座ってテレビを観ていた親父が「よぉ」と簡単すぎる挨拶をしてきた。

 

「お前、今年はあんまり帰って来なかったな」

「‥うん。今年はちょっと色々あったからあんまり帰れなかっただけ。別にあっちで休んでたりもしたから大丈夫だよ」

「年々忙しくなってないか?もうそろそろそんな訳の分からん仕事は辞めたらどうだ?お前もいい歳なんだから‥」

「言ってるじゃん。あと五年は続けるって。四十になったらちゃんと辞めるから」

 

それじゃあ遅いんだ、と言いたげな不満な目を向ける親父。お袋も早く結婚してくれ早く結婚してくれと俺が帰る度にお見合いだとか婚活?っていうのを勧めてくる。

だから、あとの五年はムリなんだって。

 

ていうかその五年で俺の人生終わっちまうんだけど‥。それを言い出せないまま両親に二度と会えなくなる、なんて事はないようにしたい。

現に身体は衰弱している。このままじゃあと五年生きられるかも怪しい。

失明したあの時、二十四番から受け取った薬のお陰で今は何ともないけれど、無理をすればする程この寿命は縮んでしまうと告げられてしまった。あれ以来言いつけを守って、体調が優れない時は定期的に休みを取り入れたり、働き詰めにせず休憩も多々貰っている。

全員に迷惑をかけてしまって心苦しいが、みんなも俺に協力してくれているし、心配されているだけでも有難かった。

 

「あれ?コタツ出てないじゃん」

「あぁ、あれ壊れてたから今年はもういっかなと思って出さなかったんだよ」

「えぇー!年に一回の楽しみなのに!コタツがあるから帰って来るようなもんの俺にコタツを奪うなんて‥」

「アンタもバカ言ってないでコタツ買えるお金くらいウチに入れてちょーだいよ。それに一年に一回なら我慢出来るでしょ?」

「一年に一回だからこそ大事なのに!」

 

何も分かってないお袋にケチつけようとすると、すぐお金の話になる。俺が帰って来ると結婚か金の話は絶対される。お金は俺が死んだ後に全部あげるからさ、それまでお預けだよ。貯めに貯めまくった金があるからさ。

あんな仕事だからこそ給料は格段にいい。もちろん二人の罪人にはないけれど、俺達船頭は中々の褒美は貰ってる。悪魔達が気分良ければたまに宝石も手に入ったりするし。

はーあ、もういいよ。

そう呟きながら廊下に出て座敷の部屋までやって来ると、よそよそしく仏壇の前に座り込み「ただいま」と妹の遺影に喋りかけた。

写真の中の妹は幼いまま。無邪気な笑顔で今にも「お帰り!」と言ってくれそうな‥

兄ちゃん、もうおじさんになっちまったよ。お前が生きていたら‥俺はあんな島で一生を過ごすなんてなかっただろうな。嫁さん貰って、子供が出来て‥いいお父さんになってたと思うか?

 

「ごめんな‥。もうすぐ兄ちゃんも、そっちに逝くから。寂しがらなくても済むぞ」

 

一度手を合わせた後、そのままリビングに戻れば親父が「なぁ、幸二」と呼んでくるので、冷蔵庫を開いて中身を漁りながら「んー?」と適当な返事をする。

「いつまで家に居る?」

「三日まで。いつもと一緒」

「今年こそ全員で初詣行こう」

「嫌だってば。家でゆっくりしたいのって何回言えば分かんの?」

するとお袋が「たまには外に出てお友達と遊びに行ったらどう?」なんて聞いてくるけど、俺の友達だった奴は殆どみんな疎遠状態だから遊びに行きたくても行けねーの!

それに、もし仮に誰かが今でも友達だったとしても、ソイツらには家族というものがあるから結局俺はぼっちなんだよ。

冷えたビールを手にすると、親父が「まだ夕方だぞ。せめて夕飯まで待てんのか?」と言ってくる。全然ゆっくり出来ねぇのが現実だ。

 

「俺はさっきまで仕事してたの。大晦日や正月くらい俺の自由にさせてくれ!」

ヒーターの前に座り込み、プシッと音を立てながらプルタブをあけて、親父の言う事を無視しながらビールを喉に流し込んだ。

 

うめぇ‥

お酒なんて仕事に支障をきたすと危ないので、普段飲めない分こういう時飲める酒は格別に美味い。これでもっと酒に強ければいいんだがな。

確か二十四番は強いらしい。七十ニ番もお酒は好きだと言っていたから、俺が帰る前にはいつも二人にいくつかの酒を置いて帰ってる。島に戻ってくるとあげた酒は空っぽだから、二人で飲み明かしてるんだろう。

 

昨日は罪人の死を見届けて、今日はもう窯の点検だとかそういう簡単な仕事で終わったから楽な方だ。帰る支度はしてあったので、昼までには島を全員出て本土に帰ったって訳。

‥アイツら二人、今頃何やってんだろ。悪魔達でさえも魔界に全員帰るので、本当にあの島には罪人二人きり。やっぱ寂しいのかなぁ。

どうせなら連れて帰って来ても‥って、そんな事させるかっ!俺の大事な休暇がパーになってしまう。それに、年がら年中大嫌いな奴と居るのに、何で連れて帰って来る意味があるんだよ!

大丈夫かな、俺の頭‥。疲れてんのか。

 

「幸二、アンタそう言えば桜井さんと高見沢さん連れて来なかったの?お母さん何回も挨拶したいって言ってるのに」

「だーからぁ、あの二人は島から出られないの!それにアイツらは凶悪犯罪者だって分かってる?一人は詐欺師、もう一人は人殺しの監禁野郎って。何回言えば分かるってこっちが言いたいよ!」

「でも、アンタがいつもその二人の事ばっか話すからお母さん、悪い人には思えないよ。あんなに犯罪者嫌ってたのに」

そう言われてしまえばどう反論すればいいのやら‥

てか会わせたくないんだよ。アイツらと俺の親が何で挨拶しなきゃいけねーんだっての。

ここは適当に言い訳作るしかない。なので「また今度もしかしたら二人が本土に戻って来れるかもしれないからその時な」とだけ返しておいた。

 

マモン様にも交渉し続けてるけど、中々許可がおりなくてさ。二人を本土に一度戻らせてやりたいんだが‥

半分くらいまで飲みかけたビールの缶を指でぽこぽこ押し潰したりしながら遊んでいると、テレビから流れてくる知らないアーティストや芸能人。宣伝してる商品も昔と違って発展したなーなんて思うだけで、島にほぼ住み着いてる俺からしたら不必要な物ばかり。

 

今流行ってるスマホってやつなんて意味が分からない。

俺って時代遅れだよな‥

 

 

まったり、のほほんな船頭さん

 

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