明日の鐘 - 10/31

 

「でも本当に本物の天使なんだねぇ‥。サカザキくんは人以外でも自分のものにしちゃう所が驚きだよ」

「まぁ、綺麗で可愛い女なら何でもいいですから」

「そんな事言ってるからタクちゃんに年がら年中叱られてるんでしょ」

「あの人だってそれなりに遊んでたのに俺に対しては厳しいんですもん。嫌になっちゃいますよ」

「君を悲しい目に遭わせたくないんだよきっと」

「そういうもんですかねぇ?」

「そういうもんなんだよ」

お会計をしているサカザキとコウセツさんの会話を聞いてると、タクローさんも昔は相当遊び人だったようだ。サクライの方を見ると、「似合うよ」と笑顔で言ってくれて私は思わず上機嫌になる。

「じゃーねー」と言ってくれるコウセツさんに挨拶をしてから店を後にして、次は裸足だった私の足を包む靴という代物を買いに行くこととなった。サカザキはそこの店主のサダさんという人とも仲が良く、私に合う靴を買ってくれるみたい。

その後は小物や首飾りにブレスレットも全て二人が選んでくれて、さっきまでの私とはまるで別人になっていくのがよく分かる。

そして最後に髪を整えてくれる店に連れて行かれ、そこで私の髪を洗った後に綺麗に整えられてからサクライとサカザキで話し合った結果、なぜか巻いて貰う事になったようだ。

ずっとストレートだった私の髪は、店の人の手が加わるとクルクルした感じの可愛らしい髪型に変わってしまっている。ぽけっとしながら目の前の鏡で自分の姿を確認していると、後ろにいた二人が満足したような表情で鏡越しに私の目とバッチリと合う。

 

「これで更に女っぽくなったかな?」

「うん。大丈夫でしょ。これなら誰もタカミザワにちょっかい出さないだろうよ」

「さぁ、これでアンタも正式な俺の女(という設定)だ。誰にもアンタには近付けさせないし、翼も傷付けないよ」

「ふわぁ~‥。これが‥私?」

鏡の中の自分をじっと見つめながら私は自身に見惚れていた。こんなにも変われるものなのかぁ〜…と思わず感心してしまう。

天界にいた頃は服装も厳しく、動きやすさを優先とされていたし、こんなアクセサリーとか呼ばれる飾りをお洒落として身に着けた記憶がなく、足を守ってくれる靴なんて物は‥

何もかも私にとっては新鮮すぎて、時間が経つのを忘れる程心から楽しんでいた。

クルクルに巻いてある髪は二人から貴族みたいと言われ、よく分からなかったがとてもいい気分であった。こんなにも髪をアレンジした事がなかったので私的にかなり気に入った髪型でもある。

 

二人に御礼を述べると私達はサクライが働いている店へと向かい、そこで昼食をご馳走になった。

店内は明るい雰囲気が特徴的で、美味しい料理を食べようと町中の人々でごった返しだ。適当なテーブルにサカザキと座れば、サクライは奥の方へ入っていき暫くの間待たされる事となったが‥

 

「ここは‥?」

「サクライが働いてる飲食店。こっちが本業で俺と一緒に弾き語りしてるのはただの趣味」

「お、サカザキじゃねぇか。ちょっと忙しいから手伝ってくれねぇか‥‥って、ソレ‥」

「セキグチさん!‥あぁ、コイツが噂の俺の新しい女。翼なんか生やしちゃって凄いでしょ?」

呆れたようにサカザキを一発叩いたセキグチさんという人は、サカザキとは対照的に私へとは柔らかい笑顔を向けながら「君が天使か?」と問うてくるので、こちらも笑って短い返事を返す。

 

「ちょっとセキグチさん!喋ってないで料理運んでって下さいよ!この時間は忙しいんですから」

「わりぃわりぃ。んじゃ、後でまた話聞かせてくれよサカザキ」

出来上がった料理を出しながらサクライは再び厨房がある方へと引っ込んでしまった。

そうか‥サクライはここの店で人々に料理をもてなす仕事をしていたのだな。だからあの時の粥を試食と言っておったのか‥

店内を見渡せば、みんなが私の方へ注目している。しかし隣にはサカザキ本人がいるので誰も近付けない状態っぽい雰囲気。しかし気の良い女性や子供達は笑いかけて手を振ってくれたりするので私も振り返していたが、男性はウィンクや投げキッスをしてくるので苦笑するしかないな。

今の私ってそんなに女に見えるのだろうか‥

 

「ほらタカミザワ、あんまりキョロキョロしない。お前を狙ってる危ない輩もいるんだから俺の傍から離れるんじゃねぇぞ」

「私を狙う者?」

「世の中善人ばっかじゃねぇからな。悪人がいるからこの腐った世の中は成り立ってるわけ。善人がいるから天使が味方する。悪人がいるから悪魔は苦しめる。それと同じでしょ?」

「‥‥。」

 

サカザキの言ってる事は間違ってはないような気もした。

 

 

その悪人が近くにいるとも知らず‥‥

 

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