明日の鐘 - 12/31

 

サクライの働いてる店から出て私達は町の広場の噴水がある場所までやって来た。

噴水では子供達がはしゃぎながら水遊びをしている様子を微笑ましく眺めていたら、こちらに気付いた子供達は私に手を振ってきてくれる。嬉しくなった私は翼を広げながらピョンと少し高く飛んでみせる。

すると子供達だけでなくその場にいた大人達までもが釘付けになっているようで、今この空気を私が全て持っていきサクライもサカザキも私しか目に入ってなかったようだ。

私が降りてくると同時にサクライとサカザキが手を差し伸べてくれて、出された手にそっと乗せればバランスを崩す事なく無事に着地出来たので有難い。

 

「こら、まだ傷が完治してないのに無闇に飛ぶんじゃない」

「いてっ」

サクライに頭をコツンと突かれ、そこまで痛くはなかったがつい言葉が出てきてしまった。素直にごめんと謝るとサクライは優しく笑い掛けてくれるので私の心は安堵する。

やはりサクライを疑うには少し難しい部分があるな‥。どちらがサクライの本性なのか?

それは今、力がない私には到底理解し難いものだった。

 

「あんまり目立つような事はするな。俺がいても集団で襲われちゃあどうにも出来ない時だってあるんだ。自分の存在がいかにデカいか知れっ」

「す、すまんサカザキ」

「俺の頭を撫でるな‥!」

怒っているサカザキの頭をよしよしと撫でていると、その手を乱暴に払われてしまった。私より小さいのでつい、子供扱いしてしまう。多分、そんな恐ろしい事が出来るのは私やサクライ‥後はタクローさん辺りかも知れない。

他の人がやると、これ以上にブチギレている筈だ。

ほら、周りを見ればみんながサカザキに注目をしてる。子供達は怖がって遊ぶのやめてしまうし…。人々の視線が気にさわったのか、サカザキは一人で勝手に歩き出してしまうので、私とサクライはサカザキの後ろを何も言わずに追い掛ける。

‥が、門を曲がった彼の姿は何処にもない。きっと走って逃げたのだろう。

 

「サカザキ‥」

サカザキに悪い事をしてしまったなと後悔しても既に終わってしまったものはどうにもならない。落ち込んでいる私に気を遣ってサクライが頭を優しく撫でてくれた。

横にいるサクライは、「大丈夫だよ」と言ってくれた。その言葉を信じるも、私は自信なくこくんと小さく頷くだけ。

しかし夜になってもサカザキが酒場に姿を現す事はなかった。
タクローさんは「いつもの事だ」と気にしてる素振りはなかったが、私は少し心配になってきていてもたってもいられない。

仕方なく今日はサクライが一人で弾き語りをしており、タクローさんから出されたお酒とちょっとした料理を呑んで食べる。
なんか私‥人間界に落ちてきてからかなり堕落した生活を送っているな。天界にいる頃はこんなに自由ではなかったからな。

 

そしてあれから三十分が経過した時。いきなりカランとドアに付いている鈴が鳴ったかと思えば、サカザキが帰ってきたのだ。
それに気付いた私は誰よりも先にサカザキに近付き、頭を思い切り下げて「ごめん!」と素直に謝った。

しかしサカザキは下げていた頭をくしゃくしゃと雑に撫でてくるが、‥これは仕返しという意味なのだろうか‥。私はただそのまま動かずにいる。

そしてハァ‥と小さく溜め息をついたサカザキが、ようやく口を開いてくれた。

 

「別にタカミザワのせいだけじゃないさ。俺がちょっと不安定だったから悪いんだよ。謝るのはこっちだ、ごめん」

「そんな事はない。私がサカザキの気にさわるような発言をしてしまったから‥」

「もういいってば。天使の中で二番目に偉いお前なんかに謝らせたくないんだよ‥。だから顔上げろ」

「階級など関係ない!サカザキ言ってただろ?ここは人間の世界だからって‥。私は人間ではない。だから天界では偉くてもここで威張っていたって無意味だ。‥だから、」

「もういいってば。ったく、…女に謝らせるなんて俺、最低だな」

「サカザキ‥」

私は男だがな…。まぁ、みんながいるしその設定は大事だとは思うが、まさかこんな場面でその単語が飛び出してくるなんて想定外だった。

サクライは演奏中だったが、みんなは私とサカザキのやり取りのが気になるらしく、客もサクライもタクローさんの目は入り口に集中していた。さっきサカザキが謝った時に少しざわついていたが、今は沈黙が流れているだけだ。

しかしそれを破ったのはサクライで、ギターを弾いて止めていた手を再び動かし始めると、その音につられてサカザキが舞台の方へと歩を進める。そんなサカザキは、空いていたサクライの隣の椅子に座りながら横に用意されてあったギターを手に取り、やっと一緒に弾き始めてくれたのだった。

やはり二人でこうしてギターを弾いてる時が一番輝いておるな…

 

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