明日の鐘 - 11/31

 

サクライに出された料理はパスタと呼ばれる食べ物で、余りにも美味しくて頬がとろけ落ちそうだった。幸せそうに食べる私を見てサクライはハンバーグやパフェという物まで出してくれた。

ハンバーグは中からジュワッとキラキラした肉汁が溢れ出し、口に運べば外はカリッと中はふわっとしていてとても食べ応えがありお腹が一杯になったが、出されたパフェという甘くて冷たくてフルーツも沢山乗っており、こんなに贅沢でいいのかと思う程食べまくった。

隣にいるサカザキに「食い意地が張ってる」と呆れられていたが、出される料理が美味しくて止まらないのだ。サクライに後で御礼を言わなければな。

サカザキが食べていたニョッキとやらを一口パクリと勝手に食べたら折れた翼を握られてしまった。

私が「いたっ…!?」と痛がってる隙にパフェに乗っているオレンジを食べられ、私は更にサカザキのニョッキを一口食べる。そして諦めたようにサカザキは溜め息を着くと何も言わずにススッと皿ごと私の前に移動させてくれたようだ。

 

「ありがとうサカザキ!」

「‥はは、」

苦笑いしながら頬杖を着いてサカザキは痛みが残っている私の翼を優しく撫でてくれるのだが、やはりサカザキが撫でるとあんなに痛かったのに直ぐに引いていく。とても不思議だなぁ。謎だ。

だがこれが人間の温かさというものなのか?

私はサカザキのことを折れた翼をなんとか伸ばしてふわりと彼の体を包みこむと、びっくりしたサカザキだったが私の翼に身を委ねてくれた。

 

「心地いいな‥タカミザワの翼」

「へへ。そうか?ならずっと私の翼でお前を包んでやるぞ?」

「流石にそれは‥」

食後のコーヒーという物を出され、私とサカザキはサクライの仕事が一息着くまで待つ事となる。サカザキは夜からの仕事が多いので普段昼間は女の人と遊んでるんだって。

サカザキって可愛らしい顔立ちをしているからそんなに遊びまくっている様子は皆無に見えるのだが、先程から沢山の女性達から話を掛けられていて「今日は家に来てよ~」だとか「ねぇ、いつデートしてくれるの?」などと質問責めにされている。

しかもまだ子供でしょ?っていうのうな娘までサカザキを口説いているのだから驚きだ‥

 

「モテるのだな」

「はぁ?でも正直言ってつまんないんだよね」

「どうしてだ?」

「だーって‥、満たされないから」

「お、女に飽きてしまって‥ハッ、だから男の私を‥!?」

「そうそう女に飽きて男が欲しくなっちゃった‥ってコラ。俺はゲイでもバイでもないぞ‥!ちゃんと女が好きだ」

「ではなぜそんな事を言う?」

「特に意味はないけど、。まぁ俺は独りじゃなけりゃそれでいいの。だからサクライがずっと隣にいるだけで十分だと思ってるんだ」

「そうか‥」

サカザキのその目は真っ直ぐだった。

本当にサクライの事を親友だと思っているんだなと感じた瞬間だ。サカザキの温かみというのは最初に逢った時から分かっていた。見た目からして冷たそうに見えるが人をちゃんと見ており、面倒くさいと口で言いながらもしっかりとやってくれるのだから。

 

だけど‥‥

 

どうしてだろうか。

サクライにそれが感じられない。

 

今でも分からないし、初めて逢った時の優しさは確かに本物なんだろうが……。何かが違う。

サカザキはサクライの事を親友として見ているのにサクライはサカザキをどう見てるのかが不明だ。

私の力が元に戻っていればこんな事すぐに分かるのにな‥。いや、こういうのは知らない方が幸せというものか?
人間はとても弱くて脆いと言われている。裏切りという行為はその人の人生を左右する時だってあると聞いた事がある。

今のサカザキの姿を見ていると、そんな残酷な言葉‥伝えられる筈がない。

そんなモヤモヤおした気持ちを私はこの時そっと閉じ込める方を選んでしまったのを後から後悔することになるのだろう。

 

「待たせて悪かったな。俺の料理どうだった?」

「とても美味しかったぞ!」

「コイツ俺の分まで食うんだぜ?ちゃんと教育しろよなサクライ!」

「教育って‥タカミザワは俺の子供じゃあるまいし」

サカザキの怒りがサクライへ飛び火しかけているので、正直私はホッとしてしまっていた。ごめんな、サクライ。

人の混み具合も落ち着いてきた所にようやくサクライが自分の昼を食べながら、セキグチさんも交えて四人で談笑中。サクライはこの店では必要とされる存在で、何でも器用にこなす頼れる人物だと。

それに引き換えサカザキは真面目に仕事はしないし店に来た客とは喧嘩をするしで正に正反対な二人だ。

でも‥、それが二人を繋ぎ止めている糸なんだな、となんとなくそこで悟った。

 

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