明日の鐘 - 8/31

 

「時にお前、なんの天使なんだ?」

「私か?私は智天使だぞ」

「ち、智天使!?ほんとかよ、なんでそんな凄い天使なんかが‥」

驚愕しているサクライに対し、サカザキは「大天使じゃないんだ?」と言ってくるのでその言葉にカチンときた私は思わず怒鳴ってしまった。

 

「私をあんな下っ端な天使と一緒にするな!天使の階級で下から二番目の癖してアイツらは態度がデカいのだ。人間が大天使が一番偉いと思ってるのが悪いのだぞ!?」

「へぇ‥」

サカザキは興味なさそうに呟くが、私は勘違いされたくないのだ。大天使という言葉だけが一人歩きして人間は私達のような偉い熾天使(してんし)や智天使の存在を忘れている。

それが許せないでいた。

そんな事かと思われようが私達天使の中で階級とはとても大切なものであって、神に近ければ近い程力もあるし知識もある。
それを忘れて大天使が天使の中で最も偉いと思われてたら困るのだ。

 

「智天使ってそんなに偉いの?」

「天使の九階級の内、上から二番目の地位だ。アダムとイヴが二度と命の木に近付けれないようずっと見張っている。エデンの園には絶対誰も入らせない」

「本当にエデンの園を守ってるのかタカミザワは‥!?」

「ほ、‥本当だがそれがどうした?そんなに珍しいものでもないぞ?」

目をキラキラ輝かせながらサクライは興奮しているようだ。そしてサカザキは「アダムとイヴって本当にいたんだー?」と何とも腑抜けた声と顔で呟き、肘を着きながらボーッとグラスを眺めていた。

「でも俺の知ってる智天使は四つの翼を持ち、人間の顔と右に獅子の顔と左に牛の顔、後ろに鷲の顔を持った天使だと思っていたが‥」

「あぁ!それは私は人間の顔だけを持って生まれたからだよ。後の三人はそれぞれが動物の顔さ」

「じゃ、じゃあタカミザワはそのアダムとイヴを追放したエホバ神の下に仕えているのか!?」

「エホバ神様だけじゃないが他にも仕えて記録係りをしておるぞ」

「すげぇ‥」

話を聞いているサクライは心から楽しんでいるようで、そんなにお酒も入ってないのに頬が赤く染まっていた。興奮のしすぎだ‥

 

「でもさ、その四つの翼の内のもう二つはどこよ?」

相変わらず興味なさそうにしていたサカザキだが、そこの部分だけが気になっていたらしく私に聞いてきたので、私は少し考えながら口を開く。

「人間界に落ちてしまった時から力が弱まってしまって翼が消えてしまったのだ。武器である炎の剣も機能しなくなってしまい小さくしてずっと首飾りにしてある」

「その円盤みたいなのが?」

首元を指差され、私はチェーンで繋いだ炎の剣を手に取ってサカザキに見せた。

それをチョンと触るだけでサカザキは「これが武器?」と独り言を言ってから興味を失っていった。コイツ本当に伝説とか私のような存在に興味がないのだな‥

 

「で、なんでタカミザワは落ちたのさ?」

興味をなくしたサカザキの代わりにサクライが次に炎の剣をジッと見つめて質問をしてきた。
コイツら、正反対すぎる‥

「私にも分からない。しかし誰かが私を陥れたのには違いない。ずっと守り続けていた命の木の果実が一つなくなっていたのだ。その時は私だけがエデンの園にいたので、疑われて当然だった。だが私は何もしていない!なのに私が‥、私が果実を盗った事となり処刑されかけた所をなんとか逃げ出したはいいが、天界を追放されて二度と戻れないようにされたのだ。翼が折られたのも私を飛べないようにする為。だから帰りたくても帰れない。サクライには悪いが私は天界に帰りたいとは思わない‥けど、ずっと育ってきた故郷を捨てたくはなかったな‥」

「タカミザワ‥」

「帰ったとしても殺されるだけだろう。それか妖怪にされるかどちらかだ」

 

へへっと無理に笑って見せるがサクライはなんだか申し訳なさそうな目で私に「そっか‥」と弱々しく答えた。すると隣にいたサカザキがダンッとわざと大きな音を出してグラスを置くのでビックリするではないか。

ビクッと体が跳ねてしまった私はそっとサカザキの方に顔を向けると、何故か不機嫌そうにしていた。声を掛けようにも掛け辛く、サカザキから喋るのを待っていたがいつまで経っても動かないし話もしてくれない。

不安になった私がサカザキに声を掛けようとした時だった。

 

「なんかペラペラ言っちゃってるけどさぁ、アンタ本物の天使なわけ?怪しいよ。本当は妖怪かなんかじゃねーの?」

「さ、サカザキ…?」

「いいよ。ソイツ酔ってるだけだからほかっとけ。弱い癖に呑むからだよ」

サクライに言われ私はグデッとなっているサカザキの背中をそっとさすればそのまま眠りに着いてしまっていた。

 

やはり信じて貰えないよな‥。本物の天使かだなんて。

 

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