明日の鐘 - 13/31

サカザキside

 

その日の夜はサクライとタカミザワが遅くなるまで呑んで帰って行ったのを見届けた俺は、タクローさんに店の掃除をしとけと言われたので只今テーブルを拭いている最中。

だけど掃除に飽きたので、客が残していった酒を普段飲みもしないのにヤケになってグッと飲み干した。喉がピリピリした感覚がいつまで経っても消えなくて、呑まなきゃ良かったと後々後悔するんだよなコレが。

 

「‥‥、」

俺らはちゃんとタカミザワを元の世界に戻す事が可能なのだろうか。あの折れ曲がった痛々しい翼を使って大空を羽ばたけるのか?

タカミザワを見るまで伝説や神話なんてものは一切信じなかったのだが、…“明日の鐘”の伝説って本当にあった事なのかも知れないのかとほんの少しだけそう思い始めてきていた。

そうだとすれば、早く“明日の鐘”を鳴らしてタカミザワを天界に帰さなければ。

テーブルに軽く座り、椅子に足を乗せる所をタクローさんなんかに目撃されたらど突かれるよな~。とか思いながら降りる気が一切ないから困ったもんだ。

 

「別に俺さ‥」

背の事で機嫌を損ねた訳じゃないんだよね。女が好きだとか怖いとかそんな事を言われすぎたりしてるから嫌気が差しただけ。

確かにそんな事を言われるようになった俺自身が悪いなんて分かり切っている。けれど俺はただ遊んでるだけなんじゃないんだよ。

無闇やたらに女を抱く訳ないだろうが。

困っていたり傷付いて泣いている女性がいるから俺は彼女達をただ癒やしているだけだ。話を聞いて、悲しんでいる人を放っておけない自分の性格が災いして女と遊びまくってるなんて噂が飛び交ってしまっただけで‥。

勿論女だけではなく男の相談や悩みを聞いているよ?俺の人脈をナメたらいかん。

俺が怖がられてる理由はな‥女友達の子が当時付き合っていた奴に暴力を受けていたから我慢出来なくなった彼女が俺の所に相談しに来て、話を全て聞いた後に俺が殴り込みしたからだってさ。

今まで散々女性に酷い事をしたからその報いだから当然だっていうのによぉ〜…

次の日には俺が男を殴り倒した噂が一気に町中へと広がり、それから俺は恐れられるようになってしまったのだ。まぁ、こんな話数え切れない程あるから女を傷つける奴は俺が制裁を下す係りみたいになっただけ。

脅し方は色々だけど、人を殴って解決するやり方は余りしないようにしている。理由は単純に自分の拳が痛くなるから。

 

「ふぅ、」

ちょっぴり荒れている手をさすりながら、カウンターにしまってあるギターを取りに行こうとテーブルから離れた時‥、店の外に誰かが通り過ぎる影がフッと映し出された。

こんな夜遅い時間帯に出歩く人なんてこの町に多くない筈だが…

こっそりとドアを開けて人影が通り過ぎた方向を確認すると、それは余りにも見慣れた人物が歩いてるじゃないか。

 

「‥‥サクライ?」

 

アイツ、何してるんだ?
タカミザワはどうしたんだよ?

キョロキョロと辺りを見渡してもやはりタカミザワの姿はどこにもなく、不振に感じた俺はサクライの後を追ってみる事にした。

なんだかサクライを裏切ってるようで申し訳ない気分だけど、好奇心というものにはどうにも勝てないんだな。人間ってそういう汚い部分があるものだから仕方ない。

なるべく物音を立てないようにそろりとサクライの背中を追って行くのだが……町から外れ始めた頃にいよいよ怪しいと思い、我慢出来ず名前を叫ぼうとした時にそこで気づく。

 

「待てよ‥。こっちの方って確か‥」

 

あの呪われた教会がある場所じゃ‥‥

 

「何やってんだよサクライ‥」

不安が心によぎったが、彼をなんとか信じようと試みる。しかし、あんな危なっかしい伝説があるので怖じ気づく自分がいて情けなかった。

ずっとずっと迷信だと言い続けていたのに、いざとなれば人間そういう事を信じやすくなるもんなんだな。

身を隠しながらサクライの後を追って‥‥、立ち入り禁止の教会にアイツは躊躇なく入っていってしまった。なんで鍵が掛かってないんだよ?

疑問だらけの頭を持ちながらもサクライが消えていった教会の扉付近で待機してみる事にしよう。ほんの少し扉をギィ…と開けると、中から話し声が聞こえてくるではないか。

 

 

……え?

 

もう、サクライを信じるとかそんな次元じゃなくなってきた俺は、意を決してチラリと中身を覗いてみるが、当たり前と言っていいがそこには暗闇が広がっていただけだった。

しかし次の瞬間、教会の中がカッと明るく発光した時に眩しすぎて目を瞑った俺の目の前には驚くべきものがそこにあった。

 

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