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「タクローさん!!」
「ぬおっ?急になんだよタカミザワ‥」
「さ、サクライが‥サクライが!!」
「サクライがどうしたんだよ?」
血相を変えて店に入ってきた私を見て驚いたようにこちらを見てくるタクローさんは、カウンターから出て来て転びそうになっていた私を支えてくれる。
するとカランとドアに付いているベルが鳴ったかと思えば、私の名前を呼びながらサカザキが慌てて入って来ては、そのまま私の手首を掴んで外へと連れ出してしまったのだった。
「あっ、おい!?サカザキ、タカミザワ!?」
「すんませんタクローさん!暫く帰れないかもっ!!」
「はァっ…??なんなんだよアイツ…ったく」
タクローさんのどこか呆れてるかのような声が最後に聞こえてきたような気がした。
「どこへ逃げるのだ?」
「兎に角‥この町から出るんだ!“明日の鐘”のない場所へ行くんだよ!」
「でもサカザキが町から出たら‥」
「そんなのどうだっていい!二人を失いたくないんだ‥!ていうか羽根使ったか?」
「まだだ。使い方が分からん」
「そんなの何とかなるもんだろ!早く折れた部分にでも引っ付けろよ」
「えぇ〜…」
適当すぎる説明をされたが、私達は一旦立ち止まりサカザキから貰った羽根を自分の翼の折れた部分にかざすと、そのまま羽根が翼と同化した時に歪んでいた部分が正常な形に戻ったのだ。
そして今までなくなっていたもう二枚の翼が背中からブワッと生え始め、元の大きさの翼になっていくではないか。元々は倍ぐらいの大きさだったが力を失った時から小さくなってしまっていたのだ。
みるみるうちに力が戻り始め、私の体力と精神は人間界に落ちた時の比ではないくらいになっており、首に飾ってあった炎の剣も本来の姿に戻っていく。そして私がそれを手に取れば、天界にいた頃の自分と何ら変わりもない姿。
完全な智天使としての姿になった私を見届けていたサカザキと通りすがりの人々は、もう私しか目に入ってないようだ。
「タカミザワ……お前…」
「助かったぞサカザキ。これで戦える力もお前達を守る力も手に入った」
「すげぇ…。お前、やっぱりエデンの園を守ってるだけあるんだな。めちゃくちゃ格好いいよ…。今までの弱気な雰囲気が一気に消え去ったな」
「ありがとう、これが本来の私だからな。‥今からサクライを助けに行くぞ」
「逃げないのか?」
「バカを言うな。元に戻った私を見くびるでないッ!」
そう言うと私はサカザキを抱えて高く飛び上がり、サクライがいる教会へと飛び立った。
先程までのような頼りない翼ではないのでスピードも倍以上出ており、下で見ている人々はやはり私に釘付け状態で口を開けながら空を見上げている。
少し怖いのだろうか、サカザキはギュッと私の服を鷲掴みつつ下を見下ろしている。やはり可愛いな、サカザキのが今は女らしい気がするぞ。
「サクライはまだ教会にいるのだな?」
「多分ね。体が言う事を聞いていればこの町にいるだろうけど‥」
「分かった」
もう一度確認するとサクライのいる場所へと直行する。
お願いだサクライ‥。私が行くまで待っていてくれ。
死ぬなよ、絶対に。
だが私の方よりサカザキの方が気になる。きっとギリギリの所で自分を保っているのに違いない。ずっと親友だと思っていた相手がこんな事になってしまったらどうする?元の姿に戻って天界に住んでいた私からすればそんなもの特別でも何ともない感情なのだが、人間からすれば非常に辛いものなのだろう。
強気を表してるつもりだが既に心は泣いている。こうして触れているだけでサカザキの悲しみに捕らわれた感情が痛い程伝わってくるのだから…
あぁそうか…。触れてしまえば人の気持ちさえも今の私には読み取る事が出来てしまうのか。
そんな事が出来ても何も嬉しくないので、私はその能力を奥の方へと閉じ込めて使えないようにさせた。
近付いてくる呪われた教会の隣に佇んでいる“明日の鐘”。その鐘の真下でサクライがじっと座っている姿がそこにあった。ドクンと心臓が煩いくらいに騒ぎ出し、これじゃあアイツの体が持たないのではないのかと思う程サクライの顔色はとても悪い。
サカザキも下を見たくても中々そちらへ顔を向ける勇気がなさそうにも見える。
「怖いのかサカザキ?」
「ちょっとね‥。でもサクライが壊れないかが不安で‥」
「大丈夫。私がサクライを必ず救ってみせる。ついでにあの哀れな天使もな」
「そんな事出来るのかよ?」
「知らん」
「ちょっと待てオイ‥。そんな大ざっぱでいいのかよ!?」
「私を信じろサカザキ。私を誰だと思ってる?」
「‥タカミザワ」
「まぁ、そうだが‥。天使の九階級の内の二番目の位、エデンの園を守っている智天使タカミザワだぞっ?そんな智天使のは私をナメたらいかん!!」
「‥そ、そうだな、!」
不安そうにしていたサカザキを落ち着かせる為に私もかなり見栄を張ってしまった気がするが、本当のことなのであまり気にしないでおこう。
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