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鐘の音が数回程鳴り続き、徐々に風と共に消えていく音に連れて次第に私の体に異変が起き始める。
「……くっ!」
自分の周りにはバチバチと電光石火のような物が走り、何かが体の中で蠢いているような気もしたが気持ち悪いというより、今はまだ違和感があるな‥と思う程度。
少し離れて見てているサクライとサカザキが何かを叫んでるようだが、今の私にはそれを聞き取る余裕が段々と出来なくなっていくのが恐ろしい。
‥と、次の瞬間に、信じられない程の痛みが全身を駆け巡っていくではないか。
「うぁあ゛あぁあああぁぁあ゛あッ!!!」
「 タカミザワッ!! 」
二人の悲痛な叫び声が聞こえたが、それ以上の事は何も考えられないし聞こえてこなかった。
ミシミシと翼が引きちぎられる音だけしか耳に届いてこないせいなのか。
背中に生えている天使の象徴である純白の翼をこの悪霊天使に渡すのが条件でサクライから離れて貰ったのだから、私が翼を与えなかったらコイツはいつまでもサクライに憑いて彼を蝕めていただろう。
そんな事をしてサクライが死んだら悲しむのはサカザキや町の皆だ。アイツは死なせてはいけない存在だ。人気者のサカザキの隣にいる彼だからこそ、サカザキを抑止出来て落ち着いていて、誰にでも優しい性格のサクライがいなくてはならない。
二人が酒場でギターを持って美しい歌声と音色を奏でてるのが一番輝いているのだから…
だから二人には離れて欲しくないし、どちらか一方が欠けてはいけない。ずっと二人でやってきた絆を崩れさせてはいけないのだ。
「もうやめてくれッ!!タカミザワの翼を奪うな!」
「タカミザワが天界に帰れなくなっちまうッ!!」
泣き叫んで私を庇うサクライとサカザキ。
だが私にはどうしようも出来なかった。
無理やり引っ張られるような感覚の激痛が、私の頭を真っ白にさせる。背中からブチブチと一枚、更にもう一枚と翼が離れていき、引き抜かれた部分からは真紅の血がダラリと流れ出す感覚が残る。
絶叫する私を見ている二人も痛そうに顔を歪め、これ以上は見ていられなくてサカザキの方は目を逸らしているようだった。
(ごめんね‥)
優しく謝る彼女の声が異様に恐ろしく感じ、私は立っていられずにガクッと思わず膝を着いてしまったが、翼にだって神経は通っている。それが離れて千切れるとなると、必ずどこか体の器官が機能しなくなってしまう筈。
もしかしたら痛みのショックや大量出血で死ぬなんて可能性もあるだろう。
だがそれを覚悟で私は彼女に翼を与えたのだ。
もうサクライに取り憑かせて彼を死に至らせたくはない‥。サクライが死ぬなら私が死んで天使の彼女を天界に帰した方がそれが最良の選択だ。
バキバキッとまたもう一つの翼を奪われ、そして失神しそうになってしまいそうな私を追い込むように残された最後の翼も引きちぎられていく。
うなだれ、汗だくで虚ろな目でいる私の目の前に、いきなり大きな光が解き放たれたその時……とても輝かしい綺麗な天使がそこに現れたではないか。
「……っ」
その天使は私に微笑みかけ、俯けている私の顔をそっと持ち上げてから次に発する言葉は余りにも残酷な言葉であった。
「ありがとう‥。でも私ね、もう一つ足りない物があるの」
「‥ハァ、ハァ‥!な、なんだ‥?」
「それはね 」
「‥‥!?!」
耳許でぼそりと呟く彼女の言葉に絶句した私の傍にサクライとサカザキが走り寄ってきて、私を抱き上げようとしたその時‥
いきなり心臓部に痛みが駆け巡る。
「ッ‥!?ああぁあああぁぁあ!!」
「タカミザワを離せッ!」
「もうやめろ!!」
私から彼女を引き離そうと必死になっている二人が鬱陶しく感じたのか、彼女は大の大人の男であるサクライとサカザキを軽々と吹き飛ばしてしまったではないか。
後ろでドシャッ!と倒れている二人が心配になったが、まず先に自分の心配をした方が良さそうだ。
彼女がいきなり私の心臓を取り出そうと、ズブリと手を体の中に埋め込ませたのだ。翼を持った彼女は天使としては完璧な筈だ。なのに私の心臓を欲するという事は、今以上の力を手に入れたいからなのか…
命を捨てても構わないと思ってはいたが、彼女は既にちゃんとした天使に戻っているではないか。私の命もなんとか助かると安心していた所にいきなりこの仕打ち、有り得ない‥!!
「この‥ゲスがぁぁああ!!」
「ふふ、今天使となった私に人間に成り下がった貴方が勝てるとでも?」
「私の姿を借りて‥エデンの園に行って‥、何をするつもりだぁああッ!?」
「もうすぐ死ぬ貴方に何も教える訳ないでしょ」
グッと掴まれた心臓を持っていかれそうになり、もうダメだと諦めかけた時だった‥
「タカミザワは死なせねぇ!!」
「翼を授けたお前を信じたタカミザワの気持ちを踏みにじるような事をするなら、俺とサクライがテメェを許さねぇからな!?」
急に飛び出してきた二人が私を天使から引き離すと、そのまま彼女に付いている翼を掴み、“明日の鐘”の前にある崖の下へ一気に柵を飛び越え三人で落ちていった。
「なっ…!?」
驚愕した私は三人を追い掛けようと崖の方へ向かおうとしたが、翼がなくなった今自分の体のバランスが全く取れなくなってしまい中々体が言う事を聞いてはくれない。しかも痛みが引いていく訳でもないので私はどうする事も出来ず、ただただ二人の名前を叫ぶしかなかった。
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