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「バカじゃないの!私は貴方をどうする事だって出来るのだから!マサルも私が死んでもいいって言うの!?」
必死に翼にしがみつき、全く離れようともしない二人に声を上げる天使にサクライが質問に答える。
「もうアンタを天使だなんて思わねぇ!あんな酷い事が出来るなんて…お前は堕ちすぎた!見た目は天使でも心は既に悪魔だなッ…!!」
「私は天使!誰がなんて言おうと天使よ!」
真下に急降下して行く三人は、このままだと地面にたたきつけられて死んでしまうが、これがサクライとサカザキ二人で出した答えだったのだ。
タカミザワが死にそうになったのを目の前で見て、自分達のせいでこうなってしまったのだと責めた二人はせめてもの償いで、裏切り者の天使と一緒に還らぬ人になろうと決めていた。
サクライだってタカミザワを天界に帰してやりたかった。だが、どうにもならないのを知った時に自分はなんて無力なのだろうと…。そしてサカザキはあの時無理やりにでもタカミザワを遠くへ逃がしておけば良かったと心から後悔していたようだ。
全ては自分達のせいなのに、なぜ何もしていないタカミザワが罰を受けなければならなかったのか。それが二人にとっては心を痛めることの十分な理由とでも言えるだろう。
命をかけてまでサクライを守ってくれようとした事。
サカザキの為を思ってサクライを生かそうとした事。
そしてこの町のみんなの為に愛されている二人を残そうとしてくれた事。
全部が全部自分達で解決しなければならないものをタカミザワ一人だけが背負う必要性がどこにあるのだろうか?
翼を失う彼の姿を見てしまえば、二人は今度は自分達の番だと思い言葉で話さなくても心で通じ合っていたお陰で、なんの躊躇もなくあの崖から飛び降りる事が出来たのだった。
「お前のような天使の皮を被った悪魔にはタカミザワの翼を付ける資格なんてない!!」
「やっぱり先にお前らの遺体を燃やすべきだったか。だがこうなってしまった以上もう手遅れだ、覚悟しろ!!」
落ちる前にどうしてもタカミザワの翼を取り返したくて、サカザキは持っていたナイフで彼女の背中に付いていた四つの翼を急いで切り落とし、抵抗をしてくる彼女をサクライが必死に押さえつけていく。
「タカミザワが死ぬくらい痛い思いをしたんだからお前には当然死んで貰うからな!?」
「ふっ‥、自分達がどうなってもいいのか…っ?」
「あぁ。もう死んだって後悔なんてしねぇよ」
「くっ…!?ちくしょう…!!」
地面に届くまであと数メートルという所だろうと、サクライとサカザキの決意は緩まなかった。
𓂃 𓈒
「くそっ‥!くそおぉぉお!!!サクライ、サカザキぃいい!!」
呼んでも呼んでも三人は止まる事なく落ちていくだけ。
私の力が不甲斐ないせいで人間であるサクライとサカザキまでもが死んでしまう。この命が助かっても二人が死んでしまったら何も意味がない。ここまで頑張ってきた私の努力が……いや、努力なんてものはいらない。
ただ二人が無事であればそれだけで良かったのに…!
自分の詰めが甘いせいで二人をあの世送りにさせて逝かせたくはない。せっかく力を取り戻せたというのにそれを無意味にしてどうする…!?
こんなの‥‥
「お願いだ‥、我が同士よ‥仲間よ、神よ‥サクライとサカザキを守ってくれええぇぇえぇええっッ!!!」
渾身の力で叫べば、空が僅かにざわめいた気がした。
崖の下ではサカザキが天使から翼を奪い取り、それを握り締めていた時だった。
いきなり翼が銀色へと変わり、四つの翼全ての羽根が散りばめられ、それがサクライとサカザキを包み込むと落下していた二つの体はまるで二人を守るかの如くゆっくりと下へと降りていき、そしてあの天使だけがそのまま地面へとグシャッ!!と激突してしまっていたではないか。
あまりにも衝撃的な場面を見てしまった為私は一瞬目を逸らしたが、サクライとサカザキの無事が気になり崖下を覗いてみせると‥
「あ……!」
するとそこには私の羽根で包まれた二人がしっかりと下へと着地をして、体が地面に叩きつけられずに済んでいたようだ。不思議そうにしていたサクライとサカザキの周りに取り巻いていた羽根達は、役目を終えるとふわりふわりと全てが儚く消えていってしまった。
「はァーーー……」
長い安堵の溜め息をついた私は、目に涙を浮かべながら「良かった‥」と呟くと、限界がきていた体を動かす事も出来ずにそのまま二人を見守りながらそっと目を伏せるしか出来なかった。
背中と心臓部から血が大量に流れ出し、ふらふらしていた体を無理やり動かした為にもう一歩も動けないでいる。
目が霞み、頭には激痛が残り、あと僅かしかない命を全て二人の為に使ったのだから。
だが私は何一つ後悔していない。
最後にはずっと天界から見ていてくれた仲間達やサクライとサカザキを救う手助けもしてくれたし、二人の命だって助かった。だからもうこれで良かったのだ。
「サクライ‥サカザキ‥、。ごめん‥。そしてありがとう‥‥」
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