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サカザキが彼女から翼を奪い返し、あとほんの数秒で死ぬんだと覚悟したその時……持っていた翼がいきなり銀色に輝きその羽根がふわりふわりと離れていくと思ったら、自分達の体が地面に落ちないように庇ってくれたのだった。
「あっ…!」
「な、なんだコレは…っ?」
キラキラと輝くタカミザワの羽根達は、一緒に落ちていった天使だけを見捨てるように自分たち二人だけを守った。
この羽根達はタカミザワとその仲間が力を貸してくれたものだ。悪魔のような天使を天界に戻させない為にもこの方法が一番良かったのかも知れない。
呆然としている二人をよそにあの天使は地面に叩きつけられてしまい、見るも無残な姿に変わり果てているだけ。
羽根達が二人をゆっくりと自分たちを地上に下ろしてくれた時、何が起きたかは理解出来なかったのだが、守ってくれていたタカミザワの羽根達は役目を終えると同時にすうっとその場から全て消えてしまったのである。
「……。」
「今のは……」
暫く動けずにいたサクライとサカザキではあったが、ハッとした表情になり崖の上を急いで見上げるとギリギリの所で下の様子を窺っていたであろうタカミザワが力無く横たわっているのがなんとか確認出来た。
「タカミザワ…!」
「アイツ…死んでねぇよな…!?」
「分かんねぇ…!でも早く行かないと…!」
急いで二人は教会がある場所へと駆け出す。何も言わずともただタカミザワの安否だけが知りたかっただけなのだから。自分達のせいでタカミザワを死なせたくなんかはない。
全力で走り、やっとの思いで教会に辿り着き“明日の鐘”がある場所まで全速力でやって来た二人はぐったりとして動かないタカミザワに急いで駆け寄っていく。
「タカミザワッ!!」
サクライが倒れているタカミザワを抱き起こし、虫の息の彼に呼び掛ける。
「お願いだ‥死ぬんじゃねぇ!お前は死んじゃダメなんだ!天界に帰らないといけないんだろうが!!」
「そうだ‥!お前はこんな所で死んじゃダメな存在だろ!?」
大声で泣き叫ぶ二人がタカミザワの名前を呼び掛けるが、彼は閉じた目を開ける事はなかった。
「ごめん‥ごめんなタカミザワ‥!本当にごめんな‥!」
ボロボロと涙を流すサクライは、タカミザワの頬を両手で掴み親指で彼の顔をなぞってみせる。ぽたりと一粒、二粒タカミザワの顔の上に落ちていくと、それに気付いたのか目をうっすらと開き始めてくれたようだ。
「タカミザワ‥!良かった‥良かった‥!!」
「心配かけさせやがって‥!」
どこか焦点が定まっていないタカミザワの視線は、呼び掛ける二人の声を頼りに必死で彼らを捉えようとしていた。
ヒューヒューと鳴るか細い息がタカミザワをこの世に繋いでる今にも切れそうな糸なのかもしれない。ようやく視点が定まったのか、タカミザワは二人を見つめると力無く微笑みかける。
「‥‥サ、クライ‥。サカ‥ザキ。‥ごめん、‥ごめ、ん‥な、」
「なんでお前が謝るんだよ!」
「悪いのは俺なのに‥なんでタカミザワが謝ってるんだよ!?」
苦しそうに喋るタカミザワは、一筋の涙を流すと、小さくゆっくり首を横に振る。
「わたし‥が‥ふがいな、いから‥こんな、ことが‥‥」
「喋るな‥もう喋るんじゃねぇ!……血が止まらない‥!」
タカミザワの背中を見ると余りにも痛々しい傷が広がっており、翼が生えていた四ヶ所からは大量の血がダラリと溢れ出ていてサクライがタカミザワを抱え上げた時、ヌルリとした生温かい感触が手に伝わってきていたのには気付いていた。
前は大事な心臓がある部分からも鮮血が流れている。自分達がこの場所まで駆け上ってきてから時間が経ちすぎており、こんなに大量に流れた血が元に戻る訳がない。
このままでは本当にタカミザワが死んでしまう。
天使とはいえ寿命だってある筈だし、深い傷を負えば命の危険だってあるだろう。
サカザキは慌てて着ていた自分の服を一枚剥ぎ取り、タカミザワにそれをキツく巻き付けてみせ、そしてサクライも同じように服を脱ぎサカザキが巻き付けた服の上から更に堅く結び、ほどけないようにキツくキツく縛る。
「待ってろよ!死なせないからな‥!絶対、絶対にお前には生きて貰わなくちゃいけないんだ!」
サクライはほとんど息をしていないタカミザワをグイッと抱えあげると、町の医者がいる場所へと駆け出して行く。そして後ろからサカザキがサクライたちを追い掛けようとした時、タカミザワが倒れていた場所に何かが光っているのに気付かされる。
「…?」
不思議に思い、サカザキがそちらに近付くとそこには輝きを失ってないタカミザワの一枚の羽根が落ちているではないか。
「これって……」
そっと拾い上げ、サカザキは優しく羽根を包むと一度目を伏せてから再び開き、呟く。
「お願いだ‥。タカミザワを天界に帰してやってくれ」
そう願いを告げるサカザキは、先に行ってしまったサクライの背中をひたすら追い掛けて行くだけだった。
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